3章の2話
「あの、沙希ちゃん? 一体どこに行くんですか? こっちには体育館しかないはずなんだけど」
「うん。体育館に行くの」
先ほど聞いた名前を呼びながら、射頭夢は困ったような顔をして沙希と名乗る女子生徒に声をかける。
沙希の方もそれなりの対応をしながら、体育館に向かって歩を進める。
そうしているうちに校舎を抜け、体育館前の玄関に入っていく。
「体育館って言っても…ああ!? あれですか!? 裏に誘ってレズ発言とかですか!? すいません! 私にはまだ入り込めない境界ってモノがまだあってですね…。出来ればお返事はかなり待ってもらわないと困るんですけど…」
「そんなんじゃないから!! 断じてそんなんじゃないから!!」
初対面を気にせず問題発言をする射頭夢に、初対面に関わらず大声で否定を沙希はする。
そう言っている間に足はどんどん進んでいき―――倉庫に辿り着いた。
「さ、はいってはいって」
「いや、こんなとこに入れられても。まるであたしがここでリンチされるみたいじゃないですか? すばらしいシュチュエーションですね。ベタですね」
そう言いながら入ると、いきなり後ろのドアが閉まる。
そして後ろから、沙希とは違う声がした。
「そう、あなたはここで苛められるの。あと、ベタで悪かったわね!」
そう言い終わると同時に射頭夢の背中を強く押し倒す。
「ムギュ!! ベタだ!! ベタ過ぎる展開だぞこれぇー!!」
「うっせぇこのアマ!!」
そう言って足元にあらかじめ用意していたパイプを拾い、盛大に振り上げた。
「うわわわっ!! マジだ!! この人目がまじだぁぁぁー――!!」
そう言って大きな悲鳴が倉庫に響き渡った。
窓からはその光景をずっと見つめているかのように太陽が枠の中にすっぽり入って見えた。