3章の1話
時間はあっという間に過ぎ、校舎の中をオレンジ色に染め上げ、自分たちの生徒会に間に合おうと、小走りに走っている生徒たちが見受けられる。
和也はコツコツと足音をたて、生徒会室に向かっていた。
ちなみに射頭夢とは朝別れてから会っていない。
あれから色々と考えたのだが、どう会えばいいのか、何を言えばいいのか全く思いつかなかった。
そう考えているうちに生徒会室につき、扉の前で足を止める。
ドアノブに目を向け、ポッケトの中から静電気処置機を取り出し、ドアノブに近づける。
その瞬間、何かが弾けるような音が出てきたと思ったらそれは一瞬の事で終わる。
和也は暫く止まっていたが、もう何もないと察すると何事も無かったようにドアノブに手をかけ扉を開く。
「珍しいね。君がぎりぎりの時間に来るのは」
出迎えたのはほかの生徒会メンバー。声を掛けたのは生徒会長の城西院 爾である。
和也ははあとため息をついた後に、
「…別に良いじゃないですか。早いが遅いが僕の勝手です。あと、ドアノブに静電気を仕掛けないでください」
「何ですかつれないですね。私はただ純粋に君の驚く顔が見たくてやっただけですのに。ちなみにそこを撮って売りまくろうとしただけ…ただそれだけですよ」
「そういうことをあっさり言わないでください」
顔立ちは綺麗に整っており、見るもの全てを虜にしてしまいそうな顔をしている。
いつも穏やかな笑みを浮かべており、誰に対しても敬語を使う。
和也意外には優しく接しており、和也以上に名の知れた人物である。
「そんなことより、君、付き合ったみたいですね。どうです?楽しいですか?」
「別に…扱いが難しくて疲れるだけですよ」
「アハハ…君がそう言ってられるのは今のうちですよ? その内毎日毎日、24時間彼女の事が気になって気になってしょうがなくなって……」
「どういう意味ですか?」
全く崩さない笑顔に対して睨みながら和也は質問する。
だが爾は肩を竦めて、
「さあ。どういう意味でしょうねぇ? 会議を始めましょうか」
そう言って和也の席につけと促す。
和也は爾を睨みつつ席に座り、目の前にある資料に目を移す。
「さて、会議を始めましょうか」
「だー…生徒会って何時終わるんだぁ?」
机に頬ずりしながら射頭夢はうなだれる。
朝の事はもうすっかり気にしておらず、一人誰もいない教室で飴を咥えていた。
「遅いかな? 遅いのかな? どんだけまっとりゃいいんじゃ…」
口に含んでいた飴を音を立て噛んでいたが、廊下からほかの音が近づいてくるのに気付く。
それは足音で、射頭夢の教室前でぴたりと止まり、扉が開かれる。
「…射頭夢ちゃん、だよね? ちょっと話があるからついて来てくれないかな?」
一見穏やかそうな表情をして入ってきた女子生徒が射頭夢に声を掛ける。
射頭夢はその生徒を知らなかったのだが、
「ん。まだ時間掛かりそうだし、暇だから良いよ」
そう言って机から身を起こし、女子生徒とともに教室から出る。
並んで歩きながら女子生徒は申し訳そうな顔をして射頭夢に話し掛ける。
「ごめんね。彼氏とか待ってたの?」
「そんなとこです。でもちょっと位困らせたっていいですよ。そう思いません?」
「ふふ、そうかもね」
柔らかい笑みを向け、射頭夢との反対側の窓を見つめる。
凶悪な顔をした後、これからする事を想像したように、楽しそうな顔を浮かべる。
対する射頭夢も、先を見たように楽しそうな顔を浮かべてていた。
ただし、彼女とは違い、これからジェットコースターに乗る子供のように純粋に目を輝かしていて笑っていたのだが―――