元モブ、情報屋に行く。森を荒らす?
続いて僕は冒険者組合内にある情報屋に向かう。途中見知らぬ男がいきなり声をかけてきた。
「そこの君は確か先ほど最上位冒険者の受けつけにいなかったか?」
「そうだけど、何か用ですか?依頼なら嬉しいぞ」
「依頼ではないのだが、頼みがある。俺のパーティにはいらないか」
全身筋肉むきむきの兄ちゃんからのパーティのお誘いだ。身長差がだいぶあって絡まれてるみたいにも見えてしまうな。
「お前、抜け駆けはずるいぞ。あいつのパーティじゃなくて俺たちのパーティに入ってくれよ」
「そんなのおかしいよ。わたしのパーティに入って見ない?お試しでいいからさ」
「そうやっていつもいつも結局無理ありにパーティに引き込むんだろ」
冒険者組合内は言い争いが始まった。うるさい……。僕は冒険者達が言い争いをしている間に情報屋へとこっそりと向かう。相手をしている暇は本当にないのだ。
「いらっしゃい、なんの情報がお望みかい」
顔をフードと仮面で隠し全身黒のローブを身にまとっている男だ。表情は伺えない。いかにも情報屋って感じがする。
「まずは王都についての情報をください」
「はいよ」
この国の名前はエリシアで4つの貴族と王によってなりたている。王宮の庭にはエリシア国を建設した第一国王エリシアの造像があり、そこの造像から見て北、南、東、西と4つに分け貴族に領土を与えている。
貴族はその領土を管轄していて、基本的には領土は増えたり減ったりはしない。なので貴族同士のいざこざはないことがこの国が安定する一番の理由だ。さらに絶対王政ではなく、大きな決め事をするときは貴族達には1票ずつあり、王族は3票ある。よって王族が暴走しようしてもできない仕組みになっている。
王位の継承者は男女問わず与えられ、その基準は剣技、魔力量、魔法技能や魔法スキルによって順位が決められる。しかし少し例外はあるみたいだ。よって過去には第八王女が王座につく時もあったらしい。
それぞれ貴族には任されている分野があり北は戦闘関連、南は商売発展、西は財政管理、東は工場管理である。
冒険者組合は戦闘関連に属しているのでここは北に位置する。属しているイコールエリシア国に属しているではないらしい。
「王都に関してはこんくらいか、他にはあるかい」
「第一王女について聞きたいのですが」
僕が第一王女と名を告げた途端情報屋は少し言いたくないよな雰囲気を出してきた。やはり何かあるのかもしれない。
「第一王女の情報にいくら出すんだい?」
「金貨一枚でどうですか?」
「それなら遠慮しておく」
「ならば!金貨二枚!」
僕はこの話を終わらそうとしていた情報屋を逃がしはしない。知っていて損なことはないからな。ゴリ押し感はあったけどね。
「それなら……良しとしよう。ついてこい」
重大な情報を与える時は情報屋内にて伝えるためといわれ案内された。情報屋内に入る前に魔法を感知した。妨害魔法情報操作である。
情報操作とは相手に話している内容をわからないようにするための魔法であり、それを情報屋内はその魔法で覆われている。そこまですることなのか。
「第一王女について何を知りたいんだ」
「全てお願いします」
「だろうな」
僕は第一王女の話を聞きついでに宿屋について情報までもらった。冒険者カードを見せると全ての情報を金貨二枚でよいと告げた。
情報屋に聞いた通りにいくと猫のシルエット看板の木でできている二階建ての宿屋「くつろぎ」があった。
宿屋「くつろぎ」は毎年建物を建て替えていることで有名らしい。最上位冒険者、貴族や大手の商人行きつけの宿屋らしい。
もちろん宿代は高く出費は抑えたかったが変に抑えてけち臭いと評判が立つのも嫌だしな。
そんなことを考えながら店のドアを開ける。ちなみに軽食でよければ朝、昼、夜いつでも食べれるらしい。
「いらっしゃいませ、何泊しますか?」
「金貨一枚分で」
「では一ヶ月ですね。かしこまりました。二階の八号室へどうぞ」
店員は八号室の鍵とマナー書を渡して来たので受け取る。早速部屋を見にいくか。
部屋の前まで来たのでドアを鍵で開け中に入る。全体の広さは三十畳ぐらいでベット、机やクローゼットはもちろんのことに別部屋にトイレ、浴槽もあり気温管理までバッチリである。
お泊りの恒例であるベットにダイブをした。布団はふわふわで寝心地がよい。思わず寝そうになってしまった。あぶないあぶない……
部屋を一通り見終わったので夜ご飯を食べに宿屋の一階の食堂ホールに向かう。
マナー書には席に座ることでオーダー完了と書いてあるので席すわる。すると三十秒もしないうちにウエイトレスが料理を運んで着た。
内容は魚のボイル+サラダだ。軽食と書いてある割には多いな。実際は平均男性腹八分目ぐらいの量だ。 美味しさはまぁまぁだった。魚のボイルは味噌みたいな味がした。サラダは………サラダって感じだ。食レポとしては0点だな。
俺は料理を完食して王都から約五キロ離れた静かな夜の森へと向かう。
マップを開き人がいないこととモンスターがいることを確認したのちにマップから空間把握能力に切り替える。切り替えると言ってもマップ使用時は能力が使用できないためマップを閉じ元に戻しただけだけどね。
ちなみに空間把握能力とは半径1キロメートルにある生体反応をわずかな空気の移動や空気の振動を利用して見つける能力のことである。魔導ゴーレムような魔力で動くもの関しては適用されないのでそれは魔法探知能力で補っている。情報屋で魔法を感知したように。
夜行性のモンスターだけにしても周囲のモンスターの数がやけに少なくないような気がする。まぁ、気のせいだろ。
「始めるとするか」
掛け声と同時に僕は右手に魔力を集中させる。すると周辺にいるモンスター達はこちらに向かって移動を始めた。
「やっぱりか」
予想通りモンスターは魔力を糧に生命を維持しているので魔力に寄ってくる性質がある。よってモンスターと戦いたい時にはこれが一番手っ取り早いのである。だが魔力を強くしすぎると逃げるためそこは調節しなければならないが。
僕が構えようとした直前背後からの奇襲。少し体を横に傾けかわす。空間把握能力の前では奇襲は無意味だ。モンスターは姿を現わす。
「ダイヤウルフ?」
ダイヤウルフとはその名の通り皮膚がダイヤで覆われているので物理攻撃には強いが魔法攻撃には弱い。標高三千メートル以上に生息していて希少価値が高いモンスターがなぜここに。それも10匹も……。
ダイヤウルフは僕が先ほどの攻撃を避けたことから強者ということを理解したのか一斉に全てのダイヤウルフで飛びかかってきた。
試しにまずは1割程度でいいか。僕は地面に手をつき水魔法を放つ。
「広範囲絶氷」
一瞬にして全てが白銀の世界に変わる。ダイヤウルフや草木はもちろんのこと大気さえも氷となりヒビが入り崩れ落ちる。僕を中心に辺り一面氷だけの世界が約一キロメートル続く。
「やりすぎた………」
ここまで被害が出てしまうとは………ダイヤウルフのダイヤを回収して売りたかったのに。氷の破片なんか誰が買い取ってくれるんだよ。
1割程度でこれならだいぶ自重した方がいいな……
「今日はもう帰ろう……」
僕は少し強すぎることに嬉しくもあり、しょんぼりもしながら複雑な気持ちで宿屋に戻るのであった。
読んでいただきありがとうございます。
念のためですが第一王女の情報に関してはわざととばしています。
ダイヤウルフに関してはゲーム内に実際にいたモンスターという認識であります。