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「趙雲の気まぐれ短編集」  作者: 趙雲
季節毎の短編集
20/69

「第1回人格抜き打ちテスト!!」

皆さん、ハロウィンって別に10月31日だけじゃなくてもいいんですよ?

そんなお話です。いつだってトリックオアトリート! ですよ!


※約3,000字です。

2018年某日 

ホテル ウェルダン・ブラック

ロビー

少年B



 "BLACK"も終わってさぞかしお疲れな皆様に息抜きをしていただこうと、黒河組と藍竜組の総長主催でリゾートホテルへ招待されました。

僕の名前は少年B。今年で12歳。

元片桐組の殺し屋の卵で、まだまだ皆さんに顔は知られていないので、テスト実行委員会の実行部隊に選ばれました。


 そのテストの名は……【第1回人格抜き打ちテスト】

テスト内容は至ってシンプル。

あえてハロウィンもポッキー&プリッツの日も外して、「トリックオアトリート」と、言ってきた僕にどんな反応をするか。

お菓子をくれるのか、くれないのかは勿論、その他の反応もジャックオーランタンの帽子に取り付けた超小型カメラで撮影します。

その映像は、それぞれの総長に送られテスト終了後に、1番対応の良かった方と悪かった方を発表。

……までしか聞いていませんが、大丈夫ですよね?


 また、皆さんのスマフォやその他連絡手段は総長がすんなり預かっているとのことなので、通報される心配はないとのこと。

最後に僕は部屋割りの表と地図を持っているので、好きな部屋から訪問していいそうです。

基本は2人部屋ですし、最悪逃げられ……るといいですね。

まぁ、逃げられない場合や命の危険が迫った場合は、『緊急呼び出しボタン』を押せば良いみたいです。


 それでは、一流の殺し屋さんたちがどんな反応をするか不安もありますが、やっていきましょうか!



 まずは優しそうな人から行きたいので、藍竜組の筆頭役員の1人である鳩村涼輔(はとむら りょうすけ)さんのお部屋に行ってみましょうか。

同組の(すい)さんが同室なら大丈夫ですかね。

……それでも役員って怖そう。


――ピンポーン。

上質な部屋のチャイムを鳴らすと、「はいは~い」と、少し頼り無さそうな男性の声が聞こえてきました。

その男性がドアを開けると、視界に入ったのはキラキラ光るウェーブがかった金髪に、僕のはるか上まで伸びる身長。

あまりの綺麗さに言葉を失いそうになりましたが、僕はテスト実行部隊としての務めを思い出し、

「トリックオアトリート!」

と、ハロウィン衣装でジャックオーランタンの大きな籠を男性の腹あたりに向かって差し出すと、その男性は少ししてから微笑みました。


「ハロウィン過ぎてるよ? う~ん、お菓子かぁ」

と、男性は申し訳なさそうに眉を下げると、奥に居た薄鈍色の短髪でメガネを掛けた男性がおそるおそる出てきました。

僕はまだ殺し屋の卵なので、どちらがどちらか分からないのですが……。

お名前が優しそうだったので。


「お、お菓子……? ひゃ、百あ、味ビーン、ズで、でも、も良い?」

すると薄鈍色の髪の男性が、某有名映画に登場するお菓子を箱ごと差し出してくれました。

少し申し訳なさそうでしたが、対応はバッチリそうですね。

「はい! ありがとうございます!」

僕はきっちりお礼を言い、お部屋を後にしました。


 殺し屋さんたちって、もしかして優しい方も多い?

その証拠にこの後に何十部屋と回っていますが、ほぼ優しい対応で自信に繋がっています。

まぁ、一部厳しい対応をされる方もいらっしゃいましたが。



 さて、次は……藍竜組の裾野聖(すその ひじり)さんと菅野海未(かんの うみ)さんの筆頭役員コンビにしましょう!

役員になれるくらいですし、きっとこの方々も優しい筈です!

それにこんな卵でも顔を知っているくらい有名人ということもありますし。


 何十部屋と回ったので、チャイムでの呼び出しにも慣れました。 

もう怖いものもない……でしょう。

とはいえ、役員なので緊張はしますが。


「は~い」

関西弁のイントネーションで出てきた茶髪の小麦肌の男性。

この人が菅野さんだ。

目がくりくりでかわいらしい見た目で、とても殺し屋には見えない。

むしろモデルさんだ。


「トリックオアトリート!」

笑顔で扉を開けてくれた菅野さんに向け籠を差し出すと、菅野さんは僕の方を見たままこう言った。

「なぁなぁ、ハロウィンって今やったっけ?」

こう訊かれて、僕はすぐに頷いたが、菅野さんはそれに全然反応しない。


「大分過ぎてしまっているが、足音からして全部屋に回っているようだな」

と、重厚感があって色っぽい声が近づき、菅野さんの肩を軽く抱いて言う男性。

……この人が裾野さんだ。


 噂通り考えが鋭くて表情が少なくて、とても賢そうな顔をしているなぁ。

身長は10cmくらい菅野さんより高くて、筋肉質で男でも格好いい、憧れる雰囲気だなぁ。

菅野さんとは対照的で、肌色よりも少し白っぽくて髪も黒の短髪だ。


 やがて菅野さんは頬を赤らめながらも裾野さんの手を振り払うと、

「お菓子な! こいつのめっちゃ高い生チョコあげるから、目ぇ閉じて口開けといてな!」

と、裾野さんを指差しながらにっこり微笑んで言うので、僕は指示通り目を閉じて待っていた。


 それから数秒程で、僕の口に何か放り込まれ、優しく口を閉じさせられた。

……ん? チョコじゃない?

「もう目開けてええよ。美味しい?」

でも微笑みながら言う菅野さんの手には、いかにも高そうなチョコレートの箱。

何の事かと裾野さんを見上げてみたが、無表情で僕を見下している。

いや、僕じゃない。

超小型カメラと目が合っているような……?


 それにしても菅野さんと違って、怖いなぁ――あ゛!?

表面はチョコだけど、中身ってこれはもしや!?


「ゲホゲホ!! がら゛っ゛!!」

喋れない程の辛さということは、青唐辛子のチョコでは!?

逆にイタズラしてくるなんて、ズルいです!

おかげさまで火を噴くかと……。


「はぁ……子ども相手に何やっているんだ。君は早く藍竜総長に水でも貰ってくるといい」

と、裾野さんは菅野さんの頭を小突き、続いて僕に目線を遣ると、テスト主催者の名前まで出し、呆れたような笑顔を見せてくださった。

やっぱり僕じゃバレちゃうのか。


「え? 何で藍竜総長なん?」

と、僕に手を振りながら扉を閉める菅野さんは、終始笑顔だったなぁ。

だけど目的は全部バレちゃったかな。

優しい方たちだったのは間違いじゃなかったけどね。



 よし、じゃあ気合入れて回っていこう。

というわけで、最後になったのが後醍醐傑(ごだいご まさる)さんと後醍醐純司(ごだいご じゅんじ)さん。

兄の傑さんは"BLACK"で亡くなったから亡霊の筈だけど、鳩村さんの能力で1日だけ実体になっているそうだ。


 部屋のチャイムを鳴らし、少しの間待つと……突然大きな音を立てて扉が開き、ショットガンの銃口を口に咥えさせられた。

この片目が前髪で隠れている男性が、傑さんだったかな。

「どこの組のモンだ?」

左目の目尻すぐ下にほくろがあって、どことなくセクシーな人だけど、発している言葉や口調は荒いし怖い!

「はうはうわう~」

だけど僕は銃口を口に咥えさせられているので、全く喋れない。


 するとそれを見かねてか、弟の純司さんが僕の籠に青色の飴を何粒が入れてくださった。

「それね、食べると胃が溶けるくらい美味しいから、君を寄越した奴の口にぶちこんでおいてね」

と、貼り付けたような笑顔で言いながら。

だがすぐにくるりと方向を変えると、

「兄さん、この子むしろ研究してみたいんだけど、ちょうだ~い」

と、僕の事を後ろから抱きしめながら言うので、僕は命の危険を感じて『緊急呼び出しボタン』を押した。


 そうしたら押した直後に藍竜総長が駆け付け、僕から純司さんを引き剥がして笑顔のまま黙って扉を閉めました。

「ありがとうございます」

と、僕がたんまり溜まった籠を差し出しながら言うと、藍竜総長は何度か頷きながら、1つのお菓子を除いた籠の中身を全て別袋に入れてしまいました。

「あれは別にいいんだが、百味ビーンズ以外は全部偽物のお菓子だ。後醍醐傑と純司には、よ~く言っておく」

と、百味ビーンズだけになった籠を僕に返し、総長はそのまま歩き去ってしまいました。



 その後、帰りの時間になって全員がバスの前に集合したときに、後醍醐傑さんと純司さんの姿が見えなかったのは何故ですかね?

まぁ……これも「トリックオアトリート!」の効果なのかもしれませんね!

時期が外れていてもハロウィンって不思議!! 来年も楽しみだなぁ。

モブ少年とプロの殺し屋さんたち。

不思議な組み合わせでしたが、第三者から見るとこんな風に見えるんだよな、と改めて考えさせられましたね。


本編は11月23日(金)or 11月24日(土)or 11月25日(日)更新です。

それでは良い一週間を!!


趙雲

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