「犯した罪の告白-1-」
作者です。
新作か? 続編か? と思っていた方々、申し訳ございません。
気晴らしの短編集です。
第1弾は友人の希望で、藍竜総長です。
こちらは5話編成で進んでいきます。
本編や番外編ほど長くはありません。
どうぞ、お楽しみくださいませ。
1975年8月10日 正午
昼も夜も司る0時に生まれた俺はその日、藍竜司と名付けられた。
父親は優しく、人の機嫌を上手く取れる良い父親だ。
対照的に母親は厳格で、子どもの泣き声や笑い声などといった子どもの声全般を忌み嫌う。
だが俺が昔から大人しかったからか、弟が産まれるまでは表裏の激しい親だとはつゆ知らず。
というのも、生まれたその日に弱い卵アレルギーを持っていると言われても、母親は笑顔で頷いたというからだ。
そんな俺が夢中になったものは、戦隊シリーズの悪の組織のリーダーだ。
これを言うと周りに不思議がられるが、あれほど目的が明確で自信に満ちた人物は居ない。
だから負けそうになっても部下が逃げないのだ。
そのうえ、だいたいのリーダーは部下の特徴と人物像を把握しているから、レッド以外の前には現れない。
これを幼い頃から感じ取っていたからこそ、俺も部下の面倒は絶対に見ようと決めたのだ。
願わくば全員と話したいから、廊下をぶらぶらと歩く。
怖がっている部下には、自分から話しかけに行く。
そうすれば、強張っていた顔も笑顔に変わる。
……不思議なものだな。
辞める人物は2015年になった今でも、1人も……いや、裾野は別だ……。
話を戻すが、俺は大人しいことから両親からは邪険に扱われることもなく、
むしろ何でも習い事をさせてもらえた。自由に選ばせてもらえた。
だから俺は剣道、柔道と当時は珍しかった英語……そして天文学教室を選んだ。
剣道は父親が有段者だから、柔道は母親が名人だから、英語は将来に役立つから、そして天文学は――
――俺が本当になりたかった職業を幼い頃からやっていたある男の子が、好きだったからだ。
1980年8月10日 午後
5歳になった俺は、幼稚園の友人が突然行けなくなったというマジックショーのチケットを3枚貰った。
今思えば誕生日プレゼントのつもりだったのだろう……俺は悪の組織のような配色のポスターとチケットに胸を躍らせていた。
それからあまりの嬉しさで、幼稚園バスの送迎を無視していたらしく、自力で家に帰ったという。
だが家に帰った俺の目の前には、思わず疑ってしまう光景が広がっていた。
「だ、だれ……?」
玄関からリビングにかけて、積み重なって倒れているケチャップまみれの人たち。
幼き日の俺は両親の行き過ぎたサプライズかと思い、ピクリとも動かない人たちをよじ登り、ようやくリビングに辿り着いた。
するとそこには、返り血をふんだんに浴びせられてはいるが、一切傷を負っていない両親が背中合わせに眠り込んでいた。
目線を下に映せば、2人の手に握られた……剣と銃がある。
剣には夥しい血……母親の構える銃には、至近距離で撃ったからか、人の肉片がついていた。
「あんたぁ……最高だよ……」
母親は脚を投げ出してそう寝言を言うと、父親の肩をポンポンと叩く。
「君も相変わらずだ。結婚してよかった」
父親は脚を畳み、その手に自身の手を重ねた。
「……」
俺は2人が眠っているのだから、邪魔してはいけない。
いつも通り、自主練をしよう……。
そう思い、その場を後にしたことは覚えている。
幼い手にチケットを握りしめたまま。
――数時間後。
何時間か経った頃、両親がいつもと変わらない笑顔で御飯が出来たと呼びに来た時、
「お誕生日だから、お友達からチケット貰ったんだ」
と、マジックショーのチケットを見せると、父親は俺の頭を優しく労わるように撫で、
「よかったな~! お、マジックショーか。たまには家族で出かけようか?」
と、母親の機嫌を伺いながら言う。
そう見えるのに、父親に怯えている様子がないのは……今でも尊敬している。
「いいね。マジックなんて見たことねぇし……それに司が観たいんなら、出かけるしかねぇだろ」
母親は厳格ではあるが、口は悪い。
声は女性の割に低いが、冷たい雰囲気はない。
あぁ、さっきのは幻覚なんだ。
俺は都合よく解釈し、血の臭いも残らない廊下やリビングを通り、ダイニングで食事を摂った。
……やっぱり、気のせいだ。
これが初めて俺が犯した罪、というべきものだろうな。
年齢制限もランキングも関係ない、この上ない気楽さに浸っております。
第1話のみ、作者が締めくくらせていただきます。
藍竜総長の過去は、自分から語ることもありませんから……どうしてもこういう形になってしまいますね。
ですが全5話で、ゆっくりなようで早く進んでいきます。
投稿時期は、気が向いたとき。
今は風向きも良いので、明日も出します。
それでは良い週末を!!
作者