3話 世紀末救聖豚伝説
今回も短いですが、楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。
「これより、オーク殺害未遂事件の裁判を始める。」
訳が分からないまま俺は、裁判所に引きずられて来た。
裁判所と言っても野外でコロセウムっぽい円形の囲いの真ん中に裁判でよく見る証言台と裁判官席があって周囲を野球場の観客席みたいに傍聴席が囲んでいる感じだ。ていうか満員じゃねえか…何百人いるんだよ!?
まじで意味分からないんだけど!?なんでオークから女性守ったら捕まるんだよ!?
裁判長!こんなの不当だ!ふざけんな俺は無実だー!弁護士!弁護士を呼べ―!!
「静粛に。被告人の罪状はオークに対する殺害未遂罪!王配殿下より被告人は異世界から召喚された勇者であり、この世界での常識がまだ完全ではない故、情状酌量の余地を求められたがそれを考慮しても、これは余りに残虐な行為であり弁護の余地無し。よって判決!死刑!」
………は?
はあぁあああ!?なんだそれ!?横暴過ぎんだろオイ!?
どんな法律だよ!王配の意見ガン無視するとかどうなってんだ!
てか、何でオークを傷つけちゃいけないんだよ!オークなんて人を襲って女を攫う害獣だろうが!
「静粛に!被告人。オークを害獣などと、何を意味の分からないことを言っているのだ。オークは穏やかな気質で勤勉勤労に励み種族全体が誠実で、かつて世界中で人間やエルフを含む亜人種の子供が殆ど生まれない時期が続いた際、本来同族しか受け付けない趣向を曲げてまで、その全ての種族と子を成す事ができ、更に決してハーフが産まれないという素晴らしい種族としての特性を使い少子化を食い止め、今日の繁栄を導いた聖なる種族であるぞ?しかも他種族との間でオークの仔が産まれる確率は1割にも満たない故にオーク自体の数が激減してしまい今では数えるほどしかないオークの里に少数が住むばかり……これは教育の行き届かぬ農村の子供でも知っていることだ。いくら異世界の勇者であっても知らぬはずあるまい?」
いや知らねえよ!?俺が知ってるオークと全然違う生き物じゃねえか!!王配のオッサン重要な説明忘れてるじゃねえか!?いや?この世界では常識だからそもそも説明する考えが浮かばなかったのか?
てか何?それじゃ俺、その聖人…?いや聖豚…?な上に絶滅危惧種に斬りかかったってことかよ!?やべえよ…これアカンやつだよ…………せ、せめて死刑だけは回避しないと!
こういう場面だと普通、「ちょっと待った」とか言って超絶イケメンが助けてくれたりするだろ!!
いや、この世界に来てから知り合いなんて王配のオッサンと謁見の間に居た兵士さん達ぐらいしか居ないけど……どうすりゃいいんだよ!?
やべえ。やべえ。
オロオロと客席を見回すしかできない
誰か!誰でもいい!助け……………え…?
その時、あのオークが客席に居るのを見つけてしまった。
あ、目が合った……
オークが俺を見て哂ったように見えた…
そうだよな。いくら聖豚でも斬りつけられて流石に許す訳無いよな…俺、終わった………
「ちょっと待って欲しいブヒィ!!」
へ?