15話 別に導かない者と新たなる旅路
皆!待たせたな☆
『……』
何かが聞こえる。
『…………し』
囁く様な声。
『……少し』
遥か彼方から。
聞き取る事が困難な程小さな声がする。
・
・
・
『あと少し……』
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チュンチュン
……む。
もう朝か。
……まだ眠い。
眠い……けど、昨日は買った本を読むために休みにしちゃったし、今日は仕事しないとなぁ……
ゆっくりと目を開けると、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいるのが見える。
窓の外からは雀らしき鳴き声も聞こえる。
外の空気でも吸って目を覚まそうかと、窓に向かう。
そこで、ふと、ベッドの脇に置いてある食べ残しのパンが目に入った。
パン屑にして外の鳥にでもやるかと思い、それを掴んで再び窓に向かう。
カーテンを開けて、窓を開ける。
冷たい空気が部屋に入って来たことで微睡んでいた意識が覚醒する。
目が覚めて来たので、先ほどのパンを少しちぎって窓の外の屋根に撒く。
チュンチュン
おっ。
寄って来たな。
今まで遠目にしか見てなかったけど、異世界でも雀は雀なんだな。
……ん?
あれ?
目の錯覚だろうか?
一羽だけ隣の建物の屋根に居るはずなのに、近くに居る雀より明らかにデカく見える気が……
そう思っていると、その雀(?)が此方に振り向き跳ねながら近づいてくる。
トントンなんて可愛い音じゃない。
ドスッドスッという重い音を立てながら近づいてくる。
その雀(?)が目の前まで来ると普通の雀との違いがよく分かった。
いや、形状は同じなのだが、大きさが明らかにオカシイ。
ヂュンヂュン
うん。
やっぱり異世界だったね。
知ってた。
2メートルサイズの雀が目の前に居る圧力がヤバい。
パンを差し出したら一口で持って行かれた。
「朝から我に食物を捧げるとは、褒めて遣わすぞヒューマン。」
……流石だな異世界。
雀の口からバリトンボイスが飛び出すとは思わなかったぜ。
いや、マジか……
「うむ。中々に美味であった。やはり食物は小麦に限るな。」
雀(?)が無駄に良い声でパンの感想を述べてくる。
「よし。気に入ったぞヒューマン。名を名乗るがよい。覚えておこう。」
あ、ヒデオです。
「そうか。ビデオか。」
いや、ヒデオですけど!?
「そうかそうかヒデトか。よし覚えたぞ。」
違いますけど!?
この雀(?)、人の名前覚える気が無いだろ……
「では、さらばだ。ヒトデよ!汝が我が鳥人族の里に来ることがあれば歓迎しよう。」
翼を広げ飛び立とうとする雀(?)。
ふと、なにか言い忘れたことがあったのか雀(?)が振り返った。
「おっと、我の名を名乗るのを忘れていたぞ。記憶せよ!我は鳥人族の里の長フェーニクスである!」
随分と大それた名前だなオイ!
「では今度こそさらばだ。ヒノデよ。我の名を忘れるでないぞぉぉぉーーー!」
叫びながら飛んでいくフェーニクスと名乗った雀のような何かを見送りながら俺は思った。
お前が覚えろよ。
もう最終的に【ヒ】以外合って無いじゃねえか。
……はあ。
朝から疲れた……
シューバイン誘って仕事行くか……
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さて、ギルドに来たのはいいものの、今日は依頼の数が多くてどれにしようか迷うな……
「うーん。これなんか良いんじゃないかブヒィ?」
どれどれ?
温泉に侵入してくる【ダックモール】の捕獲ねえ。
ダックモールってなんだ?
「ダックモールっていうのは、なんて言えばいいのかブヒィ。うーん?ちょっと待っててブヒィ。受付の人から図鑑借りてくるブヒィ。」
シューバインは受付に歩いて行く。
そして直ぐに図鑑を借りて戻って来た。
「えーと。これこれ。こういうのブヒィ。」
そう言いながら見せてくる図鑑に載っている絵を見ると、そこには実物は見たことが無いがテレビか何かで見たことがある生物が描かれていた。
モグラのような体に、カモのようなくちばしを生やし、ビーバーのような尾を持つまるでキメラのような不思議な謎生物。
そう。
カモノハシである。
「大体2メートルぐらいの大きさが有るブヒィ。」
デカいな……
ん?
でもこの街に温泉なんて有ったか?
「この街には無いブヒィ。これは温泉郷テルマエからの依頼ブヒィ。」
温泉郷?
別の街からの依頼だったのか。
それじゃあ、依頼を受けるならその町に行かないといけないのか。
「そうブヒィ。遠征になるブヒィ。乗合馬車で大体2日くらいの距離ブヒィ。あ、二泊分の宿と食事が付くらしいブヒィ。凄いお得ブヒィ。」
移動に往復4日か……
宿代も出るなら行ってみるか。
……そういえば、この世界に来てから初めて他の街に行くことになるのか。
感慨深いな。
「丁度明日、乗合馬車が出るからそれで行こうブヒィ。」
よし。明日に向けて準備するか。
まだまだ続くよー☆




