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徒然なるままに書き申したる短編集

ここは異世界ですか? いいえ、ネバーランドです。

作者: 森の人

 目を開けると目の前に現れたのはドラゴンでした!


 ……ドラゴンでした!


 ………。


 …………え?


「ちょちょちょty、ちょっと待っていただいてもいいですかね!? ワタクシなんて食べても美味しくないでございますですよ! 上から下から大洪水でトイレに引きこもることになりますですよ!」


 言葉が通じるかなんてどうでもいいんじゃ!

 とにかく…とにかく命だけは助けていただかねば!!


『……あ、はい』


 つ、通じたぁ…。

 なんとか助かったみたい?

 …ふぅ、まったく脅かしやがって。

 べべべ別にビビってねぇし!

 こっちがビビってると思って襲いかかってきたら、逆にぶっコロがしてやろうかと思ってたくらいだし!


『えっと…できれば痛いのは勘弁して欲しいんですが…』


 き、聞こえてらっしゃるんですますか?


『はい。なんか相手が思ってることとか分かっちゃうみたいで…すみません』


 …い、いえいえいえいえいえいえとんでもない。

 ワタクシの方こそ調子乗ったこと言って…いや、思ってしまって申し訳ないです! 本当にごめんなさい!


『いえいえこちらこそ勝手に思考を読みとってしまって』


 いえいえこちらこそ。


『いえいえ』


 いえいえ…。


『いえいえ』


 ……ほ、本当に怒ってません?


『はい、先ほど言った通りです』


 あ、えっと…じゃあお互いに悪かったということで?


『あ、そうしてもらえると助かります』


 なんとか最悪の事態は回避できたみたいだぜぃ…。


「ところでドラゴンさん」


『はい、なんです? あ、僕のことはドラリンたんと呼んでください』


 ど、ドラリンたんですかい…それはなんともファンシーな…。


『そうよく言われるんですが、本名なんですよね…』


「あ、あ…べ別に名前を愚弄したわけではなくてですね」


『分かってますよ。もうそういう運命として受け入れてますから』


「…そうですか。すみません」


『いえいえ』


 ……さっきから思ってたけど、このドラゴン…。


『僕がどうしたんですか?』


「あ、いえいえ何でもないですよ」


『そういわれると気になっちゃいますね…まあいいです』


「…あっさりと諦めるんですね?」


『大体は予想できますし…無理に聞き出す必要も感じませんしね』


「そ、そうですか」


『…そうだ、ついでに僕の生き方でも聞いて行ってくださいよ』


「あ、はい。聞かせていただきます」


 逆らってコロがされたくありませんし…。


『だからそんなことしませんて…』


 分かってはいても、やっぱり力ある人の機嫌は底値たくないわけですよ。


『そういうもんですか』


「そういうもんです」


『ま、とりあえず話しますね。僕の生き方のコンセプトは”大体それでいい”です』


「ほうほう」


『いつも一生懸命にやっていても疲れちゃうだけですし、適度に力を抜いて休もうってことですね。もちろんやることはやって、たまには楽したり気を抜いていこうってことですよ』


「…つまり、ダラシなく生きるわけではないと言いたいわけですね」


『そうです。やることの基準を"大体"でテキトウに決めるのではなくて、やることやることの区切りを適当に決めて人生を楽しもうってわけです。あ、僕の場合は人生ではないですけどね』


「…わ、笑うところですかね?」


『それを聞かれると困るんですけど、まぁ笑ってもらえたらってところでした』


「すみません」


『謝られると余計に困ると言いますか…』


 …じゃあどないすりゃええねん!?


『面白くなかったらスルーでいいですよ』


「そ、そうでしたか。すみません」


『だから謝らなくていいですって』


「……あ、ところでココってどこなんですか?」


『…さぁ?』


「ふぇ?」


『いやね。僕としては君が誰かも知らなければ、ココをどう表現すればいいのかもわからないんですよね』


 ………うん、よくわかりません!


『そっか…じゃあ教えるのは無理ですね』


 無理ですか…それは困りますね…。


『そうですね…』


 ……元の世界に帰るにはどうしたらいいですかね?


『元の世界と言われても、僕は君のことをよく知らないので』


 …言ってもわからないと思います。


『じゃあ無理ですね』


 ですね…。


 ………。


 ……………。


『あの…とりあえずハンカチ使います?』


 …ありがとうございます。


『あ、そうだ』


 どうしたんですか?


『とりあえず起きてみれば何かわかるかもしれませんよ』


 …起きる、とは?


『文字通りです。夢から覚めればいいんです』


 ほうほう、つまりこれは夢ということですか?


『有り体に言えば、そうなりますね』


 つ、突っ込みどころが満載ですが、とりあえずこれは夢ということでいいんですね?


『まあ…そうですね』


 ……なんだよビビって損したわ。

 あ〜、マジ最悪。ありえないわ…。

 こんなトカゲもどきにビビるとかマジありえないわ。

 なんか変だとは思ってたんだよね。

 どこか偽物っぽいし、名前変だしさ。

 ま、俺が本気出せば、たとえ本物のドラゴンだろうと余裕だったけどね。

 よ・ゆ・う。


『えっと、あんまり好き勝手言われるのはさすがの僕でも頭にくると言うか…怒りますよ?』


 マジ、スンマセンした! 調子乗ってました!

 どうか許してください!

 ひらに、ひらにご容赦を! お情けを!


『…とりあえず起きたらどうです? もうどうすればいいかわかったわけですし』


 あ、はい。そうさせていただきますわ。


『じゃあ、またいつか』


 あ、はい。その時はまたよろしくです。

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