8:Mー3
基本的に2話完結で作ってます。章の番号が前の話から続いてるのはそのためです。
アタシの一撃。
腕の先から飛び出た、あったかい光の矢。
それによって自分の武器を壊されちゃったのは、ツヴァイにとってよっぽどショックだったらしい。
壊れた武器の付いた右腕の先を、ツヴァイはぼんやりと見つめている。
「僕の、僕の武器が……」身体の持ち主とは似ても似つかない暗い声で、ぼそぼそと嘆きの言葉を発している。
アタシはもう一撃をぶつけるために、両腕にエネルギーを集めた。この光は、見るだけで冷たくなるこの銀色のやつを消すための力だ。ならばそれを相手の身体にぶつければ、ショウは戻ってくる。アタシはそう確信した。
ツヴァイが正気を失っている間に、アタシはエネルギーを溜めつつ、相手の視界に入らないような場所にそっと身体を動かした。
部屋の空気が冷たい肌に触れる。今のアタシが唯一身にまとっている白いブラジャーとパンツ、しかし激しい動きのせいでその位置は乱れきってて、もう隠すべき場所も隠し切れていない。部屋の横にある鏡に、そんなアタシのどうしようもない全身が映っているのが見えたが、今は気にしている時じゃない。
そして、未だに俯いたままでいるツヴァイの死角である位置、彼から見て左斜め後方まで移動したところで、エネルギーが溜まりきったのが分かった。
アタシは、さっきと同じ要領で、光の矢を放った。
冷たい世界に、とってもあったかい一撃を!
光の矢はツヴァイの身体を包む銀色の装甲に命中した。装甲が火を当てられたアイスクリームのように溶けていった。
けど、ツヴァイはその攻撃に対して無反応だった。何も起こってないかのように、そのまま俯いた姿勢を保っていた。
命中した光の矢も、周囲の銀色が液体となって矢を包み込み、あっという間に見えなくなってしまった。
アタシは愕然とした。自分でも込められるだけのエネルギーを込めたはず。それなのに相手には全く通用していない。
そんなアタシに構わず、ツヴァイの身体がのっそりと起きあがってきた。
「よくも、僕の自慢の武器を……許さない、絶対に許さない……」
よく耳をすまさないと聞き取れないほどの小さい声だったが、その言葉の端からは確かに怒りが伝わってきた。
来るのか、アタシに向かって襲いかかってくるのか。アタシは身構えたが、めちゃくちゃな状態の下着しか身に纏っていない全身が、急に心細く感じてきた。
こんなんで、アイツに勝てるのか。こっちの全力の攻撃はまるで通用していないんだ。
アタシの中で怖いという感情が生まれているのが分かった。むき出しの腕も脚も、ぶるぶると震えているのが分かる。
が、そこで相手の足取りは止まった。
ツヴァイは棒立ちになって、アタシのちょうど真上、その天井辺りに視線を向いて、口をぼそぼそと動かした。
何が起こったのか分からない。でも隙が出来たのは間違いない。アタシはその間に必死に全身の震えを抑え、身体がまた戦える状態になるように整えようとした。
やがて、ツヴァイはアタシの方に向き直った。
「……今のアンセムにはやることが出来た……この武器も修理の時間が必要だ」
そういって、ツヴァイはホテルの窓の方に向かっていった。
「よく覚えておけ、この復讐は必ずしてやるから」
ガシャアン!
左拳を一度ぶつけると、ガラスに蜘蛛の巣のようなヒビが入った。
そのまま二度、三度と拳をぶつけ、人間の体が通り抜けられるくらいの穴が出来た。
ツヴァイはそれをくぐり抜けてベランダに出ると、そのまま外へ向かって飛び上がった。
ここは確か4階くらいだったか。地面に向かって飛び降りたのか、それとも隣の建物の屋上にでも飛んでいったのか。
いずれにせよ、ツヴァイの姿はもうアタシには見えなくなってしまった。
あとには、割れたガラスまで含めて、ベッドも机もイスも滅茶苦茶になった部屋、そしてそこにぽつんと立つアタシだけが残された。
助かった、みたいだ。
全身の力が抜けていく。アタシはその場にぺたりと座り込んでしまった。
十秒、二十秒と、何も起こらないことに安心する。また来る的なことを言っていたけど、当分はここには来ないだろう。
落ち着いたところで、アタシの頭もいろいろ考える余裕が出てきた。
部屋の中はもう滅茶苦茶だった。アタシ一人で片づけられるようなレベルじゃない。
人が来たら、いろいろ面倒なことになりそうだと思った。
となれば、こんなところにあまり長くいない方がいい。
そう結論を出すと、部屋の脇の方に転がっていた学生服を拾い上げた。ボロボロになったベッドの脇に置いてあったけど、綺麗に畳まれた状態のままおいてあった、ラッキー。
胸の辺りが結構キツめのシャツ、普通に着るときはなかなか苦労した。お尻がホントギリギリで隠れるだけのスカート、あんまり履いてる意味は無いかもと思ったが、履かないよりは気分的にマシだった。
そして、逃げるようにホテルを飛び出した。フロントは無人だったし、確か料金は前払いだったから、部屋を滅茶苦茶にしたことを除けば、このままいなくなっても問題ないよね?
さて、再び太陽の下に戻ってきたけど、どうしよっか。
この身体でやりたいことはまだまだいっぱいある。結局ショウもアタシをあっためてくれなかった。
その代わりに、何だかよく分からない光、アタシが生まれたときに最初に見た光のおかげであったまりはしたけど、アレが何なのかは分からない。
また襲われればあの光が出てきてくれるんだろうか。でもツヴァイには
となると、やっぱり男の人かなー。
そんなことを考えて歩き出したところで、良さそうな男の子を見つけた。
見覚えのある学生服を着ている。さっきまでアタシがいた学校のものだ。
身長はアタシよりちょっと大きいくらい、体型は細長といった感じかな。そんな彼は、ホテルの前でキョロキョロと何かを探すように周りを見回している。
ま、あっためてもらうにはちょうどいいかな?ただあんまり積極的じゃ無さそうだから、こっちも頑張らないとダメかなと思ってたら、
「あ……」
アタシの方を見ると、こっちにまっすぐ近づいてきた。ラッキーだった。これであっためてもらえそう。
アタシの方も彼に近づいていった。
その瞬間、
「!?」
何かが目に入った。それは何かが渦をまいているような、そんな動画とも画像とも付かないものだった。
そしてその瞬間、アタシの意識が身体から離れていくのが分かった。アタシという今こんな風に考えているものが、どこかに吸い込まれていく感じ。
これで終わりなの?まだまだやりたいことはいろいろあるのに。
いろんな思いを残したまま、アタシの意識はぐるぐると回りながら一カ所に吸い込まれていった。




