エリアクリア
「はーっ、はーっ、」
「大丈夫か、メスト。」
「大丈夫じゃないわよ!いきなり走らないでよ、見つけたからってさぁ!」
「悪りぃ悪りぃ。」
息を切らすメストに気を遣い、他の仲間たちの誰か1人でも来るのを待つためにその場にディアとメストは腰を下ろした。その時、
「呑気なもんだね。モンスターが湧いたらどうする気だい?」
九尾狐であり、ディアを含めた3人の仲間のうちの残りの1人の従者である九炎が立っていた。
「ご主人様は人使いが荒くってねぇ・・・君たちのとこに行くよう言われたんだ。間に合わないからってね。あと校門が閉まっていたようだよ。」
「校門が閉まってた・・・?これじゃあいつか学校の食料が無くなって・・・」
「その前に出るしかないだろうな。開け方は・・・テトラに聞いてみるか。」
ふざけて自分の主人のことをご主人様と呼ぶことのあるこの九炎はかなり自由だ。
彼は自分と同じ九尾狐が敵にいることを知らない。そのもう1人の九尾狐の椿と九炎の違うところは、椿は人の姿になることができ、元の姿に戻った時は4足歩行であること。浮くことはできない。
九炎は二足歩行に近いが、歩くことは全くと言っていいほどなく、浮くことができる。人の姿に変化はできるが、子供の姿になってしまうことが多く、本人はしない。同種族でもかなりの違いがある。
「でもそのテトラがいないんじゃない!携帯で電話しても出てこないのよ!?じゃあどうしろってのよ!?」
激昂して二人に(一人と一匹?)に八つ当たりするメスト。
「「いや俺たち(僕たち)に言われても・・・」」
その時、廊下の突き当たりを左に曲がったところにある階段から堪えきれないようなククッという笑い声が聞こえた。
一瞬で構える3人の前に現れたのは、いつも共にいる椿や夜烏はおらず、仲間であるヒロカゲやミラも伴わず一人で校舎をぶらついていたネステトラだった。
「「テトラ!?」」
「やぁやぁどうも。」
軽く手を挙げ応えるネステトラを見据え、ディアが言う。
「・・・とりあえず聞きたいことが山ほどあるんだけどな・・・」
「当ててみましょうか?まず一番は外見でしょうかね、この呪詛はどうしたかって?」
「そうよ・・・なによそれ。」
左手で右腕の呪詛を伝いながら言うネステトラにメストも眉をひそめながらネステトラに問う。
「それは応える必要のないことですね、お忘れですか?私は敵なんですけど。」
「性格も変わったな・・・」
「元がこれなんですよ。」
肩をすくめ、ネステトラが嗤う。
「ところで、聞きたいことがあったのでは?それくらいなら教えてあげてもいいですよ。」
「ほんと!?校門はどうやって開けるの?」
「あれはエリアを分ける境目なんです。エリアを開放すれば開き、市街地へ行くことが可能になります。開放するにはエリアボスを倒すことですね。」
深い闇を伴った笑いをしながらネステトラが言う。
「さすがにエリアボスの居場所なんて教えてくれないよねぇ?」
「そうですね・・・・初回サービスですよ?」
次からは自分たちで探せ、とでも言うように初回サービスだと言いながらエリアボスの居場所、屋上をネステトラが指差す。
「へぇ・・・ありがとな。んじゃ、お前と殺し合うことがないよう祈っとくぜ。」
「さぁ、どうでしょう。ご健闘をお祈りしますよ。」
終始笑いながら去っていったネステトラの姿が曲がり角で消えたのを見て、メストが立ち上がった。
「どうせあいつは戦えないんだし、私たちでいきましょ!」
と、勢い込み、とりあえずという話になったので殴り込んだのだが。
「これ、マジで死ぬんじゃないの!?」
九炎の絶叫である。
既に瀕死一歩手前のディアとメストを庇った結果九炎もボロボロ。そのエリアボス、巨大カマキリを見た途端メストが大絶叫したのでエリアボスがパニックに陥り、最初からフルパワーで挑んできた。
もう死ぬ、これマジで死ぬ、という彼らにとっては最後の一撃になるであろう攻撃を、メストにとっては見慣れた男の背中が見えたと思ったら、その攻撃をやすやすと斧が受け止めた。
「よぉ!大丈夫か、メスト!」
ヒロカゲである。まぁ油断しやすい彼のことであるから右から飛んできたその斬撃に大慌てし、斧を落とした。
「やっべ!」
その斬撃を炎で防いだのが九炎。
見れば、ミラのカンテラから出る新緑の色をした蝶が癒しの鱗粉を振りまいていた。
九炎を見て興味が出たのが椿。
椿についていく夜烏は若干面倒くさげである。
九炎に対抗するかのように炎でエリアボスそのものを大きく包み込む。
苦しがるエリアボスの振り下ろした鎌がディアを直撃するかと思った時それを片手で、しかも素手で受け止めた夜烏は、そのまま、鎌をへし折った。
ボキリ、と。
その結果緑の汁が吹き出し、
「うわっ、汚っ!?」
と夜烏とメストが逃げ惑い始めるという大混乱の中ネステトラが苦笑いしながらザクリとロベリアを刺すと、黒いツタがするするとエリアボスの体を這い上がり、薄紫や青や濃い紫の花を咲かせる。
悪意を持つ花たちがエリアボスの命を吸い取ると、花たちは散り、花吹雪となってあたりに散った。
「・・・これ強いですかね?」
完全に回復した三人に問うネステトラ。
「そりゃそうだろ・・・」
「じゃあ・・・『いただきまーす』」
グチャ、ゴキッ、グチッ
「いやああああああ!」
食事中
「メストー大丈夫かー?」
「う・・・なんてもの食べてるのよ・・・」
「主食がこれなもので・・・」
口を押さえるメストに苦笑するネステトラ一行。
「慣れたものよね。」
「ほんとな。今ので捕食二回目だけど一回で慣れたよな。」
というミラとヒロカゲの会話により気持ち悪くなるメスト。
「じゃあこれでエリアは開放されたと思います。生き残りは体育館に集めていますので後はよろしく、『勇者様』。」
そう言って、屋上から次々に飛び降りる五人に、
「私の友達何人か人間じゃなくなっちゃった・・・」
嘆くメストであった。
九炎は猫乃さんのとこの九炎です。
リア友のため二人で話をしました。
猫乃さんの雪火桜もよろしくお願いします。