合流とフロアクリア
ピッ、と音がしてチャットが切れる。
「どうじゃ?主人の仲間たちは。」
「なかなかにおもしろい方々でした。さて、ヒロカゲたちを探さねばならないのですが・・・電話してみますか。」
周囲の警戒を先ほどのように2人に任せ、電話帳を開き、ヒロカゲの電話番号をタッチする。
『おう、ヒロカゲだ。』
「テトラです。今どちらに?」
『それがよ、二階にいるんだけど・・・』
ヒロカゲが言葉を濁した。
「けど?」
『モンスターがめちゃめちゃ湧いてきちまって、俺の武器が折れちまったんだよな。その辺で拾ったやつなんだけど。今は伍番・・・ミラの蝶で防いでんだけどさ。』
「よし今すぐ行きますから耐えといてくださいね」
『は!?』
電話を切るやいなやネステトラが走り出した。目指すは二階。
主人のいきなりの行動に慌てもせず2人は足音も立てず走る。
あっという間に二階の廊下に着き、溢れかえるモンスターを『悪意 ロベリア』によって問答無用で切り捨てながらネステトラが走り、その後ろでは2人が倒しそびれたモンスターを確実に倒していく。敵の影がもう少しになってきたところで、水色の髪のゴスロリ姿の少女の姿が見えた。彼女の持つランプから黄金色の蝶が生み出されてはモンスターを遠ざけている。
「さあもうちょっとです!行きますよ!」
「主人は人使いが荒いのう・・・」
「ぷっ、ババァw」
「お主あとで覚えておくがいい。」
後ろで漫才を繰り広げる2人を気にしつつ、物凄い速さの斬撃でモンスターを切り捨てたネステトラは、ランプを持つ少女とともに、モンスターがまた湧いてくる前に理科室に転がり込んだ。
「いやー助かったぜー・・・」
ネステトラに助けられただけでなく、ヒロカゲは椿から黒と紫の大きな斧を、ミラというヒロカゲの彼女には夜烏から妖しく紫に光るランプが渡された。
「にしてもテトラその呪詛どうしたんだ?」
「これですか?いやなんか契約やらいろいろあって」
と、テトラ自身よくわかっていないので、椿からの説明を受けたミラの言葉は、
「それロベリアが把握する必要は?」
だった。それに対するネステトラの言葉は、
「ないですね。」
「お嬢様即答でしたね。一応ありますよ。」
「じゃあ別にいいんじゃね?ていうかお前らの話でいくと呪詛の場所が違うぞ。」
ネステトラが鏡を渡され、それを見る。
「呪詛の位置が違いませんか?気づきませんでしたが片方の目は呪詛が目の下で止まっているのに片方は目を越えてますし。目を越えているところは白目が黒くなってますし、体の呪詛は相変わらずですけど。」
「ロベリアがお嬢様の情報を把握し終えて落ち着いたんでしょうね。あ、お嬢様の目の力は味方には及びませんので。」
「了解。」
それぞれに情報の交換をし、とりあえずはこのエリアの二階のフロアのボスモンスターを倒そうという話になった。そこで、従者2人からネステトラに助言があった。
「主人は倒したものの強さそのものを食事とする生き物になっておる。今まで通り人間の食物を食しても腹が満たされぬであろう?」
「ですので、髪の中にいる蛇を出しておいて、蛇で食べるんです。お嬢様本体が食べても大丈夫です。なので、ボスモンスターや強いモンスターはここまで引き摺ってきて、お食事としたほうがよろしいかと。」
「わかりました。引き摺ってきましょう。私たちで行ってくるので2人は拠点を守っておいてくださいね。」
2人に念押しし、ネステトラがヒロカゲとミラを連れて廊下に出れば、モンスターが湧いていた。
「この奥にボスモンスターがいるはずです。」
「援護は頼むぜ、ミラ!」
「任せて。」
ミラがランプを左右に軽く振ると、ランプから金の蝶と紫の蝶が大量に生み出され、廊下に毒の鱗粉を撒き散らす。こちらも味方に効果はないようだ。
「おおおおりゃああああ!」
気合いとともに、ヒロカゲが斧を振り回す。ネステトラは、モンスターを足場にし、蹴った瞬間に斬るというスゴ技をこなしつつもヒロカゲの通る道を開く。
大して強いモンスターもおらず、ボスモンスターもヒロカゲの斧一発で撃沈し、チート武器の威力を思い知った2人に、
「私も最初びっくりしましたよ・・・ロベリアは一度切ったら勝てちゃいますしね。」
と言いつつ、何気なく窓から高等部の方を見て・・・ふっ、と笑った。
「どうかしたのか?」
「別になにも?」
「嘘。笑ってたもの。」
「ふっふふ。さ、帰りましょうよ。」
「気になるだろー!」
「はぁ・・・」
何度目になるかわからないメストのため息を聞いて、ディアは眉をひそめた。
「やっぱりダメか?」
「繋がんない・・・ブロックされちゃったかなぁ・・・」
先程よりも深くため息を吐くメストの肩を叩いて、
「まぁ元気にやってるだろ。高等部の方はだいたいクリアしたしな。初等部にも行ってみようぜ。」
「うん・・・」
今のところ他のメンバーは別行動だ。
メストにああは言ったものの、やはりディアも心配はしていた。最初に会った時のネステトラは、メストにすらまだ警戒心を抱いているようで、安易には近寄らせてくれはしなく、目に拒絶がくっきりと浮かび上がっていた。それを少しずつほぐしていって、やっとのことで仲良くなれたというときにこの事態だ。
ネステトラを妹のように思っていたところもあったのかもしれない。
ネステトラがいるかもしれないと思い、そんなはずもないな、と自嘲しながら窓から初等部を見て、黒髪の少女、ネステトラとバッチリと目があったディアは、しばらく硬直していた。向こうもそうだったようだが、ふっと微笑んで仲間であろう少女と少年と共に姿を消した。
「メスト!」
「え、なに!?」
「テトラを見つけた、向こうの二階だ!」
「わ、わかった!みんなにも連絡するね!」
メストが仲間たちに連絡を終えたのを確認し、ディアは走り出した。




