チャット
「こんにちは。お久しぶりです。」
『無事でなによりだ。』
向こうからディアの声が聞こえる。ディアはメストの友達で、年上である。
頼り甲斐のある兄貴分で、近所のヤンキーなんてノミぐらいと噂されるくらい(本当の噂である)喧嘩が強く、その力を誰かを守るためにしか使わないところから靴箱を開けた途端に山のように出てくるラブレターがいつものことになりつつあるらしい。
『んで、わざわざ俺ら全員に聞こえるようにして何の用だ?』
「知ってます?その窓が電気を放って開かないのはなぜか。エリアボスをクリアしなければいけないんですよ。」
『・・・なんでテトラが知ってるの?』
メストの不安げな声が聞こえる。
「メスト、あなたは頭がいいです。わかってるでしょ?まぁこう言えばさすがにわかりますよね。私は、あなたたちに電話をかけることが出来る。こうしてかけられるのではなく、ですよ。そして、私は攻略ヒントを全て持っている。さぁ、これはどういうことでしょう?」
『お前が、導き役兼敵役とかいう奴ってことか・・・』
「その通り。そのスマホの手帳型ケースは最初の門を開くカギになるでしょう。それによって自分の象徴がなんなのか、しっかり知っておいてくださいね。私はしばらくここの皆さんの安全でも保ってから出ますけどねー。」
受話器から耳を離し、ネステトラが夜烏に話しかける。
「なんか超楽しいです。」
「悪役がぴったりなんですね、お嬢様は。」
と、再び電話に意識を戻す。
『私たちもまだここに居るから、ちょっと会わない?』
「やめときます。仲間に怒られそうなので。」
『仲間がいるってことは少なくとも一人じゃないってことか。導き役兼・・・ああいちいち言うのが面倒くさいな、お前はこの世界がなんなのか知ってんのか』
「ゲームですよ。ただの命を賭けた。」
その後もスルスルと会話を続けるネステトラ。
よくもそこまでスラスラとはぐらかしが出来るものだと呆れ始めた二人が飽きてきた頃、メストが言った。
『あー!もう!テトラに口で勝てるはずないのよ!それにもう10分でしょ。また今度ね!』
ぷちっと音がして電話が切れる。
「よくもあそこまでスラスラと・・・」
「あ、これ電話メストの電話非通知にしときましょうかね。」
「地味にしっかり手は打っとくのですね。」
そして、チャットの時間がやってきた。
『ピロン』
チャットの応答ボタンを押す。どうやら押したのはネステトラが最後のようだった。
『こんちはー!』
『君が零番?かわいいねー!』
『お前は黙れそもそも顔も見えないのにナンパをやめろクズ』
『酷い!』
『零番ってテトラかよ!?声ですぐわかった!無事でまあよかったぜ!』
「ヒロカゲも居たんですね。メストは主人公側でしたよ。」
『あ、マジで?』
『ヒロカゲ・・・この子は。』
『おー、俺の友達。ちなみにこっち彼女な。』
『うっせえよリア充共』
『まぁまぁナオくん』
「これで全員ですか。陸番まであるんですね。」
『なんでも名前知らなくても良いように番号振られてんだと。なんで大字なのかは知らねえけど。ちなみに俺は壱番な!弐番とは一緒にいるぜ!ちなみにかわいい子は大歓げ(ゴスっ)』
鈍い音と共に弐番の女性が口を開く。壱番は男性のようだ。
『黙れクズ。・・・連れが失礼した。私は弐番だ。先程の会話からすると零番以外はみな二人一緒にいるようだな。参番と陸番は近くにいるようだし零番は合流を頼む。』
「わかりました。丁度喋ったので言っておきますね。零番です。あと皆さんは種族変わりましたか?私メドゥーサと人間のハーフになったんですけど」
『『『『『『いやないけど』』』』』』
「あ、私一人だけなんですね・・・」
『参番だ。零番は近くにいるらしいから陸番と零番探してるとこだ。ちなみに番号はそれぞれの能力にちなんでるらしいぜ。俺だったら・・・まぁこれは後でいいな。』
『肆番です!ええと、皆さん言っちゃったので特に言うことないですけどよろしくお願いします!』
『伍番。上に同じくだけどまぁリア充ども爆発しろや』
「どういう原理なんですか」
『陸番。参番と一緒にいる。番号が大字なのは、多分能力のせい。私は小さな陸なら作れるし、参番はどこにでも出てこれる、つまり参上できる。ということじゃないかと思う。』
長い会話がひと段落つき、様々な情報を交わす。
『つまり零番を含めてそっちにはチート級が3人ってとこか。』
伍番が言う。
『ならみんなで集まるなら零番のもとに集まった方がいい。その近くの空港は?』
「〇〇空港です。ていうかそもそも飛行機動いてるんですか?・・・メールが来ました、ドラゴンでも調教しろだそうです。」
疲れ気味に言うネステトラ。それにまたもや弐番が応じる。
『了解、ドラゴンとか飛ぶものをなんとかできたら向かう。まぁ、』
「『『『『『『このエリアをクリアしたらねー』』』』』』」
だよねー、という空気が流れる。
『じゃあ、通信切るぜ。』
壱番が言う。
『あ、それと導き役兼敵役は面倒くさいので導敵で!略してますけど!あとリーダーさんは零番さんみたいなのでよろしくです!』
元気な肆番の声につられて返事を仕掛けて気づいた。
「え、なんですかそれ初耳なんですけど。」
『一番最後のやつが強制的にリーダーになっちまうんだと。』
『ちなみに言語が違うのに話ができているのはゲームだから、らしい。』
ヒロカゲと陸番の説明に納得したネステトラが「了解」と返事を返し、チャットは終わった。