表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

西原 結衣

 あたしは去年から朝日のことが好きになっていた。

 自分でも最低だと思っていた。大好きな友だちの、美穂の好きな人なのに……。

 美穂は3年前から朝日のことが好きだった。一番にあたしに教えてくれて、あたしが相談に乗ったりした。でも、美穂の話を聞いているうちに、いつの間にか朝日のこと好きになってたんだ。

 こんな気持ち、美穂に知られたらきっと美穂、あたしに譲ろうとしちゃう。

 美穂はすっごく優しい子だから、絶対そうするに決まってる。

 だから、あたしが我慢しなきゃ。せっかく美穂が強くなれたっていうのに、ここであたしが全部を水の泡にするわけにはいかない。

 でも、やっぱりあたし朝日のことが好きなんだ。


 でも、でも……諦めなきゃ。


「美穂、それでどうするの? 今年のバレンタイン。もう、3回もチャンス逃してるじゃん。前だって、結局断念しちゃったんだから。ね、今年こそは頑張ろうよ」

 あたしは平静を装って美穂に声をかける。

 去年も一昨年も、美穂はチョコを渡そうと用意はしていたけれど、いざ本人を呼び出そうとするとやっぱり気が引けちゃって、断念していた。

 でも、今年の美穂はなんとなく何処か違う気がした。絶対いける気がした。

 だから、ここであたしが打ち明けるわけには行かない。

 そこで、昨日のラジオで聞いた男子のうれしい告白の仕方を教えてあげた。

「ねえ、あたし昨日ラジオ聞いてたんだけどね、好きな人がよく見るところ、例えばかばんの中とか机の上とかに、メッセージを書くんだよ。筆箱、とかロッカー、とか。でね、そこにもまたA組のカーテンとか書いてどんどんメモを貼っていくんだよ。で、それを好きなやつに探させるの。どきどきしない?」

 美穂は「へえ……」と言っていたけど、多分この反応ならやってくれると思う。

「ね、やろうよ」

 もう一押しする。これであたし、やっと諦められる。

「……やる」

 あたしはその一言で、泣きそうになっていた。


 あたしはやり方を美穂に細かく教えて打ち合わせをした。メモなどは事前に書いておいて、後は貼るだけにしておいた。

 6時間目は体育館で全校集会だから、鍵係の美穂とあたしが残って朝日の机に最初のメモをおいたら、全校集会のために体育館に移動。

 さよなら、朝日。


 放課後、あたしは朝日のあとをつけてちゃんと順番どおりにやっているかを確認する係になった。

 ロッカー、靴箱、理科室、被服室、2年B組、3年D組、そしてゴールの1年B組……。

 おいかけているうちにつらくなっていた。


 ゴールの1年B組にまではいけなかった。美穂が告白しているところを聞けるような心境じゃなかったから。

 きっと、その場にいたらあたし、泣いちゃうから。


 3年D組で朝日が探しているとき、あたし、朝日と目が合ってしまった。

 やばっと思ったけど、遅かった。平静を装って「えっ、朝日、なにやってんの」と驚いたふりをする。

 あのとき、本気で泣きそうで、必死な朝日を見ているのがつらくてその場を離れてしまった。そこからはもう、朝日の後を追いかける気にはなれなかった。だって次はもうゴールだったんだもん。


 朝日と美穂は付き合った。

 あたしはつらかったけど、美穂の長年の恋が実ってよかったって言う気持ちももちろんあった。その気持ちが100%だったわけじゃなかったけれど、美穂のことを応援していたのは本当だから。

 もうちょっとしたら、本当は朝日のこと好きだったってこと、美穂に言ってみようかな。

 どんな反応するのかな……あれ。

 あたし、やだ、泣いてるの?

 涙が止まらなかった。でも、だめだよ。泣いたってどうにもならない。

 あたしは中庭に行って大きな空を見上げた。ちっぽけなあたし。


 今日、あたしにとってつらかったけど強くなれた日になった。

結衣ちゃんちょっとかわいそう。

最後まで見てくださってありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ