朝日 雄太
俺はもともとそういうキャラじゃなかった。
みんなが恋バナとかしててもあんまり興味がなかったし、遠くから聞いてるだけだった。
特に気になる人なんていなかったし、別にそういうことに何にも関心はなかった。
6時間目が終わって、終礼のとき。体育館から帰ってくると〔放課後になったら1人で自分のロッカーを見てください。タイムリミットは4時半です。〕と書かれたメモが机の上にのっているのに気づいた。
ロッカー……? 何でロッカー? ま、どうでもいいか。一人で、放課後に……か。
面倒だけど、すっぽかすわけにもいかないよな。俺はやろうと決めた。
放課後になると早速ロッカーを探し始めた。あった。さっきと同じメモだ。
〔靴箱〕そう書かれていた。自分の靴箱にいけばいいのか? なんか宝探しみたいだな。
いつの間にか俺は楽しんでいた。
靴箱には思ったとおりメモが入っていた。そこには〔第2理科室の黒板〕と書かれていた。
第2理科室の黒板……3階かよ!! またあがんねーといけねーじゃん。
俺は少々疲れながら3階に向かった。黒板には〔被服室の16番ミシン〕と書かれていた。
被服室は2階だ。ダイエットでもさせるつもりかよ……。
なんとか被服室につくと、16番ミシンを探し始めた。どこだ、16番ミシン……。
ひとつひとつ確かめていく。6つ目くらいに16番ミシンを発見し、貼り付けられているメモを見る。
〔2年B組の窓〕
また3階……殺す気か!! はあはあ言いながら2年B組に入ってカーテンを手当たり次第にめくると、メモが貼ってあった。
〔3年D組の出席番号1番の人の左となりの人の机の中〕
め、めんどくせー!! なんだよこれ、誰のいたずらだよ!
どうせいっちゃんとかそこらへんの男子がふざけてるんだろ。どっかで見てるんじゃ、と振り向くと同じクラスの西原がいた。
「に、西原……?」
「えっ、朝日、なにやってんの」
バカにされているような気がして「なんでもねー」と返事をした。すると西原は「そう」と言って何処かにいってしまった。なんなんだよあいつ。
なんとかメモを見つけ出すとそこには〔1年B組のカーテン〕とかかれていた。結局ふりだしかよ。
「はあ、はあ」
息を切らしながら教室のドアを開ける。4時28分。ぎりぎりセーフか……?
っていうか、これでまだあったらオワタだぞ……。
カーテンを開ける、とそこには山内がいた。山内? え、山内?
なんで、山内が? もしかしてこのメモ全部山内がやった?
「あの、私」
山内は恥ずかしそうに俺にチョコを差し出しながら「3年前から、ずっと好きでした。その、付き合ってくれませんか」と言ってきた。
俺はチョコを受け取りながら「うん」と言った。自分でもなにがうんなのかわからなかったけど。
「俺、でよければ、その、よろしく」
ぎこちなくそう言う。
「うん……うん」
山内は泣きそうになっていた。
今日、俺の中で一番幸せな日になった。