第七章 先読み
伸也と直樹が教室の後ろでヒソヒソと話している
「未来は補助教員なんで、この一年で辞めさせられるかもしれないんだって」直樹が小声で話した
「そうなんだ」伸也には特に興味がない様子で、素っ気なく受け流した
「そういえば木村さんが伸也と同じ大学に行きたがってたぜ」
「え」
「数学の先生志望らしいよ」
「それなら、何で物理を選考しなかったんだろう?みんなに合わせたな!あいつらしい」
柴田にテレパシーを送らなければ
直接言うのは照れるし
「ご結婚おめでとうございます、いつまでもお幸せに」
その日の柴田の授業は優しかった
伸也は数学はいつも90点代で得意だった、しかし涼子はその上をいっていた
英語は?
伸也の不得意科目だ、大体60点~良くて70点、偏差値が気になるところだ
「先生、大学は物理学科を選考します」担任の林田に伸也が申し出た
「伊藤は物理が好きか?好きな物はしょうがない、頑張りなさい」
林田にしてはすんなり受け入れてくれた
「英語は何処にいくにしても必要だぞ」と忠告もされた
「今日はラザフォードの散乱か!」
X線解析には必要な知識だ
未来はいつも以上に気合が入った
ラザフォード散乱は別名クーロン散乱とも言われる
1911年に荷電粒子同士が衝突するとき、クーロン力によって散乱されることが発見されたのだ
ラザフォードの後方散乱というのが有名な話である
伸也は超能力先読みでこのことを知っていた
先読みをすると夢にその事が出てくる、いわゆる予知夢的なものだ
先読みは伸也は滅多にしない、何故なら次の日一日中頭が痛くなるからである
「今日は最悪の日だな」伸也が不機嫌な顔で登校してきた
先読みの影響で頭痛がしていた
「ラザフォードだろ、そんなの知ってるよ」ぶつぶつ呟く伸也であった