第一章 未来現る
ある所に一人の技術者がいました。
そんなに背格好、体格は良い方ではなく。この人がエンジニアなのか?という位、ぱっとしない感じの人物です。顔はどう見ても普通のその辺にいる男性です。
しかしテレパシーを使う、その辺だけは人と違う才能でした。
名前は未来俊彦
未来は35歳の独身、働いていた電気屋をやめ就活なるものをしていました。
そして「ふっ。この不況の中、仕事なんてあるのか?」と一人呟いた。
未来は物理の教員免許を持ち、先生志望でした。
未来がこの勝山高校に就職してきたのは去年の春でした。
「ma=F、これしかありません。物理の授業でしか、皆さんとは会えませんが。気軽に話しかけてください。宜しくお願いします」
最初の一年は補助教員という事で雇われました。
物理といえば殆んどが男子生徒ばかりで、女子生徒はあまり見かけません。
二年生は六クラスありその中から物理選択者は五十人、二クラスを受け持つ事になりました。
物理Aクラスと物理Bクラスだ。
今日は二年の物理選択者、物理Aクラスの授業です。
「先ずは出席を執ります、有馬」「はい」「次、伊藤」「はい」「次、梅本」「はい」・・・
「え~まず物理とは何か?読んで字の如く物の理念です。物、つまり物体ですね。その運動の理屈を述べる。それが物理です」
「先生は読心術が出来るので、心で物理について呟いて欲しい」
「え~それから今日は、まずは先生に自己紹介文を書いて欲しい、一人一ページで宜しくな」
クラスは静かになった。
「学級委員長を一人決めたい、誰か立候補者はいるか?」
「はい、先生。伊藤君がいいと思います」
「伊藤か、いいか?伊藤」
「え、僕でいいのなら」
「じゃあ、伊藤伸也にこのクラスの学級委員長になってもらう」
未来は授業を終え職員室へと戻った。そして、自己紹介文を一人一人見ることにした。
「伊藤伸也か」
これが未来と伸也の戦いの始まりでした。
どこからか未来へテレパシーが飛んできた。「先生、物理ってそんなに面白いの?」
聞き取りにくい小さな声、未来は耳を澄ませた。「本当に僕でいいの?知らないよ、この先何があっても先生の責任だからね」
未来は考えた。「授業さえ進めばそれでいい」