1-5 結果
さてさて、入試の結果発表へと行きます。
今日も元気に頑張りたい……
しかし、それはハヤトとユキに任せて寝ます。
俺がユキを雇い、表面的に主従関係が成立してから、ユキは毎日のようにはしゃぎまわり、一人でも何度か出かけるようになった。
その度に、ユキは何かしらの〝お土産〟を持って帰ってきた。
ある時は、燕尾服、ある時は、メイド服、またある時は、スクール水着。
すべて、特定条件下でのみ着ることの許される特殊な服だった。
ユキは、それら全てに袖を通し見せびらかす。ちょっとしたショーだった。
そのつど、〝ご奉仕〟と称して俺をからかいに来るのはご愛嬌。
大抵は俺も耐えたが、唯一。
スクール水着はだめだった……。
なぜだ、なぜやわらかい。
あの胸。
最近のパッドはあんなにもやわらかいのか……?
股間にもあのモッコリとしたふくらみは無い。
どうやって隠したのか……。
諸説あれど、それら全てただの想像に過ぎない。
真実を確かめるため、ユキを問い質した。
そして、からかわれた。
「え、マジ?ボク様にそんなに興奮したの?ホントにお嫁さんに欲しいの?」
なんて、最後には俺は***だと言われた。
ユキの毒舌ぶりは恐ろしい。
俺をからかい、思う存分なじった上でなお、謎は謎のままだ。
そんな日々を過ごし、気がつけばもう、入試から一ヶ月。
今日は入試の結果発表だ。
一時間も前だというのにもう会場には多くの人が集まっている。
ちなみに、俺は一番乗りだった。
何となく早めに来たらそうなってしまった。
まぁ、俺は合格だろうから心配も何も無いが。
「何をニヤニヤ笑っているの?気持ち悪いよ?それよりも、男に興奮しちゃう***は死ねばいいのに!!」
今日はユキがついて来ている。
アレから、ユキの毒舌っぷりは半端無い。
時折、泣きたくなってくる。
それでもまだ、俺たちの主従関係?は崩れていない。
傍から見れば俺は相当な変態に見えるだろう。
女に執事の格好をさせ、なじられている。
……………。
「ああ、そうだな」
……本当だ。
ユキの言うとおりだ。こんな生き恥晒すくらいならいっそ…
「えぇ……そんなに落ち込まないでよ!背中がゾクゾクきちゃうだろ!!ボク様だってまだ新世界への扉は開きたくないんだ!!!」
「そっちか!?心配じゃなかったのか!」
「心配に決まってるじゃないか!ボク様の結婚初夜、嫁が変態になるかならないかの瀬戸際なんだぞ!!」
「お前は、交際相手もいないだろう!」
「いいもん、いざとなったらハヤトをお嫁にしてあげるから」
「俺は、男だ!!」
それ以前にユキのほうが、女っぽいだろう――――
と、これは禁句だ。
「それ以前に俺にはソッチの気はない!!」
「ソッチってどっち?」
「どっちも無い!!!」
どっちって、二つもあるのか?
「そっかぁ、まぁどうでもいいや。そんなこと…」
早くも飽きてきたらしい。
こっちはどっと疲れたが……。
「ところで、もう発表されるみたいだよ?」
前方の掲示板に目をやると、数人の教師の手によって結果が張り出された。
「俺の番号は……」
1110082だ。
0080……0081……0083……
あれ?
もう一度……
0080……0081……0083……
俺の受験番号が間違っているのか?
おかしい。
そんなはずは無い…。
絶対に…。
足元から崩れる落ちた。頭がぼぅっとしてくる。
遠くから、俺を呼ぶ声が聞こえたような気もするが反応ができない。
突然、衝撃が俺の頭を襲い、視界が暗転した――――。