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レ・シエル!  作者: 安眠丸
第1章 入学
4/8

1-3 約束

まだ、入学式を迎えない学園モノ……

あれ?学園モノじゃなくね?

と現在、疑問に思われている方も多いと思います。

むしろ、僕自身が強く思っています……


でも、安心してください。

あと、数話で入試試験の結果発表がある(予定)ので。



 ため息を一つつく。

 俺には昨夜から眠れない理由があった。

 同居人、ユキの事だ。

 昨日の電話以降、一切の足取りがつかめない。

 「おかしい」

 ユキは、本来この部屋から出ることすら嫌がるのだ。

 近頃は俺と一緒に出かけることも多かったが、まだ一人で出かけられるとは考えにくい。

 「ということは、誰かに誘拐でもされたか………いや」

 一人、首を振り否定する。

 あいつは小柄で見た目は女だが、強いことは確かだ。

 それにユキを攫ったなら、部屋はめちゃくちゃなはずだ。

 その形跡は無い。

 後、残る理由は……

 「ユキめ、逃げたか」

 それだけ、金を返したくないらしい。

 これは、珍しい傾向だった。

 〝借りたものは、なにが何でも返す〟

 これは、俺とユキがこの部屋で共同生活を営む際に作ったルールの一つだ。

 ちなみに、ユキのルールブックは部屋の隅でほこりを被っている……。

 俺がコレを作ってやったときは案外喜んでいたのだが……。

 まぁ、いい。もうすぐ、この共同生活も終わるのだ。

 (ワズ)かに、(サミ)しさが(ツノ)る。

 ユキの奴を雇うという話、受けてやろうか……。

 玄関口が勢いよく開かれた音がした。

 「た~だいま~!!!ねぼすけハヤトはもう起きてるかなぁ?起きてないよねぇ~!そうだ、ダイブだぁ!ハヤトのベットにダイブしよう!」

 ユキが帰ってきたようだ。

 少し、俺は安堵感(アンドカン)を覚える 。

 「お帰り。遅かったじゃないか。ルール違反じゃないか?門限は10時だぞ?」

 「うわ、起きてる!起きてるよ!ハヤトが起きてるとか!もう奇跡だね!てか、起きなくていい奇跡だったね!何で起きてるのさ?むしろ、寝てろよ。今寝ろ。すぐ寝ろ。目の下、ヤバイよ?徹夜明け?もう寝るしかないね!さぁ寝よう!」

 いつも以上のハイテンションでベットに誘導してくる。

 確かに、昨日は寝ていない。さらに、安堵感からか眠気を強く感じている。だが――――

 「寝てすぐたたき起こされることが分かっているのに、なぜ寝なければならん?」

 ―――――今、ユキの前で寝るのは危険すぎる。

 それ以前に、なぜか憤りを感じている。こんな状態で眠るつもりは無い。

 「うわ、怒ってる?怒ってるよね?怒ってるんだぁ?可愛い!!もっと、もっと怒って!もっと叱ってよ!」

 今日のユキは、人の話すら聞かない。

 何かいいことがあったのか、異常なほどに上機嫌だ。

 それ以上に、ユキの言動が危険だ。

 ちょっと、距離を置こうか………

 「怒らん、叱らん、寝ないからちょっと落ち着け……頭に響く……」

 「うわ、傷つくなぁ!後退しながらそんなコト言わないでよ!つまんないジャン!!!つうか、酔っ払いかよ!!!二十歳未満の飲酒は法律で禁止されてるのだぜ?」

 傷つく素振りを見せるが、顔は笑ったままだ。

 俺との気温差も激しい。

 「……どうした、今日はずいぶんとご機嫌じゃないか」

 「ううぇあ、ハ、ハヤトがギャグ言うなんて可笑(オカ)しくなっちゃった。……アハハハハハハッアハハハッゲホッアハッゲホッゲホッ」

 ……………俺、ギャグなんて言ったか?

 ユキが、腹を抱えて笑い転げている姿が無駄に腹立たしい。

 意味が分からない分、余計にだ。

 「あぁ~可笑しかった。」

 一通り笑い転げた後、ユキは腹を抑えながら立ち上がった。

 「ところで、昨日の約束。覚えてる?」

 「昨日?」

 ……約束なんてした覚えが無い。

 いや、記憶にはあるかもしれないが眠気でぼやけている。

 「もう忘れたの?」

 むすっとした顔でユキはにじり寄ってくる。

 とてつもない恐ろしさを感じる。

 ユキの口の端が上がった。

 「お金返したら、ボク様のお嫁さんになってくれるって言ったじゃないか!!!」

 突然、ユキは怒った口調でとんでもないことを言い放つ。

 だが、思い返してみるとそんな約束をしていた気もしないでもない………

 ……………………ちょっと待て。

 過去の俺、そんな約束を本当にしてしまったのか?

 いかん、眠気で頭が回らん。

 何か、違うことを約束したような気もするが…

 「そうだったか?すまん、思い出せん」

 こうなったら、卑怯かもしれないが緊急回避だ。

 「しょうがないなぁ……。ボク様だって、記憶に無い約束を果たさせるほど、鬼畜じゃないよ」

 妙に、穏やかな声が頭に響く。

 眠気を誘うかのような声だ。

 いかん、このままでは……寝てしまう。

 カフェインを早急に摂取しなければ………

 「あ、ありがとうな、それより立って話すのは疲れないか?そろそろ、どこかの部屋で休もう」

 今、俺らは玄関口から数歩しか動いていない。

 キッチンに向かういい口実だ。

 あとは、キッチンに誘導するだけだ。

 「そうんだね、じゃぁ一番近いボク様の部屋でどうかな?」

 ユキがとんでもないことを言い出す。

 「い、いや。キッチンでいいんじゃないか?ほら、ユキの部屋に俺が入るのはルール違反だろ?」

 「いいじゃないか、ボク様だってルール違反したから〝おあいこ〟だよ!!それに、男同士だろ?そんな、意識すんなよ!!!」

 やばい、もう目を開けているのもつらい……

 「ほら、もう眠そうじゃないか。昨日は徹夜だったんだろ?ボク様のベット貸してあげるからゆっくり眠りなよ。」

 もうだめ……だ……。

 「…………………ユ………………キ……………」

 「お休み、ハヤト……」

 俺は意識を投げ出し、ユキに身を任せた。

 




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