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どのくらい走っただろうか。私の手を引いていた人物は立ち止まり、私の手を放した。
足ががくがくと震える。私は思わず地面に膝をついた。そんな私に構うことなく、その人は辺りを見回し始めた。ずっと反対側を向いてるから、顔は見えない。
多少息が落ち着いてきて、そこでやっとこの人に助けられたんだという事実を思い出す。お礼を言わなければ。そんな当たり前なことをやっと考え始めた。
「あ、あの、ありがとうございました・・・」
その人はようやくこっちを向いた。身長は180cmくらい。黒色のぼさぼさの髪の毛は肩の辺りまで伸びていて、さらに前髪が目の下まであるため顔はよく見えない。
「別に」
予想以上に素っ気ないセリフに戸惑う。
思わず口を閉じてしまったが、そうしているわけにもいかない。この状況が何なのか。それを知らないことにはどうすることもできない。
「あ・・・此処は何処ですか?私、起きたら此処に居て、何が何だか・・・」
その人は私を一瞥して、また視線を木々の中へと戻した。
「・・・高本」