ひかりの交差点
このお話は、私が幼い頃疑問に思った『朝日はのぼる。夕日は沈む…じゃあ、その朝日どこへ行ったの?夕日は、どこから登るの?』とお母さんに聞いていた幼い頃疑問に思ったことをテーマに、Aiに文章化を手伝ってもらいながら一緒につくった共同制作の作品です。
私自身がゴビの調整や行間の演出など、こころを込めて編集しています。
幼い疑問への物語楽しんでいただけたら嬉しいです
物語:『ひかりの交差点』
「ねぇ、お母さん。朝日さんは本当はどこへ行くの? 夕日さんはどこから来るの?」
幼い私が窓の外を指さしながら訊ねると、母はいつも、秘密の宝箱を開けるような特別な笑顔を見せてくれた。
「実はね、世界の真ん中には、誰も知らない大きな『ひかりの交差点』があるのよ」
母のお話によると、こうだった。
朝日は、毎朝私たちの町をピカピカに照らしたあと、お昼を過ぎると少しずつ旅に出る。
向かうのは、世界の反対側にある
「朝日の国」。
そこは、いつも生まれたての眩しい光に満ちていて、朝日はそこで明日また昇るための「元気」をたっぷり蓄えるのだという。
「じゃあ、夕日さんは?」
「夕日さんはね、遠い遠い『夕日の国』からやってくるの。
そこは、一日中ずっとオレンジ色の、優しくて静かな国。夕日さんは、長い旅をして私たちの町に届く頃には、すっかり眠くなっているの。だから、空をオレンジ色に染めながら『みんなもおやすみ』って、夜のカーテンを引いてくれるのよ」
「じゃあ、二人は途中で会わないの?」
「それがね、夕方の『ひかりの交差点』で、一瞬だけすれ違うのよ。朝日は『今日もお疲れさま』って夕日にバトンを渡して、夕日は『明日もよろしくね』ってハイタッチするの。そのとき、二人の光が混ざり合って、空が一番綺麗な紫色になるのよ」
私はそのお話が大好きで、夕焼け空が紫に変わる瞬間を見るたびに、
「あ、いま交差点でハイタッチしたんだ!」と胸を躍らせていた。
――それから、大人になった私は、いつの間にか空を見上げることを忘れていた。仕事に追われ、数字と時間に追われ、世界のすべてが「科学」と「現実」だけで割り切れると知ってしまったからだ。朝日はただ地球が回っているから昇る。
そこにファンタジーなんてない。そう思っていた。ある日の夕暮れ。大きな失敗をして、心も体もボロボロになった帰り道。ふと、駅のホームから見上げた空が、息をのむほど鮮やかなグラデーションに染まっていた。
燃えるようなオレンジ色と、深い夜の青。その二つが混ざり合う、美しい紫色。
「…あ、ひかりの交差点だ」
ぽつりと、忘れていた言葉が口からこぼれた。
その瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
科学がどうであれ、私の心の中には、あのとき母が教えてくれた優しい世界がちゃんと残っていたのだ。
傷ついた私を包み込むように、夕日さんが「今日もお疲れさま」と語りかけてくれている気がした。
そして、見えない世界の向こうでは、朝日さんが明日私を照らすために、一生懸命元気を蓄えている。
私は涙を拭った。
明日になれば、また朝日の国から、新しい光が私のもとへ走ってきてくれる。
「ただいま」とハイタッチをするために、私も前を向いて歩こう。
紫色の空の下、私は小さく息を吸い込み、温かい気持ちで家路を急いだ。(おわり)




