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価値観の違い

作者: 桜 潮風
掲載日:2026/05/26

「ありがとうございます。商品は3日以内にお届けいたします」

 守田もりた澄子すみこは、派遣社員として、通販会社のコールセンターで働くようになって、もうすぐ6カ月が過ぎようとしていた。

 マスクをしたまま、対応しないといけないので、どう声を張っていいのか分からないときがある。相手から声が小さいという時もあれば、大きいと言われることもある。それに、すごくのどがカラカラに渇いてしょうがない。

 ペットボトルの水をがぶ飲みしながら、10件ほどの対応をすると、時刻は12時半を過ぎたところだった。ちょうど、休憩時間に入って、同僚の大広おおひろ聡美さとみと、2階にある食堂に行くことになった。

「食堂、人多いかな?」と聡美が言う。

「たぶん、少ないじゃない。正社員がリモートで仕事している人もいるらしいし」

「ああ、家で働けるっていいよね」

 正社員の待遇を羨ましいそうに、聡美と嘆いている。 ここ最近、食堂に行くたびに、働いている人が減っているように感じていた。隣で少し離れて歩く聡美を見ると、マスクを二重につけて、両手には透明の手袋をしている。そんなに感染したくないのかと思わされる。ただ、免疫力が低下して、感染リスクが高そうにも思えてしまう。

 食堂に着いて、少し中の様子は伺うと、やはり空席が目立っていた。いつ誰も対面で会話ができないように、アクリル板に囲まれている。対面ではできないが、隣同士に座って、話している人はチラホラいた。

 聡美はメニューを悩んでいたので、燈子は先に会計を済ませて座席を確保することにした。

「席を探しておきますね、ゆっくり選んでください」

 テーブル席に着いてしばらくすると、聡美はお待たせと対面に座った。

周りを見渡すと、あまり人がいないことに少し不満そうに、「いいよね、正社員は」と聡美はまた嘆いている。

「ワクチンって打ちましたか?」話を逸らすように、燈子は何気に聞いてみた。

「私は打たないわよ」

「打たないんですか?」

「なんか、海外で違法って言われてるし」

「そうなんですか‥‥」

 うまく言葉が出てこない。感染することに、必要以上に対策しているのに、ワクチンを打たないとは、どこか矛盾に感じる。

 ウイルスに対する考えは人それぞれだけど、どこか聡美は自分のことしか考えいないように感じて、少しがっかりした。

「打つ人が死んだって聞いたことあるし」

「まあ、副作用とかありますしね。」

 10歳年上45歳になる聡美の言葉は考えが浅いというか、やっぱり不快さを感じてしまう。これ以上は、この話題を話さないほうがいいのかもしれない。政府や医療関係者が一生懸命対策しても、こうやって苦情を言う人はいることを存在するのだろう。ただ、職場の人に言われるとやるせなくなる。ここは職場だ。分かち合いなど必要ないのだ。友達ではない。澄子は自分に言い聞かせて、相手の考えを否定しないように、でも肯定しないように話をするだけだった。


 


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