フィクションと言う事にしておこう
今朝、ふいに頭に浮かんで……
平日なのに、色んな物を投げうっちゃって、必死になって書きました。
頭の中にBARのカウンターを思い浮かべて欲しい。
そこで、あなたは私の隣に座っている。
あなたはどんな人?
うん、私にとってはどんな人でもいいんだけど……
未成年者だと私に“教育的指導”が入っちゃうからさ!
ここでは成人で居てよ。
ちょっと微妙な話になるかもだしさ。
まあ、キャプションにはR15付けとくつもりだけど
忘れるかもだからねえ~
じゃあ、私はどんな人かって?
そうだね……会社ではウザがられながらのさばって居る“必要悪”的なアラフォーのお局様って感じ。
名前は……
どうしよっかなあ……
うん!
作品から借りて来よう!
その方があなたもイメージしやすいでしょ?!
私の名前は『華』で……これからお話するお姉さまの名前は『ミスディオさん』って事でヨロッ!
あと、酔って来るとぶっちゃけるかもだからさ! 『あなた』じゃなく『キミ』でいいかな?
ん、じゃまあ、始めるね!
今は体を悪くしてしまったから……こうして横にチェイサーを置いて、玉氷の上に注がれた“ジェムソン”くんをチビリチビリの飲るのが関の山なんだけど……全盛期の私は女だてらに(女だからという説もあるが)家にジャックダニエルの3ℓボトル(今は絶滅してしまった様だけど)を隠し持っている酒豪だったんだよね。
こんな飲み助に付き合ってくれる輩はそうは居ないので(笑)……
私はその日の気分に合わせた酒場(地酒処だったり居酒屋だったりバールだったりショットバーだったり様々……スナックとかホストクラブにゃ行かんけどね)で専ら独り飲みしていた。
そうは言っても地酒処やBARには常連さんが居るわけで……
今日のお話の主人公は深夜のBARの常連さんだったお姉さまの話さ。
◇◇◇◇◇◇
その日は金曜日で……明日は休みだから、1件目の地酒処で美味しい地酒と四季のおつまみ(あんまり憶えていないけど……ああ! 生ホタルイカのお刺身があったな! これ絶品だった!)そして〆に海鮮丼をいただいて味覚とお腹は大満足だったんだけど……会社の年度末のトラブルをもろに被った私だったから……ウサウサした心はどうにも晴れきれずに居て、その足はフラフラとBARへ向かったのさ。
ドアを開けるとJohn Coltraneの『 "My Favorite Things" 』が薄く流れていて……その“いかにも”って選曲がちょっと鬱陶しくて、やっぱ止めとこうかなと思ったんだけど……店の奥に“ミスディオさん”を見つけて、ここで飲む事にしたんだよね。
向こうも私に気付いてギムレット?のグラスをちょっと上げてくれたし……
ミスディオさんが自分の右側のバーチェアに置いてあるカバンをわざわざ左側のバーチェアの上に置き直したので、必然的に私はカノジョの右側へ座る事となり、私はタバコの箱をカウンターの上に置きながらバーテンの佐藤ちゃんに「“ジェムソン”くんをツーフィンガーロック(あ、別にギター奏法じゃないよ)で」とオーダーを入れた。
佐藤ちゃんがかなり歪な玉氷に“ジェムソン”くんを注ぎ入れている間に私がタバコを咥えるとミスディオさんがヴィヴィアンのハートシェイブライターでシュパン! と火を点けてくれた。
何度かミスディオさんと席を隣にする様になって……これがいつしか二人の儀式になっていたけど……ミスディオさんはそれなりのお金を出さなきゃ『時間限定』の恋人になってはくれない妖艶な美女だったから……考えてみてば、私はロハで随分といい目に合っていたわけだ。
「今日は何軒目?」
「ん、2軒目。ミスディオさんは?」
「私も2軒目だよ」
「珍しいねえ~金曜が休みなんて! “旗日”って事じゃないよね?」
「仕事はさっきまでしてたよ。仕事終わってお腹空いたし喉も乾いたから、そこの牛丼屋で生ビール片手に生玉つゆだく牛丼を掻っ込んでた」
この妖艶な御姿でビールに牛丼なんて……さぞかし隣に座ってた人(恐らくはくたびれたリーマン(笑))は度肝を抜かれたのだろう。 ミスディオさんはそんなオーラの持ち主だから……
「でもさあ! それって余計に喉、乾かない?」
「だからジョッキにしたよ。あそこの牛丼屋、ジョッキあるから」
そういう問題でも無いのだが……私は指にタバコを挟んだまま“ジェムソン”くんのグラスに口を付けた。「そうなんだ。私も今度、行ってみようかな」
「アハハ! 行こう! この店に来る前の同伴でさ!」
「え~! ミスディオさんの同伴料っていくらよ?」
「なに言ってんのよ! もし同伴料払うんなら、私が華ちゃんにだよ」
「そりゃ、光栄だ! “トップ嬢”のミスディオさんから同伴料をいただけるなんて……ワタシャどこぞのホストかね?」
「そうねえ~ 私はオトコには貢ぐ気は無いけど……華ちゃんみたいな可愛いコには貢いでもいいかな」
私は口に含んだ“ジェムソン”くんを吹き出しそうになった。
ああ、危ない危ない!
勿体ないから飲み込んじまおう!
「アラフォーのお局さんのどこが可愛いのよ?」
「そうねえ~」なんて言いながらミスディオさんはじーっと私を見つめる。
めっちゃ! 照れる!
「やっぱ、全部!」
「それって答えになってない」
「なってるよ」って言いながらミスディオさんは妖艶な笑みを浮かべるので私は早々に白旗を上げた。
「分かった! 降参! じゃあさ! 私、今日はちょっとやさぐれてるから……なんかお話、聞かせてよ。前にしてくれたみたいにさ」
「前に?……ああ、『今度は寝物語にしてあげる』って言った時のね! 今からウチ来る?」
「いやいや、そんな図々しい事は言えないよ~ なんかゴメンね。ミスディオさん、色々引き出しがありそうだからさ」
「なんだ! 来ないの? ガッカリだなあ~」
なんて言いながらミスディオさんはスイッとギムレットを飲み干し、佐藤ちゃんにウィンクして自分のタバコに火を点けた。
ああ、優雅な所作に目を奪われてしまう。
佐藤ちゃんは新しいギムレットのグラスをミスディオさんの前に置くと、カウンターの反対側へ移動し背中を向けた。 どうやら下手な玉氷を作るつもりらしい。
それを目の端で確認してからミスディオさんはフーッと煙を吐いた。
「今まで誰にも話した事は無かったんだけどさ……」
こうしてミスディオさんの話は始まった。
◇◇◇◇◇◇
「私、物心ついた頃からずっと施設でさ」
「そうだったんだ」
「あ、でもね、小3の時に引き取られたの。ちゃんと養子縁組して」
「そう……」
「今でも苗字はその時のままなんだけどね」
「じゃあ、ご両親……養父養母はご健在なの?」
「それは知らない。と言うのはね! 私、この苗字を極力名乗りたくないのよ。別に変な名前じゃなく、ごくありふれた姓なのだけど……」
「えっ?! どういう事?」
「ああ、ゴメン! 話が前後したね。ワタシ、“彼ら”とは縁を切ったんだ! だからこの苗字は名乗りたくない。変えたいけど……変えるには結婚とかしなきゃだし……そういう事もあるのかなあ……今の仕事を選んだのは……」
なんだか……聞いて良いのか分からない話なので、私が躊躇っているとミスディオさんの方が私の手の甲に自分の手のひらを重ねて来た。
「話していいかな?」
「うん」と返事をするとミスディオさんは頷いて話を続ける。
「ウチの母親……義母ね! とにかくすぐ手が出る人でさ! それはもう! よく叩かれた」
「……そうなんだ」
「そんな時、いつも優しく庇ってくれたのが義父だったから……私は義父の事が大好きだったのだけど……」
ミスディオさんは一瞬、目を閉じて、何かを耐えている様だった。
それからギムレットにキスして話を続けた。
「ある日、義父と義母が喧嘩を始めてね。 それがあんまり酷かったから……私、止めに入ったの。 もう中学生だったし、それなりに体も大きかったから、義父の背中から抱き付いて義母に手を上げようとするのを止めたの。そしたら私の方が義父から殴る蹴るの暴力を受けたの」
私は息を飲んだ。けれどもその後の話がもっと凄惨だったので、私は口が効けなくなった……
「何日か経って、私が学校から帰って来た時に、義父が謝って来たの。で、怪我したところを見せてくれって言うの。私、恥ずかしかったけれど、義父が涙ながらに謝るから躊躇いながら制服を脱いだら、義父はワアワア泣きながら私を抱き締めたの。でも……
そのうち、義父の下半身が反応して来て……私も耳年増だったから、その意味が分かってギョッ! として身を引いたら……」
ミスディオさんはもう一度タバコの煙を吐いた。
「オレを避けるのか!! 育てた恩を忘れやがって!!」って暴力を振るわれただけでなく犯された。
それが私の初めてで……半ば呆然と義父にヤられていると義母が帰って来て、これを見られてしまったの。そしたら義父が『コイツに誘惑された』って……」
私は言葉を発する事ができず、ただ、ミスディオさんの手の甲にもう片方の手を乗せて、自らの手の震えをどうにか抑え込んだ。
「……警察沙汰になって私は児童相談所経由で施設へ逆戻り、そして彼らとはそれっきりになってしまったんだけどさ……」
「私もバカだったんだよね。そこで仲良くなったヤツに僅かなカネで手懐けられてさぁ~ ウリを始めちゃったんだよね。もう、ホント自分でも呆れるくらい酷い有様だった。」
「……そうなんだ……」
「今だって、そうは変わりはないんだけど……それでも分かった事はあるんだ」
「……何が……分かったの?」
「うん! 実は義母はさ、私の事を一所懸命に育てていたんじゃないかなって……義母が私の事を叩いていたのは、義父に対して示しが付く様にする為で、そうする事で私を守っていたんだろうなって……あの時、義父が私に対して暴力を振るったのは義母に対しての攻撃で……その私が義父を誘惑したって聞いて、義母は半狂乱になってしまったんだと思う。だから私は……義母には二度と会わない! 合わせる顔が無い」
ミスディオさんの目から涙が一筋流れていた。
私が拭おうとすると笑って……自分の小指でそれを弾いた。
「こうやって続けている今の仕事……私は嫌ではないんだ。で、時々柄にもなく思ってしまう『こんな私だけど……少しはオトコ達にぬくもりを届けてあげられてるのかな』って」
そう言ってほほ笑むミスディオさんを……
私、夢中で抱き締めてしまった。
ミスディオさんはそんな私の背中をポンポンと叩いて、そっと身を離した。
「アハッ! こんなお話って素敵じゃない?」
ギムレットのグラス越しにおどけて見せるミスディオさんの……たった今まで抱き締めていた胸を……私は今も忘れる事ができない。
それはとても柔らかく温かだったから。
THE END
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