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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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96.アリアンの真実②

 セタの話した歴史は大体こうだ。


 300年以上も前、この世界、エラルダの人間は、魔物の繁栄により滅亡の危機に瀕していた。

 

 神様はそれを食い止めようと、特別な力を7人の人間に与えた。


 一人一人、別の能力だ。


 火を操る力。

 水を操る力。

 風を操る力。

 大地を操る力。

 闇を操る力。

 あらゆる力を抑える力。

 高い身体能力を持ち、人間を守護する力。


 この7人によって、魔物は抑えられ、エラルダの人間は救われた。


 しかし、特に強い力を与えられた、火、水、風、大地、闇の5人は、力に溺れ、互いに争い出してしまった。


 激しい戦争になり、残ったのは、人間を守護する力を持った者とわずか100人の人間だけだった。


 


 ロイはセタの話を聞きながら、アレンから聞いた話と大体同じでホッとしていた。


「この能力は、7人の中でも弱い能力ということか」


 ロイの言い方に、セタは微笑む。


「攻撃系の能力ではないよね。主に、大勢の人を荷台に乗せて、逃げたり、あらゆる力を抑える力の人を守ったりだったと聞いている」


 ロイも笑う。


「地味だなぁ。あ、でも、あらゆる力を抑える人って、つまり聖女だよね?」


 セイラが、以前、そんな事を言っていた。


「そうだね。俺たちの先祖は、その聖女を守りきれなかった。そこから、この能力の守る力の意味が少しずつ変わってしまった…と推測される」


「推測…?」


 ロイが首を傾げると、セタはまた少し首を動かした。


「人間全員を守る力だったのが、徐々に、大切な人を守る力に変わっていった。そして最終的には家族から、ただ1人愛する者だけへと」


 ふんふんと、ロイは頷く。


「いつしか力はより特化して、愛した人と深く繋がる能力になった。これにより、離れていても、愛した人を守れるようになったんだ」


「なるほど! 理解したよ!」


 ロイの表情が明るいのを見て、セタは目を伏せた。


「能力の進化は、良い事ばかりじゃないんだよ。この能力は、愛する人を守れなかった時に、罰則を課したんだ。いや、むしろ、罰則を課すことによって、この能力が生まれたのかもしれない」


 セタはロイを真っ直ぐに見つめた。


「罰則は、深い絶望と死への渇望だ」


 ロイは息を呑んだ。


 ロイに、殺してくれ、と叫んだセタを思い出し、ロイの体がカタカタと震えた。


「これはもう、呪いと言ってもいい。俺は聖女を守れなかった訳じゃない。守り切って、元の世界に帰したんだ。それなのに、繋がりが切れた瞬間、深い絶望と死にたいという気持ちに襲われたんだ」


 ロイは自分の震える体を、両腕で押さえた。


「抗えなかった。しかも、厄介な事に、俺たちは自害できないくらい、傷の治りが早い。死ぬ方法は、自然死か、愛した人に殺してもらうかしかないんだ」


 ロイは微かに頷いた。

 アレンの言った通りだった。

 

 自害が出来ないほど傷の治りが早くて、愛した人から受けた傷だけ、治りが遅いのだ。


 確かにこれは呪いだ。

 

 なのに何故だろう。

 ミコトに殺される事は驚くほど怖くない。


「あの時は、ロイに酷い事を言ってしまった。本当に悪かった…」


 セタの言葉に、ロイは首を横に振った。


「セタ兄は悪くない。俺が何も知らなかったせいで、1人で悩ませたんだ…! ごめん。ごめん、セタ兄…!」


 セタはロイを見て「すぐ泣く…」と言った。

 ロイは慌てて涙を袖で拭う。


「あの状態から回復したのは、2年前なんだ。ロイに伝えなくてはと思ったんだけど、ちょっと、勇気が出なかった。母さんに、当たり障りのない手紙ばかり書かせてしまったよ」


 セタは微笑んだが、3年も絶望感を味わっていたということだ。


 ロイはその間、何も知らずに、北の大地で勤務していたのだ。


「俺、本当にダメすぎる…」


 ロイが頭を抱えると、セタは首を動かした。

 頷いたのだ。


「お互い様だな。似た者兄弟だ」


 そう言うと、セタは目線を部屋の本棚に向けた。


「あの本棚の一番上の深緑の背表紙の本に、アリアンの記録が載っているんだ。持って帰って読んで欲しい」


 ロイは本棚の深緑の背表紙の本を見た。

 立ち上がって、本棚の前に立つ。

 かなり分厚い本だ。


 取り出すと、その本の横にあった本や紙がバサバサと下に落ちた。


「うわっ、ああ、ごめん、セタ兄」


「相変わらず、雑だなぁ。いいよ、そのままで。雑に片付けられても困る」


 ロイはガックリと肩を落とした。


 それにしても、分厚い本だ。

 少し開けると、字がびっしり書いてある。


「これ、読むの? 俺、無理かも…」


 ロイは元々、字を読むのも書くのも苦手なのだ。

 セタは呆れた表情になった。


「本当に、ロイはロイだなぁ。一応、愛する人には見せてもいいことになっているよ。奥さんも本が苦手な人?」


 ロイの表情がパァッと明るくなった。


「いや、ミコトは得意かも! 騎士団の書類も殆どミコトがやってるから!」


 ミコトに読んでもらって、要約して話してもらおう、とロイが考えていると、セタは驚いた表情をしている。


「騎士団は、事務員を雇ってるのか?」


「え? あ、いや、ミコトは事務をやっているけど、ちゃんと養成所を出た団員なんだよ。女性だから、臨時団員扱いだけど…」


 ロイは先日覚えたばかりの臨時団員という言葉を出す。


 セタはますます、困惑した表情になった。


「女性が養成所を出た? そんなバカな…」


 ロイは笑った。


「セタ兄の気持ちも分かるよ。俺も驚いたから。でもミコトは強いんだよ。第1の騎士団のトップ3なんだ」


 ミコトの自慢話なら、いくらでもできる。

 セタの困惑をよそに、ロイはどんどん話す。


「今の聖女の護衛をやってるし、リントの次に強いから、養成所の訓練も講師でやってるんだ。予算案に中隊長職を取り入れて、実現させたし、あ、襲撃にあった時は、3人の男をあっという間にやっつけて、その3人は尋問中に、ミコトが怖いって泣いてたっていう…」

「待った! 分かった、そういう事か…」


 セタがロイのミコト話をストップさせる。

 ロイはどういう事? と思い、首を傾げた。


「女性を避けているから、もしやと思ったけど、そうか、ロイは、そういう趣味だったのか…」


 セタの頭の中には、ムキムキの男の様な、かろうじて女性か? が思い浮かんでいた。


 ロイは、ますます首を傾げる。


「一緒に来てるんだよ。今、リタさんと、話してる。セタ兄に紹介しようと思って…」


 セタはふーっと息を吐いた。


 弟の趣味をどうこう言うつもりはないし、ましてや、弟の選んだ女性を非難なんて絶対にしない。

 

 いや、むしろ、そんな男並みの女性なら、アリアンの男に最適である。

 ロイは本能で、その女性を選んだのかもしれない。


「ロイ、もしかして、その女性に会った時に、この人だ、と思ったか?」


 セタの言葉に、ロイは驚く。


「思った! すごい、セタ兄、よく分かったね」


「最初は、男と間違えたり…」


 ロイは再び驚く。


「さすがセタ兄! 俺、ミコトの事を5年間男だと思っていてさぁ…」


 セタは頷けないが、心の中で、大きく頷いた。

 しかし、5年は長い。

 どれだけ、外見が男なのか。


「ぜひ、会わせてくれ」


 セタは覚悟を決めたのだった。

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