表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/177

91.重要な打ち合わせ③

 第4国立宿泊所のリントとキダンの部屋で早朝から始まった打ち合わせも、終盤を迎えていた。


 命を狙われている事を怖がらなかったミコトは、ロイの膝から下ろされ、再びセイラの隣に座っていた。


 ミコトは、なるほどね、と思っていた。


 怖がると思って、膝に乗せてくれていたのだ。

 マリーの言う通り、「怖い、守って」が正解だった。


 それにしても、とミコトはロイを見た。

 

 これが、冴えてるロイなのか、と。


 いつもの10倍は話している。

 しかも、司会進行役だ。

 そして、さっさとミコトを膝から下ろす、的確な判断。


 この冴えてるロイも、間違いなくかっこいいけど、いつもの天然素直ロイの方が、ミコトは好きである。


「ミコト、聞いてる?」


 ロイの問いかけに、ミコトは姿勢を正した。


「はい! 聞いてます! つまり、ロイと私の仲が悪いと思われているので、いきなり命までは狙われないってことですよね」


 聞いてはいたが、いつものロイがいいなぁと考えていたところだったので、ミコトはつい敬語で答える。


「はい、そうですよ…」


 緊張感がない事が完全にバレているようで、ロイは溜息をついた。


「それでね、次にミコトを狙っているのは…」

「え!? まだいるの?」


 ミコトは驚いて、ロイの言葉を遮ってしまった。

 ロイは頷く。


「先日の襲撃、ですよね」


 リントが先を答える。


「それも、リオじゃなくて?」


 ミコトはリントの方を見る。

 リントはロイをチラリと見る。


「俺も、リオじゃないと見てる」


 ロイはリントに頷いて、答える。


「今、ミコトを攫う意味がないんだよ。俺を殺せる確信もないからね。それに、交流試合もあるし…」


 ミコトは交流試合と聞いて、目を泳がせた。


 第2に命を狙われていると知っていたら、ソマイと試合の約束なんてしなかったのだ。


 こうやって何も知らせずにいると、ミコトが面倒事を起こしてしまうので、リオの目的を教えてくれたのだろう。


 ロイは話を続ける。


「今回、ミコトを襲撃した男の自白によると、ミコトを攫った後、カラスに連れて行く算段になっていたんだ」


「それなら、あのお店は本当に闇組織のアジト? ってこと?」


 ミコトの言葉に、ロイとキダンは曖昧な表情をする。


 ロイは席を立って、ミコトの側に来ると、ミコトの髪をサラリと触る。


 な、何故、今、髪を触るの?


 ミコトの動揺にはお構いなしに、ロイは話し始めた。


「この首筋の手刀のアザ、どう見ても、手加減してるんだ」


 アザ?

 それを見せるために、髪の毛をよけただけ?


 マリーはミコトのアザを見て、表情を曇らせた。


「そうなの? 酷いと思ったのだけど…」


 ロイは「確かに痛々しいんだけど」と声を落とす。


「いくらミコトが丈夫でも、この位置に男性の本気の手刀をくらったら、無事ではいられない。気絶させようとしたのは本当だけど、酷い目に遭わせる気はなかったんだ」


 マリーは納得出来ないかのように、さらに表情を曇らせた。


「そんなお優しい襲撃犯が、躊躇なく自害するのはおかしいわ」


 確かに!

 さすがマリーである。

 ミコトはウンウンと頷く。


「確かに、自害は余程の忠誠か信念がなくちゃ出来ないよな。闇組織は口が堅いけど、秘密が漏れそうになると自害までするんですか?」


 リントはキダンにきいてるようだ。

 キダンはふーっと息を吐いた。


「闇組織が捕まる事自体あまりないんだよ。でも先日結婚式の日の襲撃で捕まえた奴らは、自害はしなかったね」


 ロイはミコトの髪から手を離して「まとめようか」と言った。


「結論から言うと、ミコトを狙っているのは、ミコトを初代聖女として扱いたい、所謂、聖女信仰の奴らだと思われる」


「えええっ!?」


 声を上げて驚いたのは、ミコトとマリーとリントだった。

 キダンはわかっていたのか、軽く頷いている。

 セイラは再びウトウトしているので、おそらく聞いていない。


「最初からその可能性に気づいていれば、尋問の仕方を変えたんだけどねー。あの犯人って第1に移送されちゃったんだよね?」


 キダンの問いかけに、リントはハッとしたように「はい。昨日…」と答える。


「アイツの尋問は、第1に帰ってからまたやるとして…」

「待って! 待ってロイ! 聖女信仰? なんて、ちょっといきなりぶっ飛んでない?」


 ミコトがロイの言葉を遮ると、ロイは「そうでもないんだよ」と言った。


 なんとマリーとリントまで頷いている。


 マリーは、「あのね」と話し始めた。


「エラルダ国全体は、基本、同一神を信仰しているのだけど、この神様は、大戦争のあった300年以上前から信仰されている神様なのよ」


 マリーの言葉に、ミコトは頷く。


 各国にある教会も、その神様に祈るためのものだ。


「でも、どんなに神様に祈っても、300年前の大戦争はたくさんの人々の命を奪ったわ。中には、神様のせいだと言う人もいたくらいにね…」


「うっ…」


 ミコトは思わず息を詰まらせる。

 それは、否定できない。

 神様もそこは後悔していた。


「それでね、実質、世界を救ったのは聖女だという人々がたくさんいるのよ。まあ、言うだけならいいのだけど、その考えを話すために集まって、聖女を崇めている集団が割とあるの」


 ミコトは頭を抱えた。

 

 それ、もう、立派な宗教だよ!


 真面目に活動している人には本当に申し訳ないのだけど、日本人のミコトは、新興宗教にあまり良いイメージがない。


 そもそも、聖女の力は、神様が与えているのに、聖女だけを崇めるなんて、訳が分からない。


「アイツらの信念って、なんかすごいよな…」

 リントもボソっと呟く。


「信念? 信念…自害?」


 ミコトが顔を青ざめて呟くと、ロイはミコトを再び抱き上げた。

 怖がっていると、抱っこしてくれるらしい。


「そういうことかな、と。第4は初代聖女とかなり縁深い。言葉や絵が残っている程にね。絵を見たキダンさんなら分かると思うんだけど、初代聖女の恋人が第4の人なんだろうね」


 キダンは頷いている。


 聖女って、帰らなくちゃいけないのに、結構、恋人つくってるな。

 初代からそうだとは…。


「第4の聖女信仰者から見たら、初代聖女にそっくりで黒髪のミコトは、もう、信仰対象になるだろうね」


「怖い! やだ!」


 ロイの言葉に、ミコトは叫ぶ。


「命を狙われていることより、そっちが怖いんだ…」


 リントが呆れて呟くと、マリーも苦笑している。


「でも、今まで、狙われなかったのが不思議だよねー。ミコトちゃんは、ずっと聖女の護衛であちこち行っていたんでしょ?」


 キダンの疑問に、リントは「ああ!」と言った。


「14歳くらいまでのミコトって、こんなんじゃなかったんですよ。パッと見、少年でした」


 マリーも頷いている。


「あー、なるほど。成長期、恐ろしいねぇ」


 キダンはミコトの胸をジッと見る。


「お父さん!」


 マリーに睨まれて、キダンはサッと目を逸らした。


「あの、じゃあ、闇組織って、聖女信仰の組織なの?」


 ロイに抱っこされたままのミコトが首を傾げると、ロイとキダンは、「うーん」とばかりに首を捻った。


「憶測で2つあるんだけど、1つは、始まりは、そうだったのかもしれない説だね。でも今は犯罪組織になってしまった、という感じかな」


 ロイの説明に、なるほど、とミコトは頷く。


 すると、キダンがハイハイと手を挙げる。


「僕は2つ目の説押しだなー。闇組織『黒鳥』と初代聖女信仰『カラス』は全く別組織説!」


 今度はリントがハイと手を挙げる。


 挙手して発言する決まりだったのだろうか。


「尋問した襲撃犯は、古代魔法にも関わりありましたよね。『カラス』は聖女信仰と古代魔法研究をやっているんですか?」


 ロイは、「これも憶測なんだけど」と言う。


「彼らの信仰する想像上の初代聖女は、古代魔法も使えてしまうくらいの特別な存在なんじゃないかな」


 セイラの様な特別な力があって、古代魔法も使う…ということか。


 確かに、セイラが古代魔法まで使ったら、凄すぎて信仰してしまうかもしれない。


「もしかしたら、内部で初代聖女信仰と古代魔法研究は別部門かもしれない。でも、キダンさんが持っている手紙は、初代聖女信仰からだと思う」


 ロイの手紙の話に、ミコトは、それもあった! と思い出した。


 地図と黒い鳥の絵だ。


「多分ねー。宛名が第1エラルダ国宛だし、ミコトちゃんの目に触れて、来てくれないかなーって感じの手紙だね」


 キダンはアハハと笑いながら言う。


「密告書ではなかったんですね」


 リントは溜息をついた。

 

 ロイは笑うと、ミコトをソファに下ろした。


「カラスのお店については、俺もセタ兄のところから帰ってきたら、ここに戻ってきて、もう少し調べてみるよ。キダンさんは、このまま残って調べるで良かったですか?」


 キダンは頷く。


「まだチェコさんを落としてないからね。ヤトラ君も気になるし」


 目的が違うような気もするが、ロイは特に何も言わず頷いた。


「じゃあ、俺とマリーと聖女は、10時頃、出発しますね。帰りは第2の街道を通ります」


 リントの言葉に、ロイは頷いた。


「帰り、気をつけて。騎士団の事、悪いけどよろしく」


 リントも頷く。


「あ、あの!」


 ミコトは思い切って手を挙げた。


「ロイは、その、これからずっと、こういう感じのロイなの?」


 リントとキダンは、その質問ヤバイ! とばかりに、ミコトを見た。

 マリーは、この方が話が早くて助かる、と思っていた。


「いや、これさ、結構疲れるんだよ。力をコントロールしながら、頭を回すっていうのが、慣れなくて…。出発が遅れて悪いんだけど、2時間くらい寝てから、セタ兄のところに行こうと思ってる。その後は、まあ、いつもの感じでいこうかな、と」


 ロイが少し照れながら言うと、キダンは「コントロール出来てるのなら早く言ってよ!」と叫んだ。


「いつ威圧されるかと、びくびくしてたよー」

「俺も…」


 リントまで溜息をついている。


「頭を回すと疲れるってところが、ロイらしいわね」


 マリーは妙に納得している。


 ミコトは、正直、やったぁ! と小躍りしそうになっていた。


 2時間寝るってことは、ロイの寝顔が見られるということだ。

 10日間に2〜3時間しか眠らないロイの寝顔を見るチャンスが、こんなにも早く訪れるとは!


 しかも、その後は、いつもの天然素直イケメンに戻るのだ。


「ミコト?」


 ロイは怪訝そうにミコトを覗き込む。

 ミコトはハッとなり、大慌てで頷いた。


「分かりました! もう、万事大丈夫ですっ!」


「なんで、三方面から狙われていて、万事大丈夫なんだよ? 危機感持ってくれよ…」


 リントはこれ見よがしに、ハァーと息を吐く。

 ロイもマリーもキダンも頷く。


「だ、大丈夫なの! 基本、全員返り討ちだから!」


 本当は違う意味の大丈夫だったが、言える訳もない。


ミコトの「全員返り討ち」発言に、ミコトとセイラ以外の全員が、深い溜息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ