表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/179

83.飲み屋の調査

「キダンさん、これは、普通の飲み屋じゃありません!」


 ロイは、地図の場所にある、「普通の飲み屋」に入るなり、キダンに掴みかかった。


「だってぇ、あの場では、とても言えないじゃん?」


 シャツの胸元を掴まれたキダンは、ロイから目を逸らす。


 100㎡くらいもある、広々とした店内は、カウンターもあるが、各々、パーテンションで区切られたテーブル席がある。


 席数も多いが、店員の女性も多い。

 女性店員は全員、露出の高い服を着ている。


 店の奥には、ドアがいくつかあり、おそらく、そういう事をする個室があると思われる。


「俺、帰ります…」


 こんな店に行ったことがミコトにバレたら、いろいろアウトである。


「待った! コレ、調査だからね!」


 キダンが引き止めると同時に、店の女の子たちが、わらわらと寄ってきた。


「お兄さんたち、初めてですかー?」

「わ! お兄さん、すごいイケメンさん! ぜひアタシと飲みましょうよ!」

「こちらは渋いお兄さんですね! お二人ご案内でーす!」


 ロイの顔は青ざめ、キダンはニッコリ笑った。


「いやー、みんな可愛いね! 美味しいお酒が飲めそうだなぁ!」


 キダンは慣れているらしい。

 さっさと案内されている。


「ご気分が悪いですかぁ?」


 胸が大きく開いた服を着た20歳くらいの女性がロイの腕に手を回してくる。


 ロイは腕をスルッと抜いて、「大丈夫です」と答え、キダンの後を追った。





 案内された席に、ロイとキダンは座り、隣に2人ずつ女性が座る。


 女性が同席していて、調査ができる訳がない。


「あの、2人で話があるので、店員の方は、とりあえず、外してもらえますか?」


 ロイが言うと、女性たちは、残念そうに席を立った。


「後で絶対呼んで下さいねー」


 キダンは「もちろん!」と言って、女性たちに手を振っている。


 女性がいなくなると、ロイは、ハァーと溜息をついた。


「ロイくーん、ちょっと遊んでも、バチは当たらないよ?」


 ロイは首を横に振る。


「ロイ君って、浮気公認でしょ? ミコトちゃんも国家特別人物の妻教育を受けてるんだから、何にも言わないと思うよー?」


 ロイはテーブルをバンと叩く。


「そういう事じゃないんです。妻教育を受けているからこそ、なんですよ?」


 お酒を運んできた女性が、ただ事ではない雰囲気に、お酒をテーブルに置くと、さっさと出て行く。

 

 キダンはお酒を一口飲んで、「どゆこと?」と言う。


「ミコトは素直だから、あの教育を真に受けてるんです。しかも、我慢する性格で恐ろしいまでの判断力と行動力なんですよ? 俺が他の女性となんてなったら…」

 ロイは頭を抱える。


 キダンは「なったら?」と首を傾げる。


「潔く、俺の前からいなくなります!」

「あー、そういう事、ね」


 ロイは頭を抱えたまま、唸った。


「ミコトがいなくなったら、俺、生きていけないんですよ!」


「で、でもロイ君は、居場所分かるでしょ? 追いかければいいだけじゃないの?」


 ロイは顔を上げて、キダンを見た。


「甘いですよ、キダンさん。この間、追いかけて腕を捕まえたら、アッサリ外されたんですよ? ミコトはどんな技を持っているか、見当がつかないんですよ!」


「え、ええー!?」


「そのうち、俺の察知能力からも、逃れるんじゃないかと…」


 ロイの表情がさらに青ざめている。


「わ、分かった、分かったよー! もう遊べって言わないから、調査しよ? ね?」


 キダンはロイの背中をさすった。


 何だかもう、面倒くさい。


「えーと、とりあえず、店員から話を聞く事と、ここ、2階があるんだけど、2階は店舗じゃないんだ。だから、2階の調査…」

「俺、2階に忍びこみます。キダンさんは店員の方で」


 キダンは「即決かぁ!」と言う。


「まあいいよ。このお店、若い子が多いから、あんまり気乗りしないんだけど…」


 キダンはそう言うと、席から身を乗り出して、女性を呼ぶ。


 先程、ロイに腕を絡めてきた女性が笑顔でやってくる。


「ごめんねー、君もすっごく可愛いんだけど、僕、年上が好きなんだよ。このお店で、1番年上の女性を呼んで欲しいなぁ」


 女性は「はぁい」と言うと、チラリとロイを見る。


 ロイは気分が悪いフリをして、目を逸らす。


 女性は諦めたように、去っていく。


「ロイ君、モテるのに…」


 キダンは残念そうに呟く。


 ロイは「モテてないんですよ」と言う。


「俺、無駄に勘が良くて、女性の打算的なのすぐ分かってダメなんです」


 キダンは首を傾げる。


「勘がいいのは知ってるよ。女性にも働くんだ? ミコトちゃんとよくすれ違ってるから、女性には働かないのかと思ってた」


「何故か、ミコトには、働かないんです…」


 ロイは顔を覆って、うなだれた。


 キダンは、本当に面倒くさい、と溜息をつく。

 

 すると、先程の女性に連れられ、50歳くらいの細身の女性がやってきた。


 キダンとロイは目を見張った。


 女性の髪の色が、黒いのである。


「う、わ、超好み…」


 キダンの声がうわずっている。


 それもそのはず、女性は、黒髪のショートヘア、切れ長の濃いグレーの瞳、白い肌、露出の少ない黒のタイトワンピースに黒のヒール、唯一、アクセサリーに白の真珠のネックレスという、とにかく、品がある、美人だからだ。


「こちらのお客様? 1番年上の女性をご所望なのは」


 女性は存外低い声で言う。


 キダンは、ピシッと起立する。


「コランっていいます。あなたのお名前は?」


 コランの名前を名乗った! とロイは驚く。


「私はチェコよ。本当は、もう裏方なの。あなたより年上って、私しかいなくて…」


 キダンはニッコリ笑う。


「僕は今日あなたに会うために生まれてきたのだと気づきましたよ」


 何言ってるんだ、この人は! とロイは再び驚く。


 チェコはふふっと笑うと、ロイを見た。


「こちらのお兄さんは?」

「このお兄さんは、体調が悪いから、もう帰るそうです! ね?」


 ロイが答える前に、キダンが答える。


 確かに、2階の調査は、外から行くつもりだったが、これは、邪魔だから帰れということかもしれない。


 黒髪が気になるが、後はキダンに任せた方がいいだろう。


「すみません、飲める体調ではなかったようで、帰りますね」


 ロイは2人に会釈すると、席を立った。


 チェコを連れてきた女性が隣を歩き、出口まで送ってくれたが、社交辞令的なものだった。


 やはり、一銭も落とさない客なんて、何の価値もないのだろう。


 ロイは帰るフリをして少し歩き、物陰に隠れて気配を消した。


 第2の諜報をしていた時に、気配遮断はよく使ったなとロイは思っていた。





 「普通の飲み屋」改め、「女性と楽しめる飲み屋カラス」の2階に潜入して、ロイは、しまった、と思っていた。


 2階の広さが、どう見ても1階より狭いのだ。

しかし、どう調べても、壁があるばかりで、これ以上の部屋が見当たらない。


 どうやら、1階からしか行けない部屋があるようだ。


 そして、ロイが調べた2階の他の部屋は、従業員用の仮眠スペースや、食事スペースといった、何でもない部屋だった。


 1階の店舗は、店員やお客で人が溢れている。


 もう一度お客のフリをするのも、体調不良で帰った経緯を考えると、不自然だ。

 そもそも、お客で行くのは、もう避けたい。


 仕方ない。

 今夜は諦めて、キダンの情報を待とう。


 ロイは外に出て、先程の物陰に入って、ふう、と息を吐いた。


 キダン、は待たなくてもいいだろう。

 あのチェコという女性に入れ込みすぎなければいいが…。


 ロイは無性にミコトに会いたくなり、国立宿泊所まで、小走りで帰った。






 キダンは、さすがにこれ以上は飲めない、とグラスを置いた。


「チェコさん、めちゃくちゃお酒強いねー」


 顔色の全く変わらないチェコは、うふふと微笑む。


「コランさんも、お強いですよ?」


「いやいや…、これ以上は、醜態を晒しちゃうなぁ」


 キダンは、テーブルに片肘をつき、頬杖をついて、チェコを見つめる。


「綺麗な黒髪だね…。僕、黒髪の女性って初めてかも…」


 チェコは「そう?」と言いながら、お酒のボトルの口を閉める。


「私の父が黒髪だったから、遺伝かしらね」


「そうなんだねぇ…」


 だとしたら、黒髪の女性は、もっと多いはずである。

 でも、これ以上の髪色の話題は不自然だ。


 キダンはお店を見回した。


「いいお店だね。女の子たちに、無理をさせていない」


 チェコもお店を見回す。


「女の子たちは、私たちの大事な娘なの」


 私たち、か。

 キダンは目を伏せる。


「明日、チェコさんはいる? 別の男の子誘うから、また来てもいい?」


 チェコはニッコリと笑う。


「ぜひ、いらしてくださいな。お待ちしていますね」


 これは、完璧な営業スマイルである。


 キダンは少し残念に思いつつ、席を立った。

 チェコも席を立ち、キダンの腕に手を回す。


「本当に、いらして下さいね」


 これは、完璧な営業だろうか?

 騙されてみたくなる。


「本当に、明日も来ますね…」


 キダンは、義理や調査を横にやり、本気で答えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ