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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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82.会食後の打ち合わせ

 会食後、調査から帰ってきたキダンを含めて、国立宿泊所のリントとキダンの部屋で、全員で打ち合わせをすることになった。


 が、打ち合わせの前に、案の定、ロイはリントに注意を受けていた。


「ロイさん、公式の場で、イチャイチャはやめて下さいよ!」


「食べさせていただけで、イチャイチャはしていない」


 ロイの中では、アレは、業務に入るようだ。


 リントは頭を抱えると、ミコトを睨んだ。


「ミコトも! 左手で食べればいいよね? 何、流されてるんだよ!」


 リントは、ロイに言っても無駄だと理解したようだ。


「左手で食べた事ないよ!」


 ミコトが反論すると、リントは腰に携帯しているナイフを鞘ごとミコトの左手に乗せた。


「左手でナイフは使えるよな?」


「うん! 剣もナイフも、左手でも使えるよ! 二刀流に憧れて練習したから!」


 ミコトはナイフを鞘ごと振り回して、ハッとなった。


「左手でも、食べられる!?」

「この、バカップルがっ!」


 リントに一喝されて、ミコトはしゅんとなった。

 ロイはそんなミコトの頭を撫でる。


 いや、ロイのせいだからね。


「リント君、多分大丈夫だよー」


 キダンは苦笑しながら、リントに言う。


「ユーリさんや、その知人に聞いたんだけど、第1の国家特別人物夫妻の不仲説、かなり広まってるんだよ。急な結婚だったし、歳の差があるし、結婚式は遅れて始まるし、披露宴には新婦いないし、でね。その上、ミコトちゃんを放っておいた事実と、往来でのケンカがあるしね」


 これだけの証拠があると、確かに不仲としか思えない。


「だから、今日の食べさせる行為も、普通の、真っ当な人なら、絶対にやらないでしょ? かなり演技っぽく見えたと思うよー」


 キダンの、普通の真っ当な人なら絶対にやらない行為という言葉に、ロイは「えっ?」と言い、リントとマリーとセイラは、確かに、と頷いた。


 ミコトだけは、あれ? と首を傾げる。


「私たち、世間的には、不仲と思われていた方がいいの?」


 カーサとのお茶会の時に、確かにそう振る舞ったけど、第4でもそれが必要なのだろうか。


「ミコトちゃん、女の嫉妬ってね、怖いんだよー」


 キダンはミコトを見て、ニヤリとする。


「ロイ君は、どの国でも大人気なイケメン国家特別人物なんだよ!」


 確かに! とミコトは頷く。


「そんなロイ君が、田舎の女の子に夢中なんて知れたら、ミコトちゃん、嫌がらせにあっちゃうよ! 不仲だったら、みんな、あーやっぱりねって感じで放置してくれるからさ」


 ミコトは、その通りだ、と大きく頷いた。


 日本にいた頃も、セイラと仲が良いってだけで、ミコトは嫌がらせを受けたのだ。


「分かりました! 私たち、仲悪いです!」


 ミコトは自分の胸を叩いてキッパリ宣言した。


「えー、悪いまで言わなくても…。複雑なんだけど…」


 ロイは言いながら、溜息をついているが、その方針に反対ではないようだ。


「ま、まあこの話は、もういいです。キダンさんはどうだったんですか?」


 リントはロイとミコトから目を逸らし、キダンを見た。


「地図の場所に行ってみたんだけど、表向きは普通の飲み屋だったよ」


 キダンは地図を広げながら言う。


「だから、今晩、ロイ君と飲みに行こうかと思ってね」


 ロイはキダンの誘いに頷いた。


「リント、悪いけど、こっちの事は頼むね」

「了解です」


 リントもロイに向かって頷く。

 ロイはミコトに向き直った。


「ミコト、何かあったら、絶対に俺を呼んで。必ず行くから、無茶はしないで」


 ミコトは、ロイの青い目を見て、頷いた。


「ロイも、無理はしないでね」


 ロイも、ミコトの目を見て、頷く。


「じゃ、早速行こうか!」


 ロイとキダンは、準備もそこそこに、2人で部屋を出て行った。





 部屋に、ミコトとセイラとマリーとリントの4人になったところで、無言だったマリーが口を開いた。


「ミコトとセイラは、私たちの部屋に帰って、遊んでいていいわよ?」


 マリーの言葉に、ミコトとセイラは、ハッと表情を変えた。


「う、うん! セイラ、行こう!」

「分かった! 存分にやっていいよ!」


 ミコトはセイラに「やってとか言わないの!」と小声で言うと、セイラの手を引っ張って出て行った。


 マリーは2人の足音が隣の部屋に入る音を聞いてから、鍵を閉める。


「マ、マリー…?」


 マリーはリントを見て、ニッコリ笑った。


「リントもお父さんも、下手すぎて全部分かっちゃったじゃないの。ちゃあんと説明してもらおうと思ってね?」


 リントは、ガックリと肩を落とした。


「あ、そっちか…」


 マリーはリントの目をじぃっと見る。


「ちゃんと話してくれたら、そっちじゃない方も考えるわ」


「いいの? そんな事言ったら、本気にするよ?」


 リントも見つめ返す。

 マリーはふふっと笑った。


「もう、教えてくれる気なのね」


「まあ、さっきは、しまったって思ったからね。ミコトが鈍感で良かったよ」


 2人はソファに隣り合って座った。


「あれは、鈍感というか、自分は好かれなくて当然という自信よね…」


 マリーの言葉に、リントも頷く。


「ミコトは、そういうところあるな。ソマイの件にしてもだし、ロイさんに溺愛されているって何故か思っていない」


 マリーは頷いて、目を伏せた。


「でも、ロイさんに溺愛されているからこそ、命を狙われてしまうんだ…」






 マリーはリントの話を聞き終わり、吐き捨てるように言った。


「正々堂々と、ロイを狙いなさいよ!」


 マリーの言いように、リントは笑う。


「ロイさんを、やれる気はしないな…」


 マリーは、「だとしても」と言う。


「か弱い女の子を標的にするって、人として最低よ!」


「か弱い…?」


 リントは、ミコトが団員を打ち倒す姿を何度も見ているので、首を傾げる。


 マリーはリントを睨む。


「いや、まあ、そういう訳だから、ロイさんが溺愛しているとバレない方がいいし、でも古代魔法の件もあるから、離婚は出来ないしで…」


「ミコトを守りつつ、調査を進めるのね」


 マリーの言葉にリントは頷く。


「ロイも、やっぱり、血に縛られているのね…」


 マリーの遠くを見つめる瞳に、リントは胸がざわついた。


「セタさんが、縛られていた、から?」


 マリーは遠くを見たまま、「そうね」と呟いた。


 リントは、マリーがセタの嫁候補として、前聖女の侍女になったことを思い出した。

 おそらく父親の影響で、男性不信と言ってもいいほどのマリーは、セタの嫁候補に喜んでなったのだろうか。


 リントがうつむくと、それに気付いたのか、マリーは、リントの肩にもたれた。


「私ね、セタさんに憧れていたの」


「……うん」


 セタには、敵わない。

 リントが出会った中で、1番強くて、1番綺麗な騎士だった。


 ロイも強くて見た目が良いが、天然で素直な性格のせいか、親しみが強く、雲の上のセタとは違っている。


「でも、私の気持ちは、恋じゃなかった」


 リントが少し顔を上げると、マリーと目が合った。


「セタさんが泣き崩れて、ロイに殺してくれって言った時、私、怖いって思ったの」


 マリーの目に涙が浮かぶ。


「助けたいじゃなくて、怖くて、あの場から、逃げ出したいって思ったの」


「マリー…」


「嫁候補だったのに、最低でしょう? 結局私は、セタさんのことも、ロイのことも、見捨てたのよ」


 リントはマリーを抱きしめた。


「それは、見捨てたんじゃないよ」


 マリーはリントの腕の中で首を横に振る。


「お祖父様から、次はロイの嫁候補になれと言われた時、死んだ方がマシって断ったのよ」


「そ、そうだったんだ…」


 それはそれで良かったような…?

 いや、ロイが可哀想か?


「私は、あの兄弟に関わるのが怖くて逃げたのに、ミコトが、ミコトが死んだりしたら、私、もう…」


 リントはマリーを抱きしめる腕に力を入れる。


「大丈夫。ミコトは絶対に死なせない。ロイさんが絶対に守るし、俺もミコトを守るから! マリーは何も心配しなくていい!」


 マリーはかすかに頷くと、「くるし…」と呟いた。


「ご、ごめん! 力を入れすぎた!」


 リントは、慌ててマリーから離れる。

 マリーは、何故か、クスクスと笑い出す。


「騎士って、力が強くて、付き合う女性は、大変ね。ミコトも、腰を痛めてるし…」


 リントは「あー」と言った。


「俺は、ロイさんほど馬鹿力じゃないから、もう、マリーを痛くしないよ」


 マリーは自分の銀髪を耳にかけながら、「ちょっとくらい痛くても、大丈夫よ?」と言う。


 リントはゴクンと唾を飲み込んだ。


 いや、もう、これは、無理なやつである。


 リントはマリーを抱きかかえると、ベッドまで連れて行き、もう一度、しっかり抱きしめた。

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