表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/190

79.お互いを思う気持ち

 マリーが部屋の入り口で、誰かと話しているのを聞いて、ミコトはうっすら目を開けた。


 隣には、スヤスヤと眠るセイラがいる。


 マリーはドアをパタンと閉め、ベッドから起き上がっているミコトに気付いた。


「ミコト、起きたのね」

「うん、今何時?」

「もうすぐ、お昼よ」


 お昼か、とミコトは納得した。

 尋問はとっくに終わっている時間だ。


「どうりで、ロイがいっぱい話してくれると思った……」


 ミコトの言葉に、マリーはふふっと笑った。


「あら、昨夜はお話だけだったの?」


 ミコトの顔が赤くなる。


「は、話だけじゃなかったけど、殆ど、話だったの。なんか、寝かせないようにしてるなって思ったけど、ロイの昔の話とか、つい聞いちゃって……」


 マリーはミコトの隣に座った。

「尋問なんて、聞かせたくなかったのよ」


 ミコトは頷いた。

「私は、言ってくれれば、ちゃんと聞き入れるのに……」


 マリーは、「そういうところかもね」と言った。

 ミコトは首を傾げる。


「ミコトは、人の背景や考えを読んで、行動するところがある。我慢を我慢とも思ってないのよね」


「そう……かな……」


「ロイは、ミコトに我慢を強いるより、自分が悪者になった方が、いいと思ってるのかもしれないわね」


 ミコトは下を向いた。

「私は、ロイが悪者の方が、嫌なのに……」


 マリーは、ふと、思い出した。

「ところで、腰が痛いって言ってたけど、何かあったの?」


 ミコトの顔が、再び赤くなる。


「え、えーと……」

「殆ど、お話だったのでしょう?」


 ミコトは頷いた。

「なんというか、ロイの力が、強い、というか……」


 マリーは微笑んだ。

「そうね。ロイは馬鹿力だものね」


 ミコトは首を横に振る。

「あのね、ロイはすごく気を使ってくれてるの。大切にしてくれてるって、よく分かってるの」


 マリーは「なるほどね」と言った。


「2人がすれ違う訳が、なんとなく分かったわ。お互いを大切に思いすぎてるのね」


 そうかもしれない、とミコトは頷く。


「でも、それは言った方がいいわね。毎回我慢していたなんて知ったら、ロイも辛いわ」


 マリーは言いながら、ロイの相手がミコト以外の女性なら、壊れてしまうのでは、と思っていた。

 ミコトはずっとセイラを背負っていても平気だし、男性からの攻撃にも、けろっとしているのだ。


「うん、そうだよね」

 次の時には伝えてみよう、とミコトは頷いた。



 すると、コンコンとノックの音が響いた。


 ミコトが「ロイたちだ」と言うと、マリーはドアを開けに行った。


 ロイとリントとキダンが部屋に入ってくる。


「ああ、ミコト、起きた?」

 ロイは少し居心地悪そうに聞いてくる。


 別に怒ってはいないが、ミコトは頬を膨らませた。

 ロイはふっと微笑むと、ミコトのそばに来て、ミコトの頭を撫でた。


「ごめんね」

「……うん」


 これでいいのだろうか。

 でも、ロイはこの方が良さそうだ。


 マリーはミコトとロイの様子を見て微笑むと、リントとキダンに座るように促した。


「さっき来客があってね、ちょっとその話を先にいいかしら」


 そういえば、マリーは誰かと話していた。


 ロイはそのままベッド上のミコトの横に座り、リントとキダンは椅子に腰掛けて頷いた。


「昨夜中止になった会食を、今夜行いたいそうなんだけど、ぜひ代表の名代の私と、国家特別人物夫妻も一緒にって言われたのよ」


 マリーの話を聞いて、ミコトは嫌だな、と思っていた。

 ふと、リントを見ると、ものすごく嫌そうな顔をしている。


「それさ、あの代表のオッサンが、マリーと話したいだけだよね? 俺は反対」

 リントはあっさり反対する。

 マリーの事になると、リントは前後関係どうでもいいのだ。


「私も、あの代表の人、嫌」

 ミコトは、言っちゃえとばかりに、リントの意見に乗っかってみる。


「ミコトが嫌なら、俺も反対」

 ロイは元々、前後関係はどうでもいいので、ミコトの意見を、すんなり取り入れる。


「ちょっとぉ、ロイ君もリント君も、さっきのキレはどこいったの?」

 キダンは苦笑する。


 マリーは肩をすくめた。

「私も嫌だけどね。関係性は保った方がいいかなとは思ってるの」


 マリーは大人である。


 リントは溜息をついた。

「俺、マリーの護衛で」

「リントがマリーの護衛なら、私は、セイラの護衛やる」


 ミコトとリントは顔を見合わせて頷く。


「こらこら、話がおかしいよ! 2人とも冷静になってよ。ミコトちゃんは、出席する方! そもそも怪我人でしょ?」

 キダンが呆れたように言う。

 

 ミコトは怪我をしている右手を上げた。

「会食なんて、この右手じゃ上手く食べられないけど、護衛だったら、左手一本でいけます」


「ちょっと、ロイ君! ミコトちゃんが何言ってるのか分からないよ!」


 ミコトとキダンのやり取りに、ロイは笑った。


「俺がミコトに食べさせてあげるよ」

「そうじゃないでしょ! このバカップルが!」

 キダンは珍しく声を大きくした。

 

 キダンにまで、バカップルと言われてしまった。


「とにかく、会食は出席ね。リント君は、聖女の護衛! 僕はその間に探ることがあるから外す。今からは、さっき言ってたミコトちゃんの髪色について提案があるから、会食の準備も兼ねて出かけるよ。マリーも会食用の服はないでしょ。全員で行くよ!」


 話が進まないと思ったのか、キダンはさっさと話をまとめてしまった。


 仕方なく、ミコトとリントは頷く。


 ミコトは自分の黒髪を手に取って見た。

 確かに、大体、黒髪の女という認識で襲われている。


 黒髪の人なんて、他にもいるのに……。


 あれ、男性の黒髪はいるけど、女性の黒髪の知り合いはいないな。

 ミコトが首を傾げると、ロイはミコトの髪を手に取った。


「あんまりいないよね、黒髪の女性は」

「そうなんだ? 男性はいるのに?」


 ロイは頷いた。


「それもあって、みんな、最初、男の子だと思ったんだよ」


 なるほど、とミコトは頷いた。

 日本では殆どの人が黒髪だから、珍しくも何ともないのに、不思議である。


「そういえば、文献には、初代聖女は黒髪だったって書かれてたよー」


 キダンの言葉に、ミコトは「そうなんですね」と言った。

 初代聖女は、もしかしたら日本人かもしれない。


「初代聖女……ね……」


 ロイが呟いたのを、その時は、誰も気にも止めていなかった。





「わぁ、高い! すごい高い!」


 セイラを前に抱っこしたミコトを、ロイが抱き上げた状態で、セイラは嬉しそうに叫んだ。


「何この絵面……」

 リントは、かなり呆れていた。


 セイラがミコトに抱っことねだり、ミコトは腰が痛いと言い、それならと、ロイがセイラを抱っこしたミコトを抱き上げたのだ。


「確かに、こんな抱っこは初めて見るわ……」

 さすがのマリーも呆れている。


「ねえねえ、バビューンって速く走ってよ!」

 セイラの言葉にミコトは驚く。

「セイラ、ロイは乗り物じゃないんだよ! それにこんなの恥ずかしいよ!」


 キダンは手をヒラヒラさせた。

「ロイ君、行ってきていいよー。一緒にいるの恥ずかしいし」


 街道を歩く変な一団を、街行く人々がじろじろと見ている。

 マリーとリントも頷く。


「じゃあ、街を一周したら、キダンさんの知り合いのお店に行きますね」


 ロイの言葉に、ミコトは「ホントに走るの!?」と驚いている。


「しっかり捕まっててね」

 そう言うと、ロイは走り出した。


「速い! すごい! 楽しいー!」

 セイラの声が遠ざかる。


 マリーとリントとキダンは、3人を見送った後、溜息をついた。


「リント君が聖女ちゃんを背負えば良かったんじゃない?」


 キダンの言葉に、リントは首を横に振った。


「俺は聖女に触れた事はありません」

「あ、そうなの? じゃあミコトちゃんがいない時は、聖女ちゃんは歩いてるんだね」


 マリーとリントは頷いた。

 キダンは考える仕草をする。


「そういえば、歴代聖女も、人嫌いっていうか、変わってる子が多かった気もするなぁ。今回の聖女ちゃんは明るい子だなと思ったけど、ミコトちゃんがいるからなのかなー」


 マリーは「そうね」と言った後、キダンとリントを見た。


「ミコトは、命を狙われているのね」


 キダンとリントは目を伏せる。


「マリーは僕に似て、察しがいいなー」

「似てないわ」


 マリーの睨みに、キダンは「僕に似なくて、察しがいいなー」と言い直した。


「尋問で、何か分かったの?」


 リントは「いや……」と言い、マリーを見つめる。


「ミコトを必要としている、ということしか……。今回の奴は、ミコトの命を狙った訳じゃない」


 マリーはリントを見つめ返す。


「命を狙ってないなんて、嘘かもしれないじゃない」

「尋問はロイさんがやったから、嘘はつけない、というか、奴は一言も話してない。俺も、あんなの、初めて見たけど……」

 リントは再び目を伏せた。


 マリーはふぅと息を吐く。

「ミコトに何も言わず、守りきるつもりなのね。本当に、お互いを思いすぎよ……」


 リントも「本当にね……」と呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ