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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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77.甘い言葉

 ミコトが襲撃され怪我をしたその日の夜、ご夫妻でお使い下さいと、当てがわれた、国立宿泊所の一室で、ミコトとロイは話し合う事になった。


 第4エラルダ国の代表であるワカの、美人へのあからさまな態度の違いと、国家特別人物の妻としてロイに恥をかかせたのではないかというモヤモヤした気持ちで、一体ロイと何を話さなければいけなかったのか、ミコトは分からなくなっていた。


「ソファに座ろうか」


 ロイに言われ、ミコトは青いソファに座り、ロイもローテーブルを挟んだ向かい側に座った。


「俺の能力についてなんだけど……」


 そうだ。

 その話だったっけ。

 すごく大事な話のはずなのに、今はとにかく、情けなさすぎて、一人になりたい。


「まず、心の中を読む事は、本当に出来ないんだ」


 ロイの言葉に、ミコトは少しホッとした。

 こんな心の中を読まれたら、嫌われてしまう。


「ミコトの助けてって声が聞こえた、というか、頭に感じたのも、今日が初めてで、そんな事が出来ることも、知らなかったんだ」


 ロイの声は不思議だ。

 ミコトのモヤモヤした気持ちが、少し落ち着いてきた。


 ロイは嘘を言わない。

 ロイの言葉は信じていいのだ。


「ロイ、そっちにいってもいい?」

「俺が行くよ」


 ロイは立ち上がると、ミコトの隣りに座り直した。


「あと、俺の出来る事は……」

 ミコトは、ロイの話も聞かず、ロイに抱きついた。


「え? ミコト?」

「その能力って、他の人の声も聞こえるの?」

「他の人の声は、聞こえない」


 ミコトはロイの心臓の音を聞きながら、試してないのに、キッパリ言うのを不思議に思っていた。


「他の人の声が聞こえないのは、なんで?」

「なんでって、俺は、ミコトだけだし……」


 ロイの言葉に、ミコトは、本当に、ホッとしていた。

 いつもなら、この天然素直イケメン! と思うところだが、今は、すごく嬉しい。

 あんな、よく知らないおじいさんにブス扱いされたことなんて、ロイがミコトだけだと言ってくれるのなら、どうでもいいことだ。


 ロイはミコトの肩を掴んだ。


「あんまりくっつくと、ほら、良くないよ」


 ミコトは顔を上げてロイを見た。


「なんで?」

「なんでって……」


 ロイはミコトの黒い瞳を見て、困惑した。

 本当に分かっていないのだろうか。

 それとも、わざと困らせているのだろうか。


 ロイの困惑をよそに、ミコトは、もう一回、ミコトだけと言ってくれないかなと思っていた。


 でも会話の流れ的に無理そうだ。

 そもそも、ロイに言わせるというのも、何か間違っている。

 言って欲しいなら、ミコトも言わなければいけない。


「あ、あのね、ロイ。私も、ロイだけだよ。だから……あの……」

「う、うん」


 もう一回、甘い言葉をお願いします!

 時々言う、重い言葉でもいいです!


「わ、私も、ロイが助けてって言ったら、助けに行きたいし、ロイがどこにいるか、わかったら嬉しいし、ロイがいなくなったら、し、死んじゃうかも……」


 素直に、言葉を言ってと言えば良かった。

 もう、ミコト自身、何を言っているのか、よく分からない。


 ロイは、はぁ、と息を吐くと、ミコトを抱き上げて、ベッドに寝かせた。


「ちょっと、お仕置きだな……」


 な、なんでお仕置き!?

 お仕置きって、怒ったり、殴ったり、なの?


「い、痛くしないでね。優しくして……」

「……っ!?」


 この時点で、2人はいつものように、すれ違っていたのだが、結局、最後まで、その事に気が付いていなかった。






 次の日の早朝、ミコトとロイは、セイラとマリーの部屋で、セイラに叱られていた。


「我慢しろって言ったよね!? 自分で抑えてコレ!?」

「すみません……」


 ミコトはセイラの光る手と眩く光るロイを見て、「おー」と感嘆の声を上げた。


「おー、じゃない! ミコちゃんもミコちゃんだよ!」

「ご、ごめんなさい……」


 セイラに叱られて、ミコトはシュンとなる。

 横で聞いていたマリーはクスクスと笑った。


「それで、能力について、理解は深まったの?」


 マリーの言葉に、ミコトとロイは顔を見合わせた。


「そ、その話、途中だった……」


 ミコトが呟くと、セイラとマリーは呆れた顔をした。


「違うの! ロイは話そうとしてくれたのに、私がそれを遮って、誘った? みたいな……」


 ミコトの話が終わる前に、セイラは「疲れたー!」と言って、ミコトに抱きついた。


「大丈夫? セイラ……」

「だいじょばない……。ミコちゃんと一緒にお風呂入る。おんぶして」


 ミコトはセイラの頭を撫でた。

「ごめんね。なんかちょっと腰が痛いんだよね。おんぶはまた今度でもいい?」

 

 ミコトの腰をさする動作に、セイラはロイを睨みつけた。


「大の男の手刀でも全然平気なミコちゃんの腰が痛いって、どーゆうことっ!? 何回やったの!?」


 ロイは首を横にぶんぶん振った。

 聖女が何回やったとか言い出してしまった!


「セイラ! お風呂行こう!」

 ミコトはセイラを引っ張り、お風呂場に連れて行き、ドアを閉めた。


 部屋に残されたロイは、マリーの視線に耐えきれず、「俺も風呂入ります……」と言って、セイラとマリーの部屋を後にしたのだった。

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