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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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75.第4エラルダ国での襲撃

 第2エラルダ国管轄の騎士団駐屯地での朝、馬車に乗り込もうとしていたところで、ミコトはソマイに呼び止められていた。


 寝ているセイラを馬車に乗せて、最終確認で馬車外に出てきたところだった。


 ソマイの声が聞こえたからか、リントがもう一度降りてくる。

 御者席にいたロイも降りてきて、ミコトの隣りに立った。


「ミコトさん、交流試合の件ですが……」

「そ、それでしたら、団長と副団長がおりますので、3人でお話下さい」

 ミコトはニッコリ笑うと、馬車にさっさと乗り込んだ。


 大体、先程、一泊のお礼と別れの挨拶は済ませたのだ。

 これ以上、ロイに疑われたくはない。


「交流試合の調整は私がしていますので、変更ですか?」

 リントは笑顔でソマイに詰め寄る。


 ソマイは頷く。

「代表のリオ夫妻がぜひ見学したいとの事で、その旨お願いできないでしょうか」


 ロイとリントは顔を崩さずに、心の中で、来るな! と叫んでいた。


「それですと、かなり大きな行事になってしまいますよね。こちらも代表に確認を取りますので、後日連絡しますね」

 リントは笑顔のまま、答える。


「承知しました」

 ソマイも笑顔を向けた後、ロイを見た。


「それではロイさん、また、後日……」

「はい。また、交流試合の日、ですね」


 ソマイは会釈をして立ち去る。


 リントは馬車に戻り、ロイは御者席に戻った。

 

 何事もなく、聖女一行の馬車は、第2騎士団駐屯地を後にした。






「ミコト、怒ってるのね?」

 馬車内で、マリーはミコトに尋ねた。


 ミコトは頷く。

「別にソマイさんが悪いとは言わないけどさ、もう話しかけてこないでほしい」


 ミコトの言葉にリントは苦笑した。

「結構バッサリだな。ソマイ、かわいそうに」


 ミコトは溜息をついた。

「かわいそうなのは、私だよ。こんな事でまたロイとケンカになったら嫌なんだけど……」


 マリーは首を傾げた。

「こんな事って、ミコトは何故ソマイさんが話しかけてくると思ってるの?」


 マリーの質問に、ミコトは拳を握った。

「カーサさんは、ロイ狙いなんだよ!」


 マリーとリントは顔を見合わせた。


「第3のライラもそうだったの! ソマイさんは、カーサさんから私を誘惑するように頼まれてるんでしょ? それで、離婚させて、ロイと……」


 リントは思わず笑った。


「なにその説! おもしろ……」

「リント! ミコトは真剣に……」

 マリーも詳しい事情は知らないが、それではない事は分かる。


「え! 違うの? リントは何か知ってるの?」


 ミコトが驚いているので、リントは声を小さくしてマリーとミコトに言う。

「ソマイは、同性愛者説があるんだよ」


 実際、これは嘘ではない。


 マリーは、ミコトをからかうつもりね、と呆れ、ミコトは、両手で口元を押さえた。


「じゃあ、ソマイさんが、ロイ狙い!?」


 リントは思い切り吹き出した。


「そうきたか! 気持ち悪いけど、採用!」

「リント! もうやめてあげて!」

 マリーがリントを止める。


 マリーの反応で、ミコトはからかわれただけと理解した。

「もういいよ!」

 ミコトはぷいと横を向く。


「悪かったって。同性愛者説は嘘じゃないんだよ。ソマイは、それくらい、女性と話さないらしい」

 リントは笑いながら言う。


「ミコトは、ソマイさんから本当に好意を寄せられているとは思わないの?」

 マリーの質問にミコトは顔をしかめた。

「思わないよ」


 あまりにハッキリ言うので、マリーはリントを見て、リントも真顔になった。


「転びそうになったのを、すぐに助けたのに? 聖女の言う通り、気にしていないとなかなか出来ないと思うけど?」


 ミコトはアハハと笑った。

「だとしたら、セイラを見てたんだよ。聖女だからね」


 リントは腕を組んで、「なるほど、ね」と言った。

 マリーは、少しソマイを気の毒に思っていた。





 その日の午後1時頃に、ミコトたち聖女一行は、第4エラルダ国の首都に到着した。


 ちなみに、ロイとキダンは別行動のため、第4エラルダ国に入る前に別れた。


 第4の神官長に国立宿泊所に案内されて、夕食まで休憩となり、セイラとマリーは女性の部屋に、ミコトは護衛の打ち合わせのため、リントの部屋にいた。


「明日は教会でのお祈りの後、首都をパレード。立ち位置は……」

 リントは地図を見せながらミコトに説明をする。

 ミコトは頷きながら聞き、最後に「了解」と言った。


「今日の夕食の護衛は、私はセイラの後ろでいい?」


 夕食は、第4エラルダ国の代表や神官長との会食だ。

 通常、護衛は一緒に会食はしない。

 首都ではなく、村や町への巡礼の場合は、一緒にどうぞと言われることもあるが。


 リントは、「そういえば」と言った。

「ミコトは、国家特別人物の奥様だけど、そのへんはどうなるんだ。会食よりも護衛の仕事を優先?」


 ミコトは首を傾げた。

「よく分からないんだよね。セタさんは国家特別人物で聖女の護衛もやっていたんだよね? 一緒に食べたりしたのかな」


 リントは腕を組んだ。

「わっかんないなー。あの2人は夫婦と言ってもいいくらいの距離感だったから、会食も一緒にしてたかもしれない……。あ、マリーに聞くか」


 リントはそう言うと、部屋を出て行った。


「夫婦の距離感……」

 ミコトはポツリと呟いていた。


 妻の様な人と離れ離れになって、セタは本当につらかったのだろう。

 聖女がいた10年、ずっと、恋仲だったのだろうか。


 この聖女の巡礼が終わったら、ロイの妻として、セタに会いに行くことになっている。

 表向きは、ロイの結婚の報告ということになっているが、夫婦同然だった女性と別れたお兄さんに、結婚しましたって言うの、辛いだろうな。


 ミコトもリントの部屋から出る。

 その瞬間だった。


 ミコトの首筋に、鈍い痛みがはしった。


 目の端に知らない男性の姿を確認する。


 まさか、国立宿泊所で襲撃か!?

 でも甘い!

 こんな攻撃で、気を失ったりしないんだよっ!


 ミコトは倒れるフリをして、男が油断したところに、お腹に一発肘打ちをする。


「うっ!」


 さらに、足払いっ!

 男はドタンッと倒れる。

 ミコトは男に馬乗りになり、首を肘で締める。


「リントッ!」

 ミコトが叫ぶと同時に、部屋からリントが出てくる。


「もう1人か!」

 リントは後ろからミコトを捕まえようとしていた男に暗器を投げる。


 男の首筋に暗器が刺さり、血が吹き出す。

 リントはすぐに男に乗り掛かると、首のナイフを抜いた。


「今なら助けてやるっ! 目的は!? 誰に頼まれたっ!?」


 リントの言葉に、男は一言も返さず、ガクリと全身の力が抜けた状態になる。


「自害しやがった!」

 リントは舌打ちをした。

「ミコト! そっちは……」


 リントがミコトを振り返ると、ミコトの右手は歯型が付いて血が出ており、男は気絶している。


「自害しようとしたから、口に手を突っ込んで薬を取ったんだけど、噛まれた……」


 リントは溜息をついた。

「相変わらず、咄嗟の判断がエグいんだよ……」





 結局、この騒ぎで、会食は中止となり、安全のために、ミコトとセイラとマリーとリントは、第4騎士団の応接室に待機となった。


「くっそ……、尋問に加われないのか!」

 リントは、先程まで事務官や騎士団員と話していたが、苦々しい顔をして戻ってきた。


 ミコトにだって分かる。

 聖女を狙ったのではなく、ミコトを狙ったのだということが。

 しかも、自殺薬を歯に仕込んでいるのだ。

 軽い襲撃ではない。


「ミコちゃん、ミコちゃん……」

 セイラは包帯を巻かれたミコトの右手を持って、ポロポロと涙を流す。


「首筋のアザも酷いわ……」

 マリーの顔も青ざめている。


「私は大丈夫だよ。2人に何もなくて良かった」

 ミコトは笑顔を作るが、どちらかというと、巻き込んでしまった方なので、心が痛む。



 リントはミコトの怪我を見て、歯ぎしりをした。


 こんなこと、いつまで続くのか。

 犯人を早く捕まえてしまいたい。

 国家特別人物のロイがいれば、尋問に加われるかもしれない。

 しかし、ロイの能力は、ミコトの位置が分かる能力なので、大きく移動しない限り、危機を知らせることが出来ない。


 リントは、ふと考えた。

「ミコト、ロイさんに助けてって言ってみてよ」


 リントの言葉に、ミコトは首を傾げた。

「ロイ、ここにいないのに、言ってどうするの?」


 マリーはピンときた様にミコトの左手を握った。

「ミコト、試しに、心の中でもいいから言ってみて。怪我をして辛くて、助けてって」


 セイラもウンウンと頷く。

「アイツのよく分からない能力で、伝わるかもよ!」


 よく分からない能力って、よく分からない。

 でも、ロイがいれば、何とかなる気もする。

 それに、会いたいし……。


「うん、やってみる」

 ミコトは目をつむって、ロイの姿を思い浮かべた。


 

 長身で金髪で、青い、光が当たると、スカイブルーの瞳で、最近、髪を伸ばして、ミコトの好みに結んでくれている。

 どうして狙われる時に限って、ロイはいないのだろう。

 絶対に助けるっていつも言ってくれているのに。

 今も、襲撃犯の尋問に加われないし。


 助けてよ。

 ロイ! 私のこと、助けて!




「……って、さすがに無理があるよね」

 ミコトは、目を開けて、アハハと笑った。


 リントはドアの方に歩いていき、ドアを開けて、顔を出した。


「うわっ! ホントに来た!」


 リントが顔を引っ込めると同時に、ロイが応接室に入ってくる。

 ロイの背中には、気絶しているキダンが乗っている。


「ミコト! ミコト、大丈夫!?」

「え、ええっ!?」


 ロイは驚いているミコトの右手をそっと持った。


「怪我してる! なんでこんな……。首筋も、これ、手刀か? 何があった?」


 襲撃よりも、怪我よりも、今この状況の方が、ミコトにとっては疑問符だらけである。


「ロイ、落ち着いて。ミコトが混乱してるわ」

 マリーが見かねて、ロイに声をかける。


「え! だって呼んだよね? 助けてって!」


 確かに呼んだけど、助けてって思ったけど、でも、本当に来るとは思わないじゃん!

 だったら、結婚式当日の襲撃も、助けてって思えば良かったの?

 何で教えておいてくれないの?

 無駄に怖かったし、足に傷が残ったし、意味が分からないよ!


「ロイの、ロイのバカー!」


 ミコトは叫ぶと、涙を流して泣き出したのだった。

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