65.お茶会後
「何っなんですか! あの人たちはっ!」
自宅の1階の部屋に戻るなり、ネルは大声で叫んだ。
1階にいたウミノとイリスとモネもうんうんと頷いている。
本当は、ミコトも叫びたい気分だったが、ネルが叫んでくれたので、少し気持ちが落ち着いた。
「いくらイケメンでも、アレはないです。残念です」
ウミノも溜息混じりに言う。
ソマイは、ロイとは違う意味の、残念イケメンに認定されたようである。
「あの皆さん、みんなで片付けて、打ち上げをやりませんか? 実はそのお菓子も用意してまして…」
ミコトも言いたい事はたくさんあるが、とりあえずお片付けだ。
もう少ししたら、買い物に出ている管理人のヨリも戻ってくるだろう。
「やったー! ミコトさん大好き!」
ネルとウミノは喜んで片付け始める。
「言いたい事がたくさんあるわぁ!」
「本当に!」
イリスとモネも話しながら片付けを始める。
ミコトはホッとして、リントとコランの方を見る。
「リントとコランさんも、一緒に打ち上げしませんか?」
リントとコランは顔を見合わせる。
正直、女性ばかりの打ち上げには参加したくない。
「俺、報告すべき事がありすぎるから、今から報告に行ってくる」
リントは右手を上げて、宣言する。
コランはズルイという表情でリントを見る。
「えー、リントの分もあるのに。あ、じゃあ、今夜、聖女棟に来てよ。マリーとセイラにもモネさんのケーキをお土産にするんだ。その時に一緒に食べようよ!」
ミコトは笑顔で言う。
いつものミコトに戻っている。
「わかった。緊急が入らなければ行くよ」
ミコトは納得したように頷くと、少し顔を赤くした。
「報告って、ロイだよね? ロイも緊急がなければ来て欲しいって伝えてくれる?」
「りょーかい」
ミコトは嬉しそうに笑う。
「ミコト、あのさ…」
リントはソマイを睨みつけた時の事をミコトにきこうと思ったが、少し考えて、やめた。
まずはロイに話すべきだろう。
「なに?」
「あー、さっきも食べて、打ち上げで食べて、聖女棟でも食べる気なのかなって」
ミコトは首を傾げる。
「え? ダメなの?」
リントはニヤッと笑う。
「いいけどさ。タルみたいな体型になって、ロイさんに捨てられないように気をつけなよ?」
「なっ!?」
「じゃあコランさん、あとをお願いします。こちらに代わりの護衛を寄越しますんで、合流して下さい」
コランはミコトをチラッと見て「了解」と言った。
走って出ていくリントを見送ってから、ミコトはコランに向き直る。
「コランさんは? 一緒に打ち上げしましょうよ!」
コランはミコトから目を逸らす。
「護衛としているので、それは、ちょっと…」
それもそうだ。
ミコトも護衛任務中にお菓子を食べたりしない。
というか、あのソマイは食べてたな?
あーんで!
「じゃあ、お土産にしますね。ぜひ奥様と召し上がってください」
「ああ、それなら。ありがと…」
「えー! そちらの騎士様は、既婚者なんですか?」
コランのお礼に被せるようにして、ネルは声を出した。
ネルはコラン狙いだったのだろうか。
「あ、はい。もうすぐ孫が生まれます」
コランは焦ったように言う。
「え! おめでとうございます!」
ミコトは嬉しそうにコランを見た。
娘さんが隣町に嫁いだとは聞いていたが、コランはもうすぐ、おじいちゃんになるのか。
コランは40歳だが、表情が豊かなこともあり、5歳は若く見える。
若いおじいちゃんである。
「世間はこんなに幸せそうなのに、私には恋人もいないなんて…」
ネルは1階の部屋のテーブルを拭きながら溜息をついた。
騎士団員を紹介する話、無しにしてしまったからなぁ。
「ネルさん、ごめんなさい。騎士団の人を紹介出来なくて…」
ミコトの謝罪に、ネルは慌てて両手を振った。
「いえ! そういう意味じゃないんです! その事は、事情があるって分かってるので…」
コランは不思議そうな顔をしている。
ミコトはコランに「キダンさんですよ!」と言った。
「13歳で紹介された女性をポイ捨てしたとか何とか! これ、本当なんですか?」
コランはキダンと養成所で同期だった。
キダンの事だから、あの場の嘘かもしれない。
コランは青ざめた。
「あの時の事は、思い出すのも嫌だ! アイツ同時に5人に手を出しやがって、その後に連帯責任だとか言って先輩に同期全員呼び出されて…」
コランは両手で顔を覆った。
事実はキダン自白よりも、5倍酷かった。
ネルもドン引きである。




