表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/141

64.奇妙なお茶会②

 ロイとミコトの自宅にて、第2エラルダ国の国家特別人物兼代表のリオの妻のカーサと、第1エラルダ国の国家特別人物兼騎士団長のロイの妻のミコトの、お見舞いという名のお茶会が開催されていた。


 

 

 リントは横にいるコランから怒りの気を感じて、ミコトやりすぎだ、と溜息をついた。


 コランは素直な性格らしい。

 ミコトの話を信じ込んでいる。

 というか、全部本当だから、信じるのは当然か。


 でも、ロイには悪いが、これでいい。

 ロイとミコトは、仲は悪くないが、男女の仲ではないと思ってもらわないと困る。


 カーサはリオの企みを知っているのか、協力しているのか、それは分からないが、そう見た方が自然だろう。


 リントはカーサとソマイを見る。


 相変わらず距離が近く、なんと、カーサはケーキを切り分け、フォークに乗せて、ソマイに食べさせている。


 それはさすがにないだろう。


 もしかしたら、ミコトのお見舞いは、不倫旅行の口実にされただけなのかもしれない。





 ミコトはカーサとソマイから、目を逸らした。


 だって、あーんとか、しているのだ!


 これもう、絶対に不倫だよ!


 確かに、リオは若い女を3番目の妻に迎えたかもしれないけど、自分は年下イケメン騎士団長と不倫ですか!?


 壮大な? 愛憎劇がリアルに起きているよ!


「ミコトさんは、騎士団にお勤めで、とてもお強いのですよね」


 カーサは何事もなかったかのように、笑顔でミコトに話しかけてきた。


「はい。でも、わたくし内勤で、主に事務をやっているのです。ですから、決して強くはないのですよ」


 ミコトは何とか笑顔で答える。


「そうなのですか? あ、それでしたら、ソマイと腕相撲をやってみませんか?」


「えっ!?」


 予想外の提案に、ミコトは驚きを隠せなかった。


「い、いいえ、わたくしなどが、ソマイさんに勝てる筈もありません」


 ミコトは確かに、一般女性より力は強い。


 でも男性ばかりの騎士団内では、腕相撲に関して言えば、勝てる相手もいるし、負ける相手もいるのだ。


 ソマイのような体躯の男性に勝てる筈もない。


「あら、ソマイには、誰も勝てませんわ。そういう意味ではなく、ミコトさんの強さを知りたいのです」


 なんですって、ロイなら勝てますわよ。

 

 ではなくて、ミコトの強さなんか知って、一体どうするというのだろう。


「いいえ、わたくし、本当に大した事ないんです。この様に、怪我もしておりますし…」


 カーサはソマイにコソコソと内緒話をすると、ミコトに向き直り、ニッコリと笑った。


「いいではないですか。ほら」


 すると、ソマイはテーブルのお菓子とサンドイッチの皿を隅に移動させ、すっとしゃがむと肘をテーブルについて手を差し出した。


 ミコトは目の前に出された、大きな腕に、椅子を引いて後ずさった。


「お戯を、カーサさん。わたくし、旦那様以外の手に触れることなんて、出来ませんわ」


 ミコトは笑顔を崩さず、ソマイではなく、カーサを見る。


「ミコトさんは、騎士団にお務めでしょう? 周りは全員男性ではないですか。腕相撲なんて、浮気にもなりませんよ?」


 それは、どういう意味なのだろう。

 男性ばかりの職場でミコトが浮気をしているということだろうか。

 というか、浮気って、浮気はそちらではないか。


 ソマイの大きな腕が、ミコトにずいっと近づく。

 ソマイの大きな体も視界に入る。


 ミコトは背筋にゾッとしたものが走るのを感じた。

 ミコトの体が、カタカタと震え出す。


 手を振り払って、逃げ出したい。

 

 ダメだ。

 そんな事をしたら、失礼だ。


 笑って、いやですって言えばいい。


 分かっているのに、声が出ない。


 すると、ミコトの前に、スッとリントが手を伸ばして立った。


「奥様は度重なる襲撃で、見知らぬ男性への恐怖心がございます。このような事、やめていただけないでしょうか」


 ミコトの真後ろには、コランも控えている。


「まあ、そうなんですか。すみません、存じ上げなくて。ソマイ、離れて差し上げて?」


 ソマイは無言のまま、後ろに下がる。


 ミコトは、ホッと胸を撫で下ろした。


 リントたちに感謝である。

 

 リントの顔を見ると、険しい表情をして、ソマイを見ている。


 カーサは「それでしたら」と、両手を合わせた。


「ソマイは相手の目を見るだけで、相手の強さが大体分かるのですよ。決して近づきませんので、目を合わせていただくのはどうでしょう?」


 ミコトは目を丸くした。


 何故そんなにも、ミコトの強さが知りたいのか、さっぱり理解できなかった。


「申し訳ありませんが、奥様は、それも…」


 リントは何とか断ろうとする。


 すると、カーサはミコトの手を握った。


「ソマイはとても紳士なんですよ。ミコトさんが怖がるような男ではありませんわ。練習もかねて、ね?」


 不倫する男が紳士なのかどうかはさておき、これは、絶対に諦めないやつだ。


 ミコトはリントに頷いてから、ニッコリ笑った。


「では、もう少し離れていただいて、目を合わせるだけでしたら…」


 目を見て相手の強さが分かるのは、構わない。

 正直、目なんか見なくても、ソマイの方がミコトより断然強いからだ。

 ミコトの強さが分かったところで、何の問題もないだろう。


「ありがとう! ミコトさん」


 カーサはソマイに手で後ろに下がるよう指示をする。

 ソマイは5歩くらい離れて、花壇にぶつかる形で止まる。


 5mは離れている。

 これなら、目を見るくらい、大丈夫だ。


「さあ、どうぞ」


 カーサは嬉しそうに声をかける。

 

 ミコトは言われたとおり、ソマイの目を見た。

 ソマイもミコトの目を見つめる。


 これが近かったらドキドキするのかもしれないが、遠いので、なんて事はない……と、突如、重い空気がミコトを押しつぶす感覚に襲われた。


 ミコトは歯を食いしばると、両手でテーブルを持ち、耐えた。


「ぐぅっ!」


 これは! この技は、ロイの!?


「何をやっているんだ!!」


 リントの叫び声に、ミコトを押しつぶす感覚がフッと消えた。


 ミコトの心臓がドッドッドッと鳴り、全身から汗が吹き出す。


「今何をしたんだ!」


 リントはソマイを睨む。


「あら、何もしていませんよ? もしかして、ミコトさん、ソマイが男前だから、ドキドキしてしまいました?」


 カーサは妖艶な笑みを浮かべる。


 違う。

 リントの言っている事が正しい。

 ソマイは、ミコトを、気絶させようとしたのだ。

 ロイの様な技で!


「何を言っているんだ! 今…」


 ミコトは補助杖を取り、立ち上がって、リントの前に出た。


「私が、話します」


「ミ…分かりました」


 リントはスッと後ろに下がる。


 何故とか、目的とか、そんな事はどうでもいい。


 ソマイは、子どもで、女性で、怪我をしていて、無抵抗な、そんなミコトに攻撃を仕掛けたのだ。


 ミコトはソマイを真っ直ぐに見る。

 ソマイは少し驚いた表情をしている。


 そうでしょうね。

 気絶させるつもりだったのでしょうね。

 普通の女性なら気絶していただろう。

 そういう事を、ソマイはしたのだ。


 ミコトは、補助杖でソマイから3m程の距離まで歩き、ソマイを睨みつけた。


 騎士団長ともあろう男が、女性の言いなりになって、騎士の本懐を忘れて、弱き者に攻撃をする。


 そんな事、絶対に許せない!


「わたくし先程も申し上げた通り、この様に怪我をしております。襲撃の恐怖が消えず、夜も眠れません。そして見てのとおり、取るに足らない子どもでございます」


 ミコトはソマイをさらに睨む。

 この怒り、絶対に伝えてやる。


「ですので、このような事、二度とおやめくださいませ!」


 ソマイは驚いた表情をすると、2歩後ろに下がり、花壇の花をクシャッと踏み潰した。


「も、申し訳、ありませんでした…」


 ソマイは低い声で、ミコトに頭を下げて、謝った。


 素直に謝るのなら、こちらも許すまでだ。


 ミコトはニッコリ笑うと、補助杖でテーブルまで戻り、カーサに頭を下げた。


「場の雰囲気を壊してしまい、大変申し訳ありませんでした」


 本当はカーサも許せないが、ミコトも騎士の端くれである。

 女性に手荒な真似はしない。


 カーサはスッと立ち上がる。


「いいえ。こちらも申し訳ありませんでしたわ。

ミコトさんの怪我にも障りますし、そろそろ失礼させていただきますね」


 その後は、何事もなかった様に、お互いの健康を願う言葉を掛け合い、カーサとソマイを乗せた第2の貸切馬車を見送った。


 最後に、ソマイは、申し訳なさそうに目を伏せて、ミコトに礼をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ