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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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6.異例の事態

 アレン、ゼノマ、カイル、ロイの4人は、元いた中央政務棟の会議室までの通路を早足で歩いていた。


「まだ会議するんですか? もうミコト? が護衛でいいじゃないですか!」


 ロイは前を歩く3人に声をかける。


 アレンは立ち止まると、くるりと向きを変えて、ロイの額を人差し指で文字通りブッ刺した。


「お前はバカか! ああ、知ってたよ、バカなんだよ!」


「痛っ! つか、バカとかひどっ…」


「お前はもうしゃべるな! この異様さも分からん様なら副騎士団長とか名乗るな! しかもさっき、やったとか小声で言ってたな? このバカがっ!」


 ロイ的には、副騎士団長になりたかった訳じゃないのにやらされているのだが、きっとそれを言ったら火に油なのだろう。


「アレン落ち着け。気持ちはよぉく分かるが、一旦会議室まで戻ろう。今後の方針を話し合わねばならない」


 カイルはアレンの右肩に手を置いてなだめる。


「私も、よぉく分かるからな」


 ゼノマも「よぉく」を強調してアレンの左肩に手をおいた。


 3人とも酷過ぎる。

 まぁ、でも、いいか。 

 会議は聞いているフリをしよう。

 しゃべるなって言われたし、仕方がない。


 ロイは前向きに考えて、大人しく黙っていることにした。



「問題はこの4点だ」

 

 会議室に入るなり、アレンは会議室の黒板に石灰で殴り書きをして、それを見せた。


・転移者が2人

・聖女の雰囲気

・転移時期の早さ

・ミコトの目的


「まず、神の作られたこの聖女を呼び寄せる…仮に儀式としようか。この儀式は1人しか呼べないと言い伝えられている」


 アレンが「仮に」というのは、実は聖女は何もしなくても時期がくれば、勝手にあの教会に召喚されることになっているからだ。


 教会自体は休みがなく、常時3人以上の神官がいるので、いつ聖女が来ても問題はない。


「その言い伝えに間違いはないのか?」

「間違いない。そして記録を見ても、2人召喚されたことはない」


 カイルの質問に、ゼノマが答えて、年季の入った分厚い本を机の中央に置いた。

 本の表紙には「聖女記録」と記されている。


「ここには歴代聖女の功績、性格や容姿なども書かれている。そして一番初め、200年以上前のページには、神の声を聞いた大神官様のことが書いてある」


 ゼノマは本の一番古いページをヨイショと開く。


 そこには達筆な字が書かれており、確かに「膨大な神力を必要とするため、召喚は10年に1度、1人のみとする」と記されている。


 アレン、ゼノマ、カイルの3人はうーんと唸って腕組みをした。


 ロイはその様子を見て、

「変わることだってあるんじゃないの? ホンット頭固いんだから…」

 と言いそうになるのを何とか堪えた。


「とりあえず、保留にしてだな、この2番目の聖女の雰囲気だが、歴代の聖女と違いすぎるんだよ!」


 アレンは感情を露わにして言う。


 ロイは直前の聖女しか記憶にないので歴代のと言われてもよく分からないが、カイルとゼノマはウンウンと大きく頷いている。


「今までの聖女は、皆、顔が似ていたよな。俺はてっきり、異世界には聖女の一族がいて、そこから来てくれているのだと思っていたくらいだ」


 カイルは昔を思い出しながら言う。


 

 実は顔が似てしまう現象は、聖女転移システムの希望を叶える部分が、容姿を良くしてほしいという希望が入ると自動的に同じ様な美少女にしてしまっただけで、大した意味はないのだが、そんなことをこの4人が知る由もない。



「今回の聖女もかなりの美少女ではあるが、顔つきが全然違うな」

 ゼノマは「聖女記録」をめくりながらブツブツ言っている。


(いやいや、今まで同じ顔だったという方が不気味だよ)

 ロイは心の中でツッコミをいれる。


「顔もそうなんだが、あの聖女、ちょっと怖くなかったか? 許さないって睨んできたぞ?」


 アレンは必死に訴える。


「確かに! 今までの聖女は、もっと弱々しくて、謙虚な感じだったよなぁ」

「召喚された時に熟睡している聖女なんて初めてだ!」

 カイルとゼノマも口々に言い合う。


 これは会議なのだろうか?

 すっかりオジサン談議になってしまっている。


(聖女に夢見過ぎだな、このオジサンたちは)

 

 ロイは早く終わらないだろうかと小さく欠伸をした。



「転移時期の早さ、だが…」


 アレンはゼノマを見る。

 ゼノマは頷くと、説明を始めた。


「前の聖女が帰られてから、およそ30日〜60日で次の聖女が転移してくることになっている。先程の大神官様の記録にもそう書いてあるのだが、これにはバラつきがあり、60日ギリギリだったこともあれば、31日で聖女が現れたこともある」


「今回は28日だった。この最短記録に意味があるのかどうかだが…」


 アレンは28日を強調しているが、ロイからすると、たった2日だよ、といった感じである。


 そもそも、少し早いが朗報だ! とか言ってなかったっけ?


 召喚されたのが2人じゃなければ、時期の早さなんて問題にもしていないはず…?


 ロイは、話をちゃんと聞くつもりなんて全くなかったが、ツッコミどころが多過ぎて、逆にちゃんと聞いてしまっていた。


「本当は聖女じゃないとか、か?」


 カイルの言葉に、ゼノマは首を横に振った。


「聖女たちが召喚された時にその場にいた神官によると、虹色の強い光に包まれて2人が現れたとのことだ。聖女召喚の光に相違ないだろう」


 3人はまた、うーんと唸り、結局転移時期の事も保留となった。


(殆ど保留って、この会議、意味あるのか?)

 

 ロイは溜息をついた。



「最後のミコトの目的だが…、これは調べるしかあるまい」


 流石にミコトの目的をこの会議で想像することは無意味だとアレンは分かっているようだ。


「だが、表立って調べると、聖女に睨まれるぞ」

 

 カイルはニヤニヤしながら言う。


 アレンは自分ではなく…と言う様に、ロイを指差した。


「ああ、そういう事か! 待たせたな、お前の出番だ! ロイ!」

 カイルはロイの肩をガシッと掴む。


「は? 俺?」


 今まで完全に傍観者だったロイは、思わず間抜けな声を出してしまった。


「いや、えーと…、ミコト? 目的あるんですかね? 聖女のイトコで護衛したいだけじゃ…」


「だから、それを調べるんだよ、ロイ、お前が」


「調べるって、どうやって…」


「歳が近いし、何とかなるだろ?」


「近くない! 俺、20歳だし、どう見てもアイツ10歳くらいだよ!」


 カイルとロイが言い合っていると、ゼノマは確信した様に呟いた。


「いや、いい手かもしれない。ミコトは明らかに大人に怯えていた。ロイならば…」


「あの、俺も大人なんですけど…」


「実力を見てやるって言って、模擬戦でもすればいいんじゃないか? 剣を交えれば仲良くなれるだろう!」


 アレンは、名案みたいな顔をして模擬戦の提案をしてくる。


「模擬戦!? 嫌ですよ! ミコトに怪我させたら、俺が聖女に睨み殺されるじゃないですか!」


「そこは上手く怪我させない様に勝ってだな、稽古をつけてやるって言って、話を聞き出せ。そうだ、リントも使え。アイツも別方向にバカだが、お前よりは役に立つだろう」


 カイルも名案みたいな顔をして稽古の話を出してくる。


「アイツもバカってどういう意味…」


「よし、明日早速模擬戦を行おう。そして稽古をとりあえず1週間、その後ロイとリントで報告をしてもらう」


 アレンは綺麗に締めようとする。


 誰もロイの話はきいてくれない。

 

 ロイはガックリと肩を落とした。

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