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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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59.ミコトの傷

 女性たちの、きゃあきゃあとした話で盛り上がる1階のリビングから、リントとコランは目で合図をして、庭に出た。


 庭は先程チェックしたが、あの場には何とも居づらかった。


「はぁ、すごいですね、女性が集まると…」

 

 コランは溜息混じりに言う。

 リントも大いに同意して頷く。


「本当ですよ。庭師も管理人も女性でしたし、明日もこんな感じですかね」


 コランはうーんと考える仕草をした。


「料理人や菓子職人や庭師の女性って、珍しいですよね。わざわざどうして…」

「それは、ミコトちゃんが、男を怖いと思っているからでーす!」


 リントとコランの間に、突然キダンは顔を出した。


「キ、キダン! お前また気配消してっ!」


 コランはかなり驚いた様子で叫ぶ。


 実はリントもかなり驚いたが、反応するとキダンの思う壺なので、黙っていた。


「なんでお前がいるんだよ!」


 コランの問いに、キダンはにっこり笑った。


「ロイ君からさぁ、明日は第2の方を探って欲しいって言われたから、下見?」


「団長が? なら、仕方ないけど、余計な事するなよ?」


 コランはキダンを睨む。

 キダンはニヤッと笑って、コランに抱きついた。


「余計な事ってぇ、具体的には? ベッドに何か仕込んでおくとか?」


「離れろ! 気色悪い! 余計すぎるだろっ!」


 2人の仲が良い? のはどうでもいい。

 リントは咳払いをした。


「ミコトが男を怖いと思っているって、そんな感じはしないですけど?」


 キダンとコランはピタリと止まって、リントを見る。


「ミコトは男よりも強いぞ。悪いが、キダンじゃ相手にならないぞ」


 コランもリントに同意して補足した。


 キダンは溜息をつくと、声を落とした。


「ミコトちゃんは、攫われた時の恐怖が強く残ってるんだよ。騎士団では、ロイ君が過保護に抱っこしてるから分かりにくいけどね」


 リントとコランは顔を見合わせた。

 

 確かにロイは団員が赤面するほどミコトを抱っこしている。

 騎士団長室に人が多い時は尚更だ。


「ロイ君も何も言わないからなー。でも護衛なら知っておいた方がいいよ? 特に体の大きな男が無理みたいだから…」


 キダンはリントとコランを順番に見て、クスッと笑った。


「2人は小さめだから、平気かもね?」


 リントとコランの何かがブチッと切れる。


「俺らは標準なの! 小さくはない!」


 コランはキダンの髪の毛を掴んで引っ張る。


「いたっ! コランやめて! ハゲる!」


 リントは深く息を吸って、怒りをおさめる。


 どうにも信じられない。


 ミコトとは、襲撃後もロイの不在時に騎士団長室で二人きりで仕事をしている。


 もちろん、不用意に体に触れたりはしないが、特段変わった様子はなかった。


 リントが部屋へ戻ろうとすると、キダンはリントの肩を掴んだ。


「試すとか、やめた方がいいよ? 僕はあんなミコトちゃんはもう見たくないし」


 リントはキダンを睨んだ。


「悪いけど、ミコトとは付き合いが長いんです。ロイさんよりもね」


 キダンもリントを睨み返す。


「じゃあ、ハッキリ言おうか? あの時のミコトちゃんは眠剤を嗅がされていたけど、驚くほどの精神力で攫われた後もずっと起きていた。ずっと男たちの話を聞いていたんだよ。自分がどう犯されるかの話をね!」


 リントとコランは愕然とする。


「怖くて怖くて、そんな目に遭う前に死ぬつもりだったってロイ君に泣きついていたよ。まあ、ロイ君に話せたのは大きかったみたいで、そこからは大分安定してるけどね」


 リントは奥歯を噛み締めた。

 あの時、ミコトが無理をしたのは、死ぬつもりだったからか…!

 奥歯のギリギリという音が、リントの耳に響く。


「分かっていると思うけど、リント君はロイ君とミコトちゃんに信頼されている。実際、ミコトちゃんはリント君なら二人きりでも平気だ。だからこそ試すのはやめて欲しい。リント君を怖いと思った時、傷つくのはミコトちゃんの方だから」


 リントは大きく息を吸って、ハァーと吐いた。


「分かりました。試したりはしません」


 見ると、キダンはホッとした表情をしている。

 ミコトを心配しているのは本当の様だ。


「元々、俺もコランさんも、ミコトに触れる様な距離感ではありません。これからも同じ様に接します」


 リントはコランを見る。

 コランは大きく頷いた。


「団長は、考えて、その、ミコトを膝に乗せたりしていたんですね…。ちょっと、打ち合わせ中に何なんだとか思ってしまって、申し訳なかったです…」


 コランは下を向いて言った。


 実は、明日のお見舞いの護衛の打ち合わせを昨日した時に、椅子は足りていたのに、ロイはずっとミコトを膝に乗せていたのだ。


 リントとキダンは首を捻った。


「昨日の話ですよね? 多分、乗せたかっただけですよ」


「僕もそう思うー。抱っこしたいだけだよ、ロイ君は」


 それじゃあ今までの話は何だったんだ!? とコランは頭を抱えた。


 コランがロイを理解するのは、難しい様である。

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