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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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50/98

50.代表室にて

 政務棟の代表室にアレンとロイとミコトはいた。


「遅かったな、ロイ。午前中に来いって言ったろう?」


 アレンはそう言うと、代表室にある応接セットの黒いソファに腰掛けるよう促した。


「すみません。さっき思い出したんです」


 どうして素直に言っちゃうのだろう。


「お前の頭、忘れすぎなんだよ!」


 アレンは案の定怒りながらソファに座る。


 ロイもソファに座り、ミコトを膝に乗せた。

 

 アレンの前でも、膝なのか。


「ロイ、あの、隣に座りたいです」


 ロイは首を横に振る。


「ミコトは怪我してる事を忘れて立ち上がるから、ダメです」


 そうだけど。


 ミコトはチラッとアレンを見た。

 アレンなら、ロイを説得してくれるかもしれない。


 アレンは溜息をついた。


「キダンから聞いた通りなんだな。お前がミコトから離れないって。まぁいいわ。呼び出したのはな…」


 普通に話が始まってしまった。


「前回の襲撃の件で、第3から賠償金が入ってきてな、騎士団からも請求をして欲しいから、近日中に書類を…」


 おお! タイムリー!


「書類、あります!」


 ミコトは立ち上がろうとして、ロイに抑えられる。


「…すみません、立ちません」


 ロイは頷くと、カバンから書類を出して、応接セットのローテーブルに置いた。


 3週間前の襲撃に対する騎士団からの賠償金請求と、ミコトからの賠償金請求、診断書、ついでに一昨日の襲撃分も3枚、ここで出す必要はなかったが、国家特別人物の妻の金貨30枚の申請書を前月分と今月分の2枚だ。

 アレンはそれを1枚ずつ確認をして、驚いた顔をした。


「こんな、いつ作成したんだよ…」


「ミコトが、さっき作成しました」


 ロイの回答に、アレンは「は?」と言った。


「いや、まあ、そうか。えーと、つまり、ミコトは賠償金で騎士団から護衛を雇うってことだな」


 さすがアレンである。

 察しが良い。


「はい。国家特別人物の妻の支給分も全部護衛に充てたいんです」


 ミコトは申請書を指差した。


 アレンは腕を組んで、ソファにもたれた。


「いいのか? 他国の国家特別人物の妻は、服やアクセサリーやメイクに使って、自分を着飾ってるんだぞ?」


 そうなのか。


 ミコトはキョトンとした後、ハッとなった。


 いや、そうなんだ!

 国家特別人物の妻は美人限定だった!

 この金貨30枚は、美人でいるための資金だったのだ。


 今回、ウミノとネルにヘアメイクをしてもらって分かったが、綺麗はある程度作れるものである。


 このままだと、ロイに恥をかかせてしまう!?


「そ、それは、自分のお給料で、精一杯頑張りたいと…」


 ミコトはしどろもどろに答える。


 でも世の中の女性は、みんなそうやって努力しているのだ。


 働いて、綺麗になる!


「いっぱい働いて、善処します!」


 ミコトの宣言に、アレンとロイは首を傾げながらも、頷いた。


 アレンはゴホンと咳払いをすると、ロイに合図した。


 どうやら、内緒の話のようだ。


「私、ここで待ってます」


「立ったらダメだよ」


 ロイはミコトを静かに膝の上からソファに下ろす。


 アレンとロイは、代表室の中にあるドアを開けて入っていった。


 代表室には、続きの部屋があるようだ。


 ミコトは、ハァと息をついた。


 窓の外を見ると、日が傾きかけている。

 

 書類を作成するのに、結構時間がかかってしまった。




「何なんだ、ミコトは! あの書類の量と質なら、政務棟の事務官でも3日はかかるぞ!」


 代表室の続きの部屋に入るなり、アレンは言った。


 続きの部屋は簡易的な会議室で、4人用の机と椅子が置いてある。


「そうなんですか? 俺だったら、一生かかっても出来ないです」


 ロイは、椅子に腰掛けながら言う。


「お前はな!」


 アレンはロイを睨むと、椅子に腰掛けた。


「はあ、キダンが執着する意味が分かったよ…」


 アレンは溜息混じりに言う。


「キダンさん、ミコトを臨時諜報員にしたいみたいですね」


 ロイは苦笑した。


「いや、もう、キダンはいいんだよ。放っておこう。第2だよ! 第2のリオの奥様がな、ミコトに会いたいんだってさ!」


 アレンはそう言うと、第2からの手紙をロイに差し出した。


「罠ですね」


 ロイは手紙を読むこともなく言う。


 アレンは頷いた。


「とりあえず、怪我があるからな。それで引き伸ばそうとは思っている。だが、会わない訳にはいかない。こっちが警戒していることを、悟られたくない」


「もう、やっちゃいましょうか」


 ロイはあっさり言い、アレンは青ざめた。


「ホント、それだけは、やめて…」


「俺、許せないんです。ミコトはあの襲撃で、死ぬ覚悟までしていたんですよ? 国家間の関係を保つ必要あるんですか? ミコトを殺して俺を殺したら、攻め入って来るんじゃないですか?」


 ロイの冷たい目に、アレンは頭を抱えた。


「キダンはそう言ったのかもしれないが、攻め入っては来ないんだ。リオは戦争をしたい訳じゃないんだ」


 ロイもそれは分かっている。


 1ヶ月、リオに張り付いていたのだ。

 戦争準備をしていないことくらい理解している。


「リオは聖女の召喚される国が、欲しいんだよ。驚くほど執着しているんだ」


「じゃあ、国を交換しましょうか」


 ロイの交換という言葉に、アレンは「そうじゃない!」と言った。


「キダンから少しは聞いたんだろう? アリアン家なんだよ。全ては、300年前に残されたお前の家系なんだ!」


 ロイは呆然とした。


 何を言われているのか、全く分からなかった。

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