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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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45/87

45.臨時員制度

 結婚式から一夜明け、ロイは通常通り、騎士団に出勤していた。


 昨晩は尋問の後、アレンとキダンと話し込んでしまった。


 結局ロイは、キダンの闇組織調査にも協力する事にした。


 ケイというリオの側近の男の件で、第2を糾弾出来ないかという話もしたが、ケイは実質、第3の人物ということになっているらしく、ケイの名前を出しても、リオには逃げられる可能性が大きいとのことだった。


 本当に抜け目のないヤツである。


 とりあえずは、ミコトが斬った襲撃犯2人の回復を待つ事になり、第2の動きは、キダンの部下が逐一教えてくれる事になった。




「ロイさん、ロイさんってば!」


 顔を上げると、リントがいつのまにか騎士団長室に入って来ている。


「さすがに疲れてますか?」


 心配そうなリントに、ロイは笑った。


「疲れてはいないけど、考える事が多くて」


 リントも笑って「ですね」と言った。


 騎士団は、ニアとソル、第2小隊が全員負傷だ。


 ミコトの護衛もまだ続けなくてはいけない。


 はっきり言って、人手不足である。


「ミコト、騎士団に来れませんか? 事務仕事だけでもやって欲しいし、ロイさんがいれば護衛要らないから、その方が効率がいいので」


 確かに、書類が積み上がっている。

 リントの提案に、ロイは頷いた。


「今日様子を見に行くから、その事を言ってみるよ」


「お願いします」


 リントは騎士団長室を出ていこうとするので、ロイは「待った!」と引き留めた。


「あのさ、臨時員制度って、何?」


 リントは呆れた顔をする。


「何で知らないんですか? 養成所卒所してますよね?」


 昨夜、アレンとキダンは、臨時員制度について教えてくれなかったのだ。


 おそらく自分で調べろとでも言いたいのだろう。


「卒所はしているけど、いろいろ覚えてないんだよ」


 ロイにすがるような目を向けられて、リントは溜息をついた。


「公的な職務に就いていても、もう一つ公的に副業が出来る制度ですよ。多方面に才がある人を有効に使おうという……あ、分かってませんよね?」


 ロイは真顔で頷いた。


「えーと、騎士団でいったら、シーマさんですね。騎士団員ですけど、医師団の臨時団員です」


「そうなんだ!」


 団長なのに、何故知らないのか。


 リントは呆れながらも続けた。


「あと、コランさんも、隣町の臨時自警団員ですね。名前だけみたいですが」


 ロイはふんふんと頷く。


「ミコトは騎士団では珍しい例で、臨時団員だけをやっています。臨時団員だけの場合、3つまで掛け持ち出来ますね。例えば、宿屋の掃除係と臨時騎士団員と臨時諜報員とか。まあ、あり得ない例ですけど」


 ロイは右手を上げた。


「何でミコトは臨時団員なの?」


 リントはうーんと腕を組んだ。


「女性の騎士団員が初めてで、採用枠がなかったんですよ。法律を変えるのが難しかったので、臨時員制度で採用したんです。ちょっとその頃には、ミコトに仕事を振っていたので…」


 ロイは驚いた。


「ミコトは養成所にいた頃から、仕事してたの?」


 リントは少し罰が悪そうにする。


「ロイさんが北の大地に行った後、やたら稽古してほしいって付きまとってきたので、面倒になって、養成所に放り込んだんですよ。ロイさんの妹だから、いじめるなって言って。そしたら、養成所の男たちを全員やっつけて、座学もトップで、俺にまた付きまとってきたんです」


「え、すご…」


「俺、ロイさんのせいで副団長代理で忙しかったんで、適当に断ってたら、俺の仕事を手伝ったら相手してもらえると思ったみたいで、養成所終わったら、仕事の手伝いにきて、を繰り返したら、いつの間にかって感じですね…」


 ロイは呆然とした。


「なんか、リント、冷たいね」


「そっちですか? 5年帰って来なかった人に言われたくないですよ」


 リントはロイを睨んだ。


「ミコトは、ずっと、ロイさんの帰りを待ってましたよ。強くなって、褒めてもらうんだって言って、誰よりも努力していました。報われたなら、良かったですよ」


 リントの言葉に、ロイは「うん」と言って下を向いた。


「臨時員制度が分かったのなら、もう行きますね」

「待った!」


 ロイは出ていこうとするリントを再び引き留めた。


「今度は何が分からないんですか!」


 ロイは深緑の結び紐を出した。


「髪の結び方が分からない!」


「切って下さい! 結べないなら!」


「そういう訳にもいかなくて!」


 リントは腰に帯剣していたナイフを出す。


「切ってあげます」

「いや、ホント、やめて…」


 2人が言い合っていると、コンコンとドアがノックされた。


「シーマです」


「どうぞ」


 ロイが答えると、リントはナイフを腰に戻した。


 シーマはドアを開けて2人を見る。


「打ち合わせ中でしたか?」

「いいえ、全く」


 リントはズバッと答える。


 シーマは微笑んで、杖を2本差し出した。


「団長、ミコトさんのところに行かれるって言ってたので、補助杖を渡してもらってもいいですか?」


「ああ、はい。ありがとうございます」


 ロイは補助杖を受け取って、シーマをじっと見た。


「あの、シーマさん、髪結べますか?」


 シーマは「ああ!」と表情を明るくした。


「ミコトさん、喜んでましたからね。紐ありますか?」


 シーマは結び紐を受け取ると、器用にロイの後ろ髪を結ぶ。


「このタイプの結び紐は、自分で結ぶのは難しいですよね。ミコトさんにやってもらうといいですよ。ご夫婦ですし」


「そっか。そうすればいいんですね」


 ロイは照れ笑いをした。


 シーマは騎士団長室を出ていき、リントは呆れたようにロイを見た。


「そう言ってくれれば、切らないですよ!」


 リントの言葉にロイは少し驚いた。


「そうなんだ?」


「言っておきますが、騎士団員は殆どミコトの味方ですよ? 襲撃されても一途に団長を思っているのに、放っておかれる天涯孤独の少女って感じでね。俺はそこまでは思ってないですけど、ミコトとの信頼関係は必須ですよ」


 そう言うと、リントは今度こそ騎士団長室を出て行った。


「なんか、ミコト、すごいなぁ…」


 ロイは天井を見上げて呟いた。

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