44.キスマーク
ロイがアレンに呼ばれて、国立宿泊所の初夜の部屋を出ていって約1時間後、セイラとマリーの2人は、ミコトのもとに来てくれた。
「ミコちゃん! 大丈夫!?」
セイラは部屋に入ってくるなり、ブランケットにくるまれたミコトを抱きしめた。
ミコトもセイラを抱きしめる。
「大丈夫だよ。セイラ、今日はいっぱいありがとう」
セイラは首を横に振る。
「ミコちゃんが怪我したって聞いて、もう本当に、全部アイツのせいだよね!」
ミコトは笑った。
セイラの中では、全部ロイのせいなのだ。
「ミコト、本当に大丈夫? 足も、縫ったのでしょう?」
マリーの表情も心配の色が濃い。
「幸い、眠っている間に縫ってくれたから、大丈夫だよ。あ、あのさ、マリー、私の着替えないかな?」
ミコトはセイラを抱きしめながらきいた。
この部屋のどこにも、ミコトの着替えがないのである。
どうやって、外に出ろというのだろう。
「持ってきたわよ。本当は明朝、介添の方が用意してくれることになっていたんだけど、それはさっき話をつけておいたから」
マリーは持ってきた荷物から、ミコトの服を取り出して、ミコトに見せた。
「そんな流れだったんだね…」
この夜着で一晩中とは、初夜恐るべしである。
「ミコちゃん、まさか、何も着てないの?」
セイラはミコトから離れて、ミコトを凝視する。
「ま、まさか! 着てるよ? でも、ちょっと、アレな服なんだよ!」
ミコトが慌てる様子を見て、セイラはニヤリと笑った。
「えー、見たいなぁ。スケスケ? 下着?」
「そこまでじゃないよ!」
ミコトとセイラが言い合っている様子を見て、マリーはふふっと笑った。
「初夜の夜着だから、恥ずかしいわよね。もう着替える?」
さすがマリーだ。
ミコトはウンウンと頷く。
「隙ありっ!」
セイラは叫ぶと同時にミコトのブランケットを奪った。
「やだ! ちょっと! セイラ!」
セイラとマリーは、夜着のミコトを見て呆然とした。
実際、ミコトの夜着は、胸の開きは広いが、透けてもいないし、スリットは深めだが、ミニ丈でもないし、そこまでではない。
ところが、セイラは突然、うわーっと泣き出した。
「ミコちゃんが、アイツに、汚されたー!」
「え、え? どういうこと? セイラ?」
マリーはコホンと咳払いをして、荷物から手鏡を出した。
「私たちが呼び出されたから、てっきり、ロイはここには来ていないのかと思ったけど、そうじゃなかったのね」
ミコトはマリーから手鏡を受け取って自分を映した。
首筋と胸元に7〜8個、アザがついている。
「…? 何コレ、こんなのなかった気が…」
ミコトが首を傾げると、セイラは愕然とした。
「何でミコちゃんは、キスマークも知らないの? アイツが、つけたんでしょう!? そこに! しかもいっぱい!」
確かに、ロイは首筋や胸元にキスをしていた。
それが、このアザ?
「痛くなかったのに、こんなにアザになるの?」
「ミコちゃん、そのボケいらない!」
セイラはミコトの腕を掴むと、腕をちゅうっと吸った。
「ハイ! キスマーク!」
セイラは吸ったところをミコトに見せる。
首筋ほどではないが、アザになっている。
「おお!」
「おお! じゃないっ!」
「まあまあ」
マリーは、ミコトとセイラの間に入った。
「気持ちが通じたのよね。良かったじゃない」
そうだった。
ロイも、ミコトを好きだと言ってくれた。
ミコトは頷いた。
「それにしたって、数が多い! しかも服で隠れない位置だよ!」
セイラは1、2、3と数を数え始めた。
「8つ!」
マリーも顔を赤らめて苦笑する。
「ちょっと、執着を感じるわね。ロイって、こんな風にするのね」
ミコトはだんだん恥ずかしくなってきた。
このアザのせいで、いろいろ他人にバレてしまうのだ。
「明日には、消えるよね?」
尋ねたミコトに、セイラとマリーは呆れた表情をした。
「結構、消えないよ?」
「1週間くらいは消えないと思うわ」
それもう、キスじゃなくて、怪我なのでは…?
「これ、誰が見ても、その、分かるやつなの?」
2人は同時に頷いた。
ミコトはベッドに倒れ込んだ。
「やっぱり、ロイはロイだった! 外出られないよ!」




