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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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42/80

42.キダンの過去

 ロイとアレンは、国立宿泊所の薄暗い廊下を並んで歩いていた。


 アレンはロイの腕を引っ張ると、一つの部屋に入るよう促した。

 ロイは部屋に入り、アレンはドアを閉める。


「あれ、尋問室に行くんじゃ…」

「お前、かんっぜんに、手ぇ出してるじゃん!」


 ロイの言葉を遮って、アレンはロイの胸ぐらを掴んだ。


 ロイはハッとなった。


「完全じゃないですよ。アレンさんが邪魔したから…」

「邪魔してなかったら、何なんだー!」


 アレンは掴んだ胸ぐらをグラグラ揺らす。


「俺言ったよな? 手を出すなって! 今まで通り過ごせって!」


 揺らされながら、ロイは考えた。


「あ! 忘れてました!」


「お前の頭の中、どうなってるの? 何で全部忘れちゃうの?」


 アレンは今度はロイの頭を両手で掴んでグラグラ揺らした。


 頭を揺らされると、話しにくい。

 

 ロイはとりあえず、されるがままに黙っていた。




「はぁ、悪かったよ…」


 しばらくして、アレンはポツリと謝った。


「大丈夫です。ちょっと髪がボサボサになっただけなので」


「そこじゃない。そこは、悪いと思っていない」


 アレンは呆れた表情でロイを見た。


「ミコトを婚約者役にした事だよ。あれさえなければ、この結婚もなかっただろうし…」


 ロイは少し落ち込んでいるアレンを見て笑った。


「アレンさんのせいじゃないですよ。あの事がなくても、俺はミコトを選んでました」


 アレンは顔を上げる。


「いつからだよ。まさか5年前からとか言うなよ」


 ロイは苦笑した。

 5年前はミコトを男だと思っていたのだ。


「第1に戻ってきた日、ミコトがカイルさんと俺の迎えにきていたんですよ。その時はミコトと思わなくて、女の子がいるなぁって。この子だなって」


 アレンは顔をしかめた。


「女の子ってだけで、この子だとか、お前どんだけ飢えてたんだよ…」


「飢えてないですよ。勘です!」


 ロイは当たり前のように言った。


 アレンはロイの勘が鋭い事を知っている。

 というか、勘しかないのだが。


「兄弟そろって、そんな辛い恋愛しなくても…」


 アレンは頭を抱えた。


 セタの事は、未だ記憶に生々しく残っている。


「キダンさんから、聞いたんですよね? 俺はミコトを守ります。とりあえずはそれだけです」


 ロイはキッパリとアレンに言う。


 アレンは溜息をついた。


「そうだ。そのキダンの事だった。尋問室に行く前に、ちょっと、我が家の恥を話さなくちゃならないんだが…」


「大丈夫ですよ。俺、すぐ忘れるので」


 ロイは自虐的に笑った。


 アレンは苦笑すると、部屋にある椅子に腰掛けた。

 ロイもテーブルをはさんで向かい側に腰掛ける。

 

 今更だが、この部屋はアレンが今日使用する部屋のようだ。


「キダンは、簡単に言うと、クズなんだよ」


「はあ…」


 アレンのクズという言葉に、ロイは曖昧に返事した。

 肯定していいかわからない。


「騎士養成所を卒所した後、騎士団には入らず、諜報部門に入ったんだが、そこで知り得た情報で、人妻に手を出した」


 なるほど、クズかもしれない、とロイは頷く。


 アレンは話を続ける。


「人妻が産んだ子どもは、髪の色も瞳の色もキダンにそっくりだった。それが、マリーだよ」


「ああ、似てますよね」


 ロイはマリーを思い出した。


 ロイから見ても、マリーは美人だ。

 きっと人妻も美人だったのだろう。


「キダンは半ば強引に人妻を別れさせ、結婚した。だが強引さは軋轢しか生まない。元旦那はある闇組織にキダンの暗殺を依頼した」


 アレンは深い溜息をついた。


「キダンは無駄に優秀だから、すぐにその企みに気付いて、のらりくらりとかわしていた様だ。腹を立てたのが、闇組織の方だ。目標をキダンではなく、妻に変更したのさ。というか、元々その闇組織は、美人と見ると攫って、強姦して殺すという犯罪を繰り返していた。足がつかなかったのは、闇組織全員がかなりの手練だったからだ」


 気分の悪い内容だ。

 察しの悪いロイでも続きが分かる。


「マリーの母親は、攫われて、そいつらに、殺されてしまった。その前に、すでにキダンとは別れていたんだが、もう、依頼もクソもなくなっていたんだろう」


 ロイは拳を強く握った。


「キダンはずっとその闇組織を追っていた。でも犯行を繰り返しては、そいつらは身を隠す。この20年近く、有力な情報が掴めなかった。だが、今回ミコトを襲撃した連中が、闇組織の一員だったのではないかとキダンは思ったんだろう…」


 ロイは勢いよく席を立った。


 椅子が後ろにガタンと倒れる。


「12人もいた騎士団員を6人で倒している。しかも、わざと、殺してはいない。闇組織は、何故か無駄な殺しはしないんだ。そして、ハリーや介添の女性の証言によると、ミコトを…。いくらミコトが強いとはいえ、ロイが助けに行かなかったら…」

「もう、もういいです。よく分かりました。尋問室に行きましょう」


 ロイはドアの方へ向かう。


「ロイ! マリーはこの話を知らないんだ。母親は離婚後病気で亡くなったことになっている。だから…」


 ロイは頷いた。


「言いません。忘れられないかもしれませんが…」


 ロイとアレンは部屋を出て、尋問室へ向かった。

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