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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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34.お金持ちの妻

 ミコト、セイラ、マリーは、騎士団内の応接室で、政務棟で行われた会議に出席していたリントから話を聞いていた。


「という訳で、先日の襲撃は、間違いなく、第3の国家特別人物とその妻の差し金だということだよ。第1からは、抗議文を送り、賠償金を請求するってさ」


「はぁ!? 賠償金だけ? ミコちゃんは襲われたんだよ? 死刑に決まってるじゃん!」


 セイラは応接室のローテーブルをバンバンと叩く。


「セイラ、気持ちは分かるけどね」

 マリーはセイラをなだめる。

 

 リントはハァと息を吐いた。


「確かに軽いと俺も思ったよ。でも、相手は国家特別人物だから、むやみに手が出せないらしい」


「国家特別人物の妻!」

 セイラはミコトを指差して叫んだ。

 

 セイラの中で、こういう時は、ロイの妻でいいようだ。


「まだ結婚式を執り行っていないから、他国から見ると、婚約者という位置付けなんだってさ。第1では、ロイさんとミコトは書類上すでに夫婦なんだけど、神に誓ってないからとか何とか……」

 リントは面倒くさそうに答える。


 つまり、結婚式までは、襲撃されるという事だろうか。

 ミコトは溜息をついた。


「あの2人、一発殴っておけば良かった……」

「ミコト、声に出てるわ。今は護衛対象でしょう?」


 マリーは人差し指を立てて、ミコトの唇に当てる。

 その姿が色っぽくて、ミコトは顔を赤くして頷いた。


「ねえリント、お願いがあるんだけどね」

  マリーは、その色っぽさのまま、リントの方に向き直る。


 これは、リントに断れる訳がないヤツだ。


「な、なに?」

 リントの顔が赤い。


 ミコトとセイラは身を乗り出した。


「騎士団員の皆様にはお世話になるし、聖女と私を、ミコトから、騎士団員全員に紹介して欲しいのよ。1人づつ、ちゃんとご挨拶したいわ」


 リントは目を見開いた。


「いや、そんな必要ないよ。挨拶なんかしなくても、護衛はするから」


 マリーはさらにリントに近づいた。


「リントの手は煩わせないわ。ミコトから、紹介してもらうから」

 マリーはミコトからを強調する。


「だ、だめだよ。マリーは絶対だめ。騎士団員と話して欲しくない」


「私はいいんだ?」

 セイラは呆れたように言う。


 リントは仕事できるし、冷静な判断もするくせに、マリーのことになると、ダメなんだよね。


 でも、セイラを紹介するついでに、みんなと雑談できるかもしれない。

 感謝も伝えられるかもしれない。


「はい! 私、セイラだけをみんなに紹介します!」

「私だけミコちゃんに紹介されます!」


 ミコトとセイラは元気に手を挙げる。

 リントはミコトとセイラを見て、溜息をついた。


「聖女だけなら、俺は別にいいよ。騎士団内でも護衛は付けてやってね。皆には挨拶に来る事は言っておくよ」


「残念だわ。2人とも頑張ってね?」

 マリーはニッコリ笑った。


 マリー、元々自分は挨拶する気はなかったんだろうなぁ。


「これで、団員をじっくり観察できるよ! ミコちゃん、私に任せてね!」


 セイラの目的はミコトとは違うようだ。


 ミコトは、「みんなに感謝を伝える作戦」と心の中で名付けて気合を入れた。





 次の日、「みんなに感謝を伝える作戦」の決行のため、ミコトは何故か水色のロングワンピースに着替えさせられた。


「マリー、何でこんなおしゃれする必要があるの?」


 マリーはミコトにメイクをしながら微笑んだ。


「実は授業の一環にしていただいたの。女性らしく振る舞う特訓だから、午後の講義はこの挨拶まわりということよ」


 さすがマリー、抜け目がない。

 それなら、ゆっくり挨拶できる。


「このワンピース、初めて見るけど、マリーが買ってきてくれたの? いくらだった?」

「ミコトの国家特別人物の配偶者手当で購入したから大丈夫よ」


 マリーはミコトの髪をとかしながら、サラッと言った。


「配偶者手当? そんなのあるの?」

「講義でまだやっていない? 国家特別人物の配偶者手当は月に金貨30枚よ。昨日リントが書類上夫婦だと言っていたから、もう手当が付いていると思って今朝申請したのよ」


 ミコトは思い切りマリーの方に振り向いた。


「金貨30枚!?」

「ミコト、髪がからまるわ」


 マリーはミコトの頭をぐいっと前に向ける。


「ミコちゃん、玉の輿じゃん!」

 祈祷服に着替えたセイラはニヤニヤ笑う。


 ロイの妻というだけで、30万円も貰えるのか。

 偽装結婚なのに、いいのだろうか。


 ミコトが呆然としていると、マリーは付け加えた。


「ちなみに、国家特別人物は、功績にもよるけど、月に金貨50〜200枚は貰えるのよ。ロイは騎士団長の収入もあるし、北の大地の魔物討伐数もかなり多かったから、この国で一番お金持ちかもしれないわね」


 セイラはミコトの肩ををバンと叩いた。


「イケメン以外にも、いいところあったね! お金持ちだって!」


 ミコトはその場にへたりこんだ。


「ロイなんて、書類とか全然、本当に全然なのに……。殆ど私がやってるのに……。これが格差社会ってやつなの?」


 マリーはクスクスと笑った。


「やっぱり張り合っちゃうのね。ミコトはお金持ちの奥様なのよ?」

「偽装結婚だし、ロイのお金はロイのだよ。妻の金貨30枚も申請式ってことは、事前に申請して、領収書提出ってやつでしょ? 騎士団の経費もそうだもん」


 ミコトが真面目に答えるので、セイラとマリーは苦笑いした。


「ミコちゃん、現実的すぎる……」

「もうちょっと夢を見てもバチは当たらないと思うわよ?」


 そう言うと、マリーはミコトの腰にロイから貰った短剣を装着した。


「この短剣も夢が全くなかったから、無理だよ……」


 ロイが今、どこで何の仕事をしているかもわからない。

 そもそも何も聞いていない。

 これでこの結婚に夢を見られる女の子がいたら、お会いしたいものである。





 挨拶まわりの護衛は、ニアとソルだ。


「こちら、聖女のセイラです。セイラ、ニアとソルです」

 

 ニアとソル、セイラはお互いペコリと頭を下げる。


「この度はお忙しいところ護衛をしていただきありがとうございます」

 セイラは聖女の微笑みで、聖女っぽい事を言う。


 ニアとソルは顔を赤くする。


「あれ? そんな感じでやるの?」

 ミコトはセイラを見て驚く。


「どんな感じでやればいいの?」

 セイラは首を傾げる。


 よく考えたら、セイラはミコトよりコミュ障だった。

 ここは、ニアとソルも巻き込もう。

 ミコトとセイラとニアとソルは、一旦応接室で打ち合わせをすることになった。





「と、いうのが今回の目的なんだけど、かしこまらない方がいいかなぁ」

 ミコトが言うと、セイラは頬を膨らませた。

「私の目的と違うんだけど?」


 ニアとソルは吹き出した。


「なんか、聖女って思ってたのと違うな」

「ああ。でも、ミコトもその、感謝を伝える? ってわざわざやる必要あるのか?」


 ソルは不思議そうな顔をしている。


「うん。自己満足かもしれないんだけど、私に一番足りない気がして」


 ニアはうーんと考える。


「俺は同期だし、かしこまらない方がいいけど、騎士団員は殆ど先輩だしなぁ」


 ソルは「でも」と言う。


「ミコトは団長にも副団長にもタメ口だから、先輩も後輩もないんじゃないの?」

「あー、ミコちゃん、偉そうな感じなんだ?」


 ミコトはショックを受けた。

 まさかの、コミュニケーション不足に偉そうもあったとは……。


「前から思ってたけど、あの2人にタメ口って度胸あるよなぁ。強さが滲み出てるから、俺はしゃべるのも緊張するよ」


 ニアが言うと、ソルも「そうそう」と頷く。


「リントなんて、マリーバカだし、アイツ、えーと団長? は本当のバカじゃん」


 セイラの暴言に、ニアとソルは凍りついた。


「セ、セイラ、言い過ぎだから。ごめんね、聖女は口悪いんだよ」


 これは、ミコトもセイラも、態度を改める必要がある。


「決めた! 私もセイラも女性らしく、かつ、年上を敬う感じでいこう!」

「ミコちゃんがそう言うのなら、やるけどさぁ」


 ニアとソルは笑い出す。


「なんか、2人、よく似てるな?」

「俺もそう思った。姉妹みたいだよ」


 なんと、ここにきて、初めてセイラと似ていると言われた!


「ほ、本当に? セイラ、似てるって、私たち、似てるんだって!」


 ミコトはセイラを見つめた。

 ハニーブロンドにアッシュグリーンの大きな瞳。

 今まで従姉妹なのに似ていないとしか言われなかった。


「ミコちゃん、私と似てると嬉しいの?」

「うん、嬉しい! ニア、ソル、ありがとう!」


 ミコトはセイラを抱きしめた。


 2人はそこまで? という顔をしているが、ミコトにとっては、そこまでのことだった。

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