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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケ転移、狙われ少女の自立と結婚〜  作者: 三多来定


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23.初恋と能力

 ミコトが目を覚ますと、いつもの聖女の部屋のいつものベッドの上だった。


 辺りはまだ暗く、ただ、窓辺にセイラが座って外を見ているのが目に映った。


 月明かりなのだろうか。


 セイラのハニーブロンドの髪がキラキラと光っている。


「セイラ、綺麗…」


 ミコトが呟くと、セイラは振り向いた。


「ミコちゃん、起きた?」


「うん。今何時?」


「多分、朝の4時くらい、かな」


 いつもだったら近づいてくるセイラが、ミコトの側に来ない。


「セイラ、寝てないの?」


 途端に、セイラの表情が曇る。


「アイツの匂いが強すぎて、寝らんないよ!」


 ミコトはしばらく考えて、昨日帰ってきた記憶がないことに気がついた。


「私、昨日、どうやってここに?」


 セイラは窓辺で足をバタバタさせた。


「爆睡してるミコちゃんを、アイツが背負ってきたの! 荷物とか、お土産とか全部持って!」


 ミコトは頭を抱えて悶えた。


「うぁ、やっちゃったぁ…」


 一昨日の夜も泣いて迷惑をかけたのに、昨晩までとか、こんな妻、ミコトだったら嫌である。


 悶えるミコトを見て、セイラは溜息をついた。


「別にいいじゃん。結婚するんでしょ」


 ミコトはゆっくり顔を上げて、セイラを見た。


「ごめん、セイラは嫌だよね。こんな結婚…」


「嫌だよ! 嫌だけど、マリーから、先に聞いてたから。ミコちゃんを第3の変態から守るためだって」


 セイラは視線を窓の外に戻した。


「ミコちゃんは、初恋が実って嬉しいんじゃないの?」


「初恋?」


 ミコトが聞き返すと、セイラは顔をしかめて振り向いた。


「ミコちゃんはさぁ、10歳の頃から、アイツの事好きだったじゃん! 大体、ミコちゃんは、強くてイケメンってだけで、コロっといっちゃって、ちょろすぎるの!」


 セイラの言葉に、ミコトはショックを受けた。


「わ、私、10歳の時から…?」

「そうだよっ!」

「強くてイケメン…?」

「アイツにそれ以外ないじゃん! ちょっと優しくされたかも? 程度でしょ? それくらいなら、騎士団員の人たちの方がもっと優しくしてるよ、きっと!」


 確かに、騎士団員の皆は、優しい。


 でも、だからって恋に落ちる訳ではない。


 あれ、これって、結局、ロイの見た目と強かった事に、コロッといっただけ…?


「私、ちょろい、かも…?」


 ミコトはベッドの上で、ガックリと手をついた。

 

 恋とは、こんなにちょろい感じなのだろうか。


「私、走ってくる…!」


「ええー!? どういう心理なの? 理解できないよー」


 ミコトは呆れ顔のセイラに宣言して、まだ暗い朝の町を走り出した。


 ちょろい自分と、みんなに迷惑をかける自分、全てを吹き飛ばしたくて、とにかく、無我夢中で走っていた。





 せめて、たくさん仕事をしようと、いつもは8時頃に行く騎士団に、ミコトは7時頃出勤した。


 騎士団長室を開けると、すでにロイが来ていた。


「あれ、ミコト早いね?」


「うっ…」


 どうしてロイの方が早いのか。

 いや、そんなことより、謝礼と謝罪だ。


「ロイ、昨日は寝てしまって、ごめんなさい。部屋まで送ってくれて、ありがとうございました」


 ミコトは頭を深々と下げた。


「いいよ、そんなの。ミコトなら、毎日運べるよ」


 ロイは笑う。


 ちょっと優しく? ではない。

 これなら、誰でもコロッといくと思う。


「ロイ、早いね。ちゃんと休んだ?」

「休んだよ。早いのは、朝一でオッサンのところに行っていて、ほら、コレを朝礼で読めって」


 ロイは折り畳まれた手紙をピラピラとする。


 きっと、今回の事に関する報告なのだろう。

 ロイがちゃんと言えないと思って、アレンが原稿を用意したのだ。


「ミコトにもあるよ。はい」


 ミコトは手紙を受け取り、内容を確認した。


 綺麗な字で、結婚式用のドレスの採寸があるので、今日の9時までに中央政務棟に来いと書いてある。


「ドレスの採寸…」


「俺はこの間の、式典用のでいいんだけど、ミコトのは、一から作るって言ってたよ」


 ミコトはここにきて、結婚自体がとても大きな事だということに、改めて気付かされた。


 ミコトのために、人とお金がたくさん動くのだ。

 

 恋がどうとか、言っている場合ではない。


「わかりました。9時までに、出来るだけ仕事するね」


 ミコトは積んであった書類を事務用の机に移動させ、1枚ずつ内容を確認しはじめた。


「ミコトは真面目だなぁ」


 ロイも仕方なく、ミコトが確認後の書類に目を落とした。




「これで、とりあえず終わりか」


 ロイは最後の1枚を、差し戻し用の箱に入れた。


 1時間程この作業をやっていただろうか。


「じゃあ私、差し戻しの書類を各部門に戻してくるね」


 ミコトが席を立つと、ドアがノックされ、リントが入ってきた。


「リントおはよう。私、書類戻してくるね」


「ああ、よろしく…」


 リントと入れ違いで、ミコトは騎士団長室を出て行った。


「おはよ、リント。話はきいた?」


 ロイはリントの持ってきた新たな書類を受け取りながら尋ねた。


「はい。昨日夕方に、オッサン会議にマリーと俺が呼ばれて、聞きましたよ」


「悪いね。仕事増やしちゃって」


 リントは苦笑した。


「ホントですよ。俺まだ誰にも言ってないんで、朝礼で自分で言って下さいね」


 ロイはアレンにもらった手紙を見せた。


「これを読むだけだから、大丈夫」


「相変わらず、オッサンたちは過保護ですね」


 リントの落ち着いた様子に、ロイは首を傾げた。


「あんまり驚かないんだな」


「え、ああ。まあ、そうなればいいなと思っていたので」


 リントはロイから目を逸らした。


 ミコトの幸せは、マリーの願いだ。

 今回の経緯は軽視できないが、2人が結婚するなら、マリーも安心するだろう。


「え! そうなの?」


 ロイの方が驚いている。


「ロイさんはどうだかわかりませんが、ミコトはロイさんのことが明らかに好きですし、オッサンたちもミコトを孫のように可愛がってるし…」


 ロイを見ると、下を向いて、赤面している。


「何ですか、その反応は。今どの段階ですか? もしかして俺がミコトの気持ちをバラした事になってます? 結婚するのに?」


「あ、いや、ミコト、結婚を嫌がってないから、そうなのかも、くらい?」


 結婚するのに、相手の気持ちの確認をしていないとは…。


 リントはガックリと肩を落とした。


「もう、この話いいです。上司の初々しい反応とか、別に見たくないです」


「相変わらず、厳しい…」


 リントは、壁にかかっているゼンマイ式の時計を見た。

 ミコトにふりたい仕事があったのだが…。


「ミコトを待ってると時間ロスかな…」

「今救護班で止まってるから、何か話でもしてるんじゃないかな。救護班に行った方が早いかもよ」


 リントは独り言のつもりだったのだが、ロイがしっかり返してきた。


「…は?」

「あ!」


 ロイはしまったという顔をする。


「分かるんですか!? ミコトのいる場所が?」


「えーと、分かるような?」


 ロイは目を逸らす。


「まさか、俺のいる場所とかも分かったり…」

「分からない! 分からないから!」


 リントの問いにロイは首を横に振った。


「これは、ホント。他の団員とかも、全然分からないから。セタ兄と母さんだけ、分かったのは!」


 ロイは嘘が下手なので、言っている事は本当なのだろう。


「で、ミコトの場所は分かるんですね?」


 ロイはとても言いにくそうに口を開いた。


「……昨日一緒に買い物行った時に、結構人が多くてさ。ミコトとはぐれたら困るなーと思ってたら、そうなるよね?」


「普通はなりません」


 ロイは頭を抱えた。


「ミコトには、ミコトには言わないで…! 気持ち悪いって言われたら、さすがにツライ!」


「言いませんよ。実際気持ち悪いし」

「ううっ…」


 ロイは机にバタッと突っ伏した。


 リントは昨日の会議でアレンが言っていた事を思い出した。


 20人を一瞬で、倒した…だったか。


 ロイの力が規格外なのは知っていたが、これは規格外で済む問題なのだろうか。

 

 アレンは、同じ事が出来たグレンとセタは、せいぜい2〜3人だと言っていた。


 そして、この、特定の相手の位置が分かる能力。

 範囲までは分からないが、かなり正確に分かっている口ぶりだった。


「今も、救護班にいますか?」

「…はい、います」


 ロイはすっかりしゅんとして、何故か敬語でリントに答える。


「救護班に行ってきます。朝礼、お願いしますね」


 リントはそう言うと、騎士団長室を出た。


 そして、救護班で救護班長のシーマと喋っているミコトに会うことができたのだった。

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