2.異世界?
「それで、ここはどこ……?」
ミコトは再び辺りを見回した。
やっぱり石造りの教会のような場所だ。
そして、ミコトの隣にはパジャマで熟睡のセイラ。
「あの、ここどこですか? なんで私たちここにいるんですか? 誰か説明してくれませんか?」
「説明してしんぜよう!」
ミコトは3人の白ローブの人たちにきいたつもりだったが、意外にも声はかなり上から、いや、頭の中に響いてきたと言った方がいいのか、とにかく白ローブの人たちではないところから聞こえた。
「君たち以外の時間を止めるぞ」
白ローブの人たちの動きと話し声がピタッと止まり、ミコトと依然として寝ているセイラの前に、白い髭をたっぷりと生やしたおじいさんがパッと現れた。
「だ、誰? ……ですか?」
「ワシは君たちの世界でいう神様みたいなもので、この見た目と話し方は君の神様イメージに合わせてみたんじゃ」
おじいさん、いや、神様みたいな人は、ミコトにパチンとウインクをした。
神様なんて、信じていいのだろうかという冷静な考えと、何故かこの人は神様だという確信みたいな気持ちがミコトの中に湧き上がった。
でも、この神様イメージって、なんかサンタクロースの白バージョンみたいだな……。
ミコトは自分の発想の貧困さに少しガッカリした。
「さあ、何でも聞いていいぞ」
神様は意地悪そうにニヤッと笑う。
説明すると言ったのに、質問形式なのか。
「あの、じゃあセイラを起こすので……」
「いや、先程やっと眠れたようだから、起こすのは可哀想じゃ。それにセイラにはここに来る前に説明済みじゃ」
セイラには説明済み?
というか、セイラ、朝方にやっと眠れたんだ。
ミコトの胸がギュッと苦しくなった。
神様に質問形式でわかったこと。
この世界はミコトたちの元いた地球とは全然別の世界だということ。
「エラルダ」という世界の「第1エラルダ」という国であるということ。
第1エラルダでは、魔物の強さを抑えることができる、聖なる力を持ったいわゆる「聖女」を定期的に異世界から召喚するということ。
そして、その「聖女」がセイラだということ!
やっぱり、美少女のセイラは異世界の聖女だったんだ!
ミコトが喜んでいると、神様は「顔の造形は一切関係無いぞ」と呆れたように言った。
「それって、私でもいいんですか?」
「ミコトを聖女にすることもできなくはない。でもある協定により、ミコトには聖女の資格がない」
資格? やっぱり美少女なのでは?
「だから、美少女は関係無い。聖女の資格は、不幸な10〜13歳の女性なんじゃ」
「不幸……」
ミコトの先程までの浮かれた気持ちは、一気に沈んでしまった。
確かにセイラは不幸かもしれない。
でも、パパもママもミコトも、セイラが大好きでセイラを幸せにしようと……
「この場合の不幸というのはな、本人の気持ちとは一切関係ない。しっかりと基準があるのじゃ」
「基準……?」
「両親もしくは片親の死別、または離別。それに加えて、本人に非のない虐待やイジメを受けていることじゃ」
イジメは分かるけど、虐待?
「セイラが受けたイジメは、ミコトも知っている通り、学校での悪口やイタズラじゃ。ミコトも受けておるな」
ミコトは大きく首を縦に振った。
やっぱり、ゴリラブスもイジメだったんだ!
ミコトは神様がわかってくれていた様に思えて、イジメの話なのに少し嬉しくなってしまった。
「虐待は、教師からの体に触られる等の性虐待があるな」
ーーえ!?
性虐待って……何、何それ、そんなの知らない。
そんなの初めてきいた……!!
「ただこの事は、ミコトの両親である大吾と琴子が素早く気づいて解決済みではある。その教師はすでに辞めさせられいる」
2年生の時、セイラのクラスの担任が急に変わったことをミコトは思い出した。
「あいつ、あいつかっ! 許さない、絶対許さないっ!」
ミコトは拳を強く握りしめた。
涙で目の前にいる神様がかすんで見える。
神様はミコトが落ち着くのを待ってくれるのか、その場によいしょと腰を下ろした。
涙が少し乾いて、ミコトは改めて今までの神様からきいた話を考えた。
神様の口ぶりだと、誰でも聖女にすることができそうなのに、異世界からわざわざ連れてくるのは何故だろう。
この世界の女性を聖女にすればいいのに。
10〜13歳も範囲が狭すぎる。
不幸限定の意味もわからない。
そして何よりおかしいのは、ミコトだ。
ミコトは聖女になれない女性なのに何故異世界転移したのだろうか。
巻き込まれたとも思えない。
転移した時、ミコトは公園にいて、セイラとはかなり距離があったのだ。
「あの、何故、異世界から聖女を召喚するのですか?」
「この世界、エラルダでは、特別な力を持った人間をつくることは禁止されているからじゃ」
「なんで、ですか?」
「昔、特別な力を持つ人間たちによって、エラルダは滅亡の危機に陥ったからじゃ……」




