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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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189/189

189.ミレイの病気とウミノとタリス

 第2エラルダ国のミレイの家で、ミレイの病状のカルテを見たシーマとミコトは、小さく息を吐いた。


 一言で言えば、体がどんどん弱っていく病気……ということだろうか。

 体が弱っていくので、合併症を引き起こしやすく、カルテには、高熱や腹痛、嘔吐などの記載もある。

 ここ2年はアサキの能力のおかげなのか、合併症の記載は極端に少なく、しかし、外に出られるほどの体力はないため、外出記録には何も書かれていない。


 何の検査をしても、どこが悪いのか分からないので、対処療法と環境を整えることで何とかしているのが現状だ。


 ロイの妹であるミレイは、こんな病気を抱えて、ずっと苦しんでいたのだ。


「ミコトさん、気持ちは分かりますが、冷静にお願いします」

 シーマはミコトの様子を見て、声をかける。


「……はい」

 ミコトは目をつむって答える。


「私たち医師団の見解では、筋力が衰えていく病気ではないかと……。でも原因も治療方法も分からないのよ」

 ヒロは、シーマとミコトに説明をする。


 ああ、こんな時、ミコト自身にもっと知識があればいいのに、なんて考えてしまう。

 この世界より医学も科学も進んでいた地球から転移してきたのに、ミコトには何の知識もないのだ。


 いや、ないものをどうこう言っても仕方ない。


「シーマさんは、ミレイさんにどう力を入れれば最善だと思いますか?」

 ミコトは真っ直ぐシーマを見る。


「そうですね……。ミレイさんの体力を補うことをまずやるべきだと思います。なので全体に、団長の疲労を治したと聞きましたので、そのような感じで力を入れて下さい。次に損傷箇所をを探してください。ミレイさんは怪我ではありませんが、病気でも同じことで、必ず損傷箇所があるはずです」


 疲労回復の後に、損傷箇所を探して、そこを治す……という流れか。


 今までの治療より行程が多い。

 ロイの力が満タンとはいえ、もつだろうか。


「私は日を分けても良いと思います。ミコトさんに何かあっては本末転倒です」

 シーマはミコトの不安を感じ取り、日を分ける提案をする。


「私にはミコトちゃんの治療方法が何かはちゃんとは分からないんだけど、ちょっとアッチの準備が大げさになってるよねー」

 ヒロは苦笑いをしている。


「アッチの準備……?」

 ミコトが首を傾げると、シーマも苦笑した。


「教会の祭壇の前に、寝台が設置されていました。神官と護衛騎士の人数も大変なことに……」


「え! 教会で治療をやるんですか!? 移動自体ミレイさんの負担になるじゃないですか!」

 ミコトは叫ぶ。


 しかもどこの国の教会も、暗くて石造りなので、ちょっと寒い!


「その辺りは私がミレイさんをフォローしますよ。お姉ちゃんは治療に専念して下さい」

 アサキはニッコリ笑う。


 ここで「お姉ちゃん」呼びするのか!


『お姉ちゃん?』

 シーマとヒロが首を傾げる。


「はい。私とミレイさんは結婚しますので、ミコトさんはお姉ちゃん……」

「アサキさん! 早くタリスさん? の話をしましょう!」

 ベッドの上から、ミレイが必死に呼びかける。

 

「そうですね。そちらも気になります」

 アサキは微笑むと、ベッドの方へ歩いて行った。


 ベッドの方を見ると、ロイがネルに騎士団員の名前と特徴を必死にあげている。

 真面目に紹介するつもりのようだ。


「私もあっちで話して来ます!」

 ミコトはシーマとヒロにペコリと頭を下げて、ベッドの方へ行った。


 ヒロはその様子を見て、微笑んだ。


「若者はいいわねー」

「……ヒロさん、信じてくれてありがとうございます」


 シーマはヒロに頭を下げる。

 ヒロは真面目な表情をした。


「まあ、シーマは変人だけど、医学に関しては真摯だからね……」

「変人……。ヒロさんにだけは言われたくなかったですね」


 シーマはミコトとロイを見つめながら呟いた。






「それで、いつからタリスさんと付き合う流れになったんですか?」

 

 ミコトはベッドの横に椅子を置いて、ウミノにメイクをされながら話しかける。


「昨日、私からお付き合いして下さいと言いました」


 昨日か!

 ウミノからなのは予想通り!


 ウミノは少し顔を曇らせる。


「私、旦那様やミコトさんが大変な事態になっているって知らなかったんです。なのに、政務棟でタリスさんを見かけて、つい、勢いで……」


 ロイはふっと笑う。


「タリスのこと、好いてくれてるんだよね?」


 ウミノはこくんと頷く。


「タリスさんは、言葉は少ないんですが、すごく誠実で優しい人だと……。昨日ホシナさんから、調査が終了したと言われて報酬を受け取ったんです。そしたら、あれ、もう会えないのかなと悲しくなって……」


 な、なんか、分かる!!

 ミコトはウミノを見つめる。


「ネルに悲しいよね、ときいたら、また会えるといいね、と言われました。それで気付いたんです。またいつか、なんて嫌だということに……」


「タリスはOKしたんですよね?」

 アサキはベッドで横になっているミレイの頭を撫でながら尋ねる。


「お付き合いして下さいと言ったら、分かりました、と一言いわれて、タリスさんはすぐに立ち去ってしまい……」

 ウミノは苦笑する。


 何が分かったんだよ! とロイとアサキとミコトは、ここにはいないタリスに、心の中でツッコミを入れる。


「でも仕方ないです。旦那様とミコトさんがいないという大変な時だったので……」


「私がウミノを見かねて、ここに来る馬車に無理矢理乗せてもらったんです。私たち、ミコトさんの侍女の契約をしていたんですって咄嗟に言って……」


 ネルの言葉に、ミコトは「それで侍女!」と言った。

 2人を侍女扱いなんて恐れ多いと思っていたが、そういう事情なら一肌脱ぎましょう!


「はい! 期間限定ですが、お二人は私の侍女契約をしました!」

『ミコトさん……!』

 

 ミコトの宣言に、ウミノとネルは涙目になる。

 二人分のお給料をミコトの貯金で払えるかどうかは、後で考えよう!


「馬車が別々でしたので、第2に到着した時に、もう一度タリスさんに、私は好きなんですけど、付き合うってことで本当にいいのかって聞いたんです」


 女の子から2回も言わせちゃったのか! とロイとアサキとミコトは目を泳がせる。


「そしたら、それでいいですって……。なので、付き合ってると思うんですけど……」

 ウミノは顔を赤らめる。


「何が『それでいいです』ですか! タリスは相変わらず口下手ですね!」

 アサキは堪えきれず、声を上げる。


 ミコトとロイも、全く同意見である。


「タリスさんの性格からして、付き合ってるのは間違いないと思うんです。だから、私にイケメンを紹介して欲しいんですよ」

 ネルは、ロイを見て言う。


 ロイは「なるほど」と呟く。


「……アサキさん、お話を……」


 ミレイの苦しそうな声に、全員ハッとなる。

 アサキは、素早くミレイの顔に自分の顔を近づける。


「ミレイさん、私はミレイさんが一番大切です。あなたは世界で一番可愛い私のお姫様です。大好きですよ」


 その場にいた全員が、アサキのそのセリフに赤面した。

 もちろんミレイも真っ赤である。


「タリスにも、これくらい言ってもらわなくてはいけませんね」

 アサキは振り向いてニッコリ微笑む。


 タリスには、いや、殆どの人が無理だ! と全員目を逸らしたのだった。

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