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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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188.治療の準備

 「神聖な治療の儀式」を第2エラルダ国で執り行う日の午前5時。


 ミコトはロイの腕の中で目を覚ました。


 昨日は午後8時まで寝ていたのに、よくその夜も眠れるものだとミコト自身も呆れてしまっていた。


 ロイを見ると、目をつむっている。

 でも、きっと、起きているのだろう。


 


 治療、うまくいくのだろうか……。

 

 ミレイのカルテは、身支度中に見せてもらうことになっている。

 医学試験を受けるために勉強はしていたのでカルテの見方は分かるが、医師団が持っていてここにないとはいえ、そんな直前の確認で大丈夫なのだろうか。


 いや、そもそも、ミコトで病気を治せるのだろうか。

 ハリーの胃潰瘍を治した感覚もないのだ。


 もし失敗したら、ミレイは……。


「……不安?」

 いつのまにかロイが目を開けていて、ミコトの頬を触る。


「やっぱり起きてた……」

 ミコトは笑う。


「いや、今起きたところだよ。俺も走り通しで疲れてたみたい……」

 

 ミコトはガバッと起き上がった。


「え! さっきの、本当に寝てたの!? 何で寝てるって教えてくれないの!?」

「ええっ!? 寝てるのにどうやって教えるの!?」


 そりゃそうだけど!

 

 ミコトとロイは、顔を見合わせて笑う。


 ミコトはもう一度、ロイの腕の中に潜り込んだ。


「……あのね、結構不安なの」

「うん……。不安なこと、ぶつけていいよ」


 そういえば、前もロイに話を聞いてもらって、気持ちが軽くなったことがあった。


「治療本当に出来るのかな、とか、ミレイさんに何かあったらどうしよう、とか、パパが捕まったら、ミレイさん悲しむかな、とか……」


 治療はともかく、リオに関しては、命を狙われたのに甘いだろうか……。


 ロイはミコトを抱きしめる。


「ミコトが俺を信じてくれるのなら、全部大丈夫って言えるよ。治療もうまくいくし、ミレイも治る。リオも、国家特別人物ではなくなると思うけど、重罪にはならない……」


 リオに関しては、リオの根回しのうまさのおかげだが……とロイは苦笑する。

 

「そっか……。じゃあ、ロイを信じる!」


 ミコトがキッパリ言うので、ロイは笑った。


「簡単に信じたなぁ……」

「うん。ロイは嘘言わないから」

「あー、言ってもすぐバレるから諦めたんだよね」


 ミコトは「確かに」と笑う。

 ロイは少し不満げな表情をすると、ミコトに覆いかぶさった。


「もう一回してから、準備するか」


 ロイの言葉に、ミコトは驚いた。

 ロイの力はすでに満タンなので、これ以上の必要はないのだ。


「え!? 嘘だよね!?」

「俺は嘘言わないって、さっきミコトが言ったんだよ?」


 そうでした!

 じゃあ、本気なんですね!


 ミコトは、またもや心の中で、ぎゃー! と叫んでいた。





 午前7時。

 ウミノとネルがやって来て、ミコトとミレイの準備を始めていた。


 ミレイは体力が持たないので、アサキの膝に座ってのメイクだ。


 さっき知ったのだが、アサキとミレイは毎晩一緒に寝ているのだ。

 もちろん夜中の体力を回復するためなのだが、なんかもう、ラブラブである。


「ミコト、医師団の人が説明したいって……」


 外に出ていて戻って来たロイの後ろに、シーマと40歳くらいの女性が立っている。


「シーマさん!」

 ミコトは驚いて叫ぶ。


「ミコトさん、大変でしたね」

 シーマはミコトの顔を見ると、安堵の表情を浮かべた。


「ヒロ先生……」

 ミレイはシーマの隣にいた女性に向かって話しかける。


 やはり座った姿勢でのメイクは体力的にキツイようで、声が苦しそうだ。


「ヒロ先生おはようございます。ミレイさん、一旦休憩しましょう」

 アサキはミレイを抱き上げて、ベッドに寝かせる。


 シーマは辛そうなミレイを見て少し表情を曇らせたが、すぐに笑顔になり、ミコトに向き直った。


「ミコトさん、紹介しますね。彼女はヒロさんです。ミレイさんの医師団の1人で、同じ師匠に習った私の兄弟弟子なんです」


 女医さんだ!!

 この世界の女性の医者を初めて見た!


「ミ、ミコトと言います! よろしくお願いします!」


 ミコトが頭を下げると、ヒロは微笑んだ。


「シーマが教えている騎士の女の子っていうから、どんなムキムキの女性かと思ったら、可愛いじゃない!」


「か、可愛い!?」

 ミコトは顔を赤らめる。


「ミコトさん、気をつけて下さいね。ヒロさんは老若男女、誰でもいけるのです」

 シーマは平然と言う。


「あら、こんな大事な日に手なんか出さないわよ。それに、私はミレイちゃん推しなのよ」


 と、いうことは、アサキのライバル?

 ミコトはアサキをチラリと見る。


「ヒロ先生とは、ミレイさん推し仲間なんです」

 ミコトの視線を感じたのか、アサキは微笑んで答える。


 そういう感じなのか。


「って、こんな雑談している場合じゃなかったわ。コレ、カルテなんだけど……」


 数枚のカルテを、ヒロとシーマとアサキとミコトが覗き込む。

 ロイもミレイの病状が知りたくて覗き込んだが、字がビッシリ書いてあり、内容もさっぱり理解出来なかったので、そっと離れた。


 ふと、手持ち無沙汰になったウミノとネルと視線が合う。


「旦那様、私にイケメンを紹介して下さいよ」

 ネルが突然、ロイに言う。


「えっ!? イケメン? どの辺からイケメンになるのかが……」

 ロイは真面目に考える。


「旦那様、真面目に受け取らなくていいんですよ。今、ネルはやさぐれているんです」

 ウミノは苦笑しながら言う。


「やさぐれもしますよ! ウミノがタリスさんと付き合うことになったんですよ! 私だけ恋人がいないんですよ!」


 ネルの叫びに、ロイは「ええっ!?」と叫ぶ。


「ちょっと、その話、待った!」

 カルテを見たまま、ミコトが大声で叫ぶ。

「その話、私も交じりたいです! カルテ見終わるまで待ってください!」


「私も興味ありますね。あのタリスが……」

 アサキもカルテを見たまま呟く。


「タリスさんって誰よ……」

 ミレイはベッドの上で、溜息をついたのだった。

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