184.パパ似のふたり
第2エラルダ国のミレイの家で、古代魔法についてアサキから話を聞いていたロイとミコトは、お互い別々の事を考えていた。
アサキは、300年前に力を与えられた5人が使っていた、ミコトからすると、いかにも魔法というイメージの、火、水、風、大地、闇を操る力が古代魔法だと言った。
そうなると、魔法は神様が作って、その5人に与えたものだということになる。
ミコトは、それ以前にも、魔法があったのだと勝手に思っていた。
古代魔法は、神様が魔物を抑えるために作った一時的な力なのだろうか、とミコトの頭の中では、疑問が渦巻いていた。
ロイは300年前の話を、アレンとセタからきいていた。
その時、力を与えられたのは7人で、先程アサキが言った5人と、残りの2人は、あらゆる力を抑える力の者と、身体能力の高いアリアンだった。
この2人の力は魔法には入らないのだろうか、とミコトと同じく、頭の中が混乱していた。
「ふ、二人とも大丈夫ですか?」
アサキは困ったようにミコトとロイを見る。
と、その時、ベッドからミレイのうめき声が聞こえてきた。
アサキは素早くベッドへ行き、ミレイに話しかける。
「あの、お二人とも、こちらに椅子を持ってきて続きを話しませんか? ミレイさんも古代魔法に詳しいんですよ。それにミコトさんの紹介もまだでしたよね」
アサキの言葉に、ロイとミコトはハッとして頷いた。
「ミレイ、この人が俺の奥さんのミコトだよ。ミコト、妹のミレイだよ」
ロイは笑顔でミコトとミレイを紹介する。
ミコトはペコリと頭を下げ、ベッドに横になっているミレイは、マジマジとミコトを見つめた。
「え、若い? いくつ、ですか?」
ミレイは調子が良いのか、少し体を起こしてミコトに尋ねる。
「15歳です! あの、お姉ちゃんって呼んでもらえると嬉しい……」
「え、いやよ」
がーんっ!!
ミコトはロイの方に倒れ込む。
「お姉ちゃんは、いきなりすぎでは……」
アサキは苦笑する。
「ミコトは昔から兄弟姉妹に弱いよね……」
ロイもミコトを支えて苦笑する。
ミレイは起こしていた体をポスンとベッドに預けた。
「ミコト……さんがイヤって意味じゃなくて、私、お兄ちゃんのことも、まだ兄だって感覚がないのよ」
そうなのか!
ミコトは体を起こして椅子に座り直した。
ミレイはアサキを見る。
「古代魔法の前に、この辺りの話をアサキさんからしてもらってもいい?」
アサキは微笑んで頷くと、ロイとミコトを見た。
「実は、ミレイさんと私が、ロイさんがお兄さんだと知ったのは、つい1週間前のことなんです」
「え、そうだったんですか!?」
ロイは驚きの声を上げる。
「はい。1週間前、リオさんがここに訪問した際に、ミレイさんには兄がいて、それが第1の国家特別人物のロイさんだと言われたんです」
アサキの言葉に、ミレイも頷いている。
「詳しい事情は言えないと言われました。私はそんな大事な話を、ミレイさんはともかく、私にもするなんて……とその時は思いましたが、今は納得しています」
「納得……ですか?」
ロイは首を傾げる。
「はい。リオさんに何かあったら、ロイさんを頼れという意味だったのです。ロイさんは地位もお金もありますし、私は一応ロイさんと知り合いですしね」
「ああ、そういう……。1週間前、か……」
ロイは口元に手をあてて呟く。
「ミレイさんは、リオさんが本当の父親だと知っていましたが、母親や兄の記憶はなかったんですよ」
アサキの言葉に、ロイは小声で「良かった」と言い、息を吐いた。
ミコトは隣で聞いていて、ロイの言葉に、胸が苦しくなった。
妹の事をずっと忘れていた罪悪感なのか、母の病死と別れ際の悲惨な光景がミレイの記憶にないことなのか……。
「私、アサキさんがお兄ちゃんを連れてきた時に、すごくショックだったの。え! この顔なのって!」
ロイとミコトは「顔?」と首を傾げる。
「だって、私よりも断然キレイな金髪だし、明るい青い瞳だし、背は高いし、ぶっちゃけイケメンでしょ? パパに似たことをかなり恨んだわよ!」
ミレイの言いように、ロイは呆然とし、アサキはクスクスと笑っている。
ミコトはミレイの細い手をガシッと掴んだ。
「分かります!! 私もパパ似で! パパは好きだけど、美人のママに何で似なかったんだろうって……!」
「……! やっぱり、私のママは美人だったの……?」
ミコトはコクコクと頷く。
「絵姿を見た事があるんですけど、絶世の美少女でした! でも、ミレイさんはすごくお綺麗です! 私なんてゴリラブスって言われてましたから!」
ミコトは「ゴリラブス」を思い出して、ミレイの手をそっと離した。
そもそも、ミレイとでは、パパ似のレベルが違いすぎた……。
「誰がそんな酷いことをミコトに言ったの? 騎士団員? 俺、やっつけるよ!」
ロイはミコトの顔を覗き込む。
この世界ではないからそれは無理だ、とミコトは笑う。
「ミレイさんは、世界で一番可愛いですよ」
ミコトとロイは、驚いてアサキを見る。
今、すごいセリフをサラッと言ったよね!?
ミレイは顔を赤らめている。
「お、俺も、ミコトが一番可愛い……」
「対抗しなくていいよ!」
ミコトはロイの口を両手で押さえる。
「対抗ですか? 私には敵いませんよ。私は毎日10回以上、ミレイさんに可愛いと伝えてますから……」
「アサキさん! もういいよ! えーと、古代魔法の話でしょ? お医者様が来ちゃうし、早く話をしましょ!」
な、なんか、アサキさんも思っていたイメージと違う人のようだ……。




