179.ロイの単独闇組織壊滅計画
午後4時。
政務棟の会議室で、尋問の報告会議が行われた。
出席者は、ロイとリント、キダンとホシナ、アレンとカイルである。
「昨日の襲撃者5人全員を尋問した結果、依頼者は、リオの側近である第2の政務官のジンヤと判明しました! ハイ、リオ直結でーす」
キダンは言いながら、拍手をする。
重い内容も、キダンが報告すると、何故か軽い。
「依頼内容は、ミコトちゃんの殺害です。ミコトちゃんが手練と分かっていたので、侍女のマリーを狙うフリをして……という計画だったようでーす」
アレンとカイルは、ハァと溜息をつく。
「ジンヤは準メンバーで間違いなく、5人とも闇組織『黒鳥』の一員で、ロイ君が見つけてくれた第3の拠点にいた奴らでしたー。第3の拠点の見張りからも裏が取れていまーす」
キダンはそこまで言うと、ロイを見た。
ロイは頷く。
「そういう訳なので、当初の計画通り、今夜中に闇組織4拠点をぶっ潰します。第3、北の大地の2拠点、第4の順に素早くまわります。捕縛と後処理はすでに配置済みの各地在勤の諜報員と騎士団員に任せます。闇組織は全員手練のため、こちらの安全のために手加減はしません。半数くらいは尋問にかけられる……かもしれませんが、あまり期待はしないでください」
ロイの淡々とした言葉に、全員押し黙った。
ロイはその様子を見て、ふっと笑う。
「みなさんは、ミコトをお願いします。おそらく夜中に目を覚ますと思います。万一俺の帰りが遅くても、なんとか、ミコトを落ち着かせてくれると助かります……」
ミコトにはこの話を一切していない。
力を使って目を覚ました時に、ロイがいないのは初めてとなる。
「大丈夫ですよ。夜中は聖女の通常活動時間です。俺も夜間は護衛に入ります」
リントはロイを見て「こちらは心配しないでください」と付け加えた。
ロイは安心したように微笑む。
「じゃ、早速ですが、俺は第3に向かいます。後の事、よろしくお願いします」
ロイは頭を下げると、会議室を出て行った。
全員が、ハァーと息を吐く。
「ロイは尋問後、疲弊していたんだろう? 大丈夫なのか?」
アレンは、リントの顔を見る。
「ミコトが回復をさせたとは聞きましたが、どのくらいなのかは正直分かりません。ミコトも眠っていますし……」
リントは目を伏せる。
「ま、後は祈るしかないよねー。ついて行きたくても無理だしさぁ……」
キダンは言いながら、窓の外を眺めている。
「しかし、リオはしっかり行動してきたな……」
カイルは溜息をつく。
「何が決め手になったのでしょうか?」
ホシナは全員の顔を見る。
「……決め手も何もさぁ、ミコトちゃん大好きって、丸わかりじゃん……」
キダンは窓の外を見たまま言う。
全員、ですよね……と頷いたのだった。
ミコトが目を覚ますと、そこは薄暗い騎士団の応接室の簡易ベットの上だった。
ベッドに腰掛けていたセイラは「起きた?」と言って振り向いた。
「セイラ……。今、何時くらい?」
「夜中の2時かなー」
ミコトがここにいるということは、ロイは不在なのだろう。
何も言っていなかったけど、きっと闇組織の拠点を一人で潰しに行ったのだろう。
ミコトは起き上がってセイラの隣に腰掛ける。
「遊ぶ約束してたのに、寝ちゃってごめんね」
ミコトが謝ると、セイラは笑った。
「暗殺者ごっこはリントに禁止されちゃったんだよ。それに、新しい遊びを見つけたしねー」
「新しい遊び?」
セイラはニヤリと笑う。
「ノエルンとソマイちゃんのカップリング作戦だよ」
「カップリング……?」
ミコトは首を傾げる。
寝起きのためか、頭が回らない。
「ハリーには悪いけど、ソマイちゃんの方が見た目がいいじゃん? やっぱこういうのは、可愛い系×ガッチリイケメンの方が盛り上がるからねー」
ミコトは目を見開いた。
な、なんだってぇー!?
「ちょ、それで、どうなった……」
「んー、ノエルンはポーとしてたね。でもソマイちゃんは馬鹿イケメンだから、なんか普通だったなー」
セイラはつまらなさそうに言う。
「ま、でも、出会ったばかりだからね! 明日も私とマリーは頑張るつもりだよ!」
何を頑張るというのだろうか……。
もしまとまっちゃったら、それはそれでどうしたらいいのか……。
いや、でも、ソマイはあの力のせいで女性と話せないのだから、もう男性と付き合うしかない……?
「分かった! 私も頑張るよ!」
「ミコちゃんが関わるとややこしいよー」
セイラはベッドにバタッと倒れた。
奥のベッドではマリーが眠っている。
ミコトは部屋を見回した。
当たり前だけど、ロイはいない。
ロイの力も空っぽだ。
ただ、愛しい気持ちだけが残っている。
胸がキュッとして、指先がジンジンする。
「ミコちゃん、アイツがいなくて寂しいの?」
寝転びながら、セイラがきいてくる。
寂しいけど、それだけなのだろうか。
「私にも、ロイの位置が分かればいいのになぁ……」
ミコトはポソッと呟いていた。




