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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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177.愛おしい

 騎士団の応接室で、リントとマリー、ソマイとタリスは、ソファに座り押し黙っていた。


 というのも、突然入って来て、キスだの抱き合うだの発言したロイが、今度はベッドの上で、ミコトを膝に乗せてずっと抱きしめているからである。


 ちなみにセイラはそのベッドでぐっすり眠っている。


 先程まで恥ずかしいだけだったミコトは、さすがにコレはおかしい、と思っていた。


「あの、キダンさん。ロイに何かあったんですか?」


 ミコトはロイに抱っこされたまま、丸椅子に座っているキダンに尋ねた。

 キダンは不服そうな顔をする。

 

「えー、もう分かっちゃったの? このロイ君おもしろいのに……」

「お父さんっ!」


 マリーに睨まれ、キダンは「分かったよー」と言う。


「実は、会議終わってすぐ尋問に取り掛かったんだけどね、ロイ君すごい集中力で、5人全員の尋問をやっちゃったんだ。でも、その後ふらついちゃって、とにかくミコトちゃんに会うって言ってここに来たんだよねー。で、そんな感じ?」


 つまり、ものすごく疲れているという事か!


「そういう事か。ロイさんって、ミコトといるとあまり疲れないんですよね? 前にそう言っていたから……」

 リントは安心したように言う。

 ……実はフォローのしようが無いと呆れていたのだ。


「ああ、お互いなんすね。確かにずっとイチャイチャしてましたよ、この2人……」

 タリスは闇組織調査中のことを思い出していた。


「イチャイチャ……ですか……」

 ソマイはボソッと呟く。


 タリスは、また余計な事を言ってしまった、と口を手で押さえた。


「まあ、イチャイチャはいつもの事なので……。キダンさん、尋問の報告は明日にしましょうか?」

 

 リントはサラッと流してキダンに問う。


「うーん……。ロイ君は急いでるみたいだから、今日の16時くらいからにしようかなぁと……」


「承知しました。それで通知しておきます」


 ミコトはみんなの話を聞きながら、ロイを見上げた。

 寝てはいないようだが、目をつむっている。


「そんな訳でミコトちゃん。ロイ君を16時までに回復させておいてねー」

 キダンは軽く言うと、立ち上がる。


「え! 回復って、どうしたらいいんですか?」


 ミコトの言葉に、キダンはニヤリと笑う。


「それ、ここで言ってもいいのー?」

「お父さんっ!!」


 マリーは再びキダンを睨む。

 キダンは「はぁい」と肩をすくめる。


「……俺、外で護衛する……」

 何を察したのか、タリスはボソッと呟いて応接室の外に出ていく。


「あ、私も……」

 ソマイもタリスの後に続いて出ていく。


「僕、お昼ご飯食べてくるねー」

 キダンはニヤニヤしたまま出ていく。


「……リント、少しいいかしら?」

 マリーはリントを見つめる。


「もちろん。騎士団長室に行こうか」

 リントは笑顔でマリーと出ていく。


 そしてだれもいなくなった……。


 いや、ベッドにぐっすり寝ているセイラがいるんだった。

 鍵のない騎士団の応接室で、しかもセイラがいるのに、みんな何を思って出て行ったのか……。


 ミコトはもう一度ロイを見た。

 キダンがお昼ご飯を食べてくると言っていたので、ロイもまだ食べていないのだろう。

 今は午後2時なので、食べるなら今しかない。


「ロイ、私、食堂からご飯貰ってくるよ」


 ミコトは立ちあがろうとしたが、ロイはさらにギュッとミコトを抱きしめる。


「行かないで……」

「うっ……!?」


 な、何、これ!?

 可愛いんですけどっ!?

 ミコトの胸が、キューッとなる。


 いや、今、そんな事を思ってる場合じゃない!


「あ、あの、でも、何か食べないと、ね?」

「今はいい」


 どうしたらいいのだろう……。

 こうやっていたら、回復するのだろうか。


 いや、待てよ?

 治癒能力をロイに使えばいいのでは……?


 今まで怪我しか治してこなかったけど、病気も治せるみたいだし、疲労回復もできるかもしれない。


 ……疲労回復の損傷箇所ってどこだろう?


 からだ全体だろうか?

 だとしたら、食べ物や空気を取り込む感じで全体にまわせるかも?


 ミコトはチラリとセイラを見た。

 セイラは、規則正しい寝息をたてて、ぐっすり眠っている。


「ロイ、キスしてもいい?」

「……え?」


 ミコトはロイの返事を待たずに、ロイの唇に自分の唇を重ねた。

 そして、そこから、力を入れる。


「んん……!?」


 ロイはすぐに普通のキスじゃないと気付いたようだ。

 が、抵抗はせずに身を任せてくれている。


 こうしていると、分かる。

 ロイがかなり無理をしているということが。


 きっと無理をしているのは、ミコトのためだろう。

 尋問を急いだのは、闇組織も、リオの事も、全部素早く片付けるつもりだからに違いない。


 ミコトの胸が、また、キューッとなる。


 ああ、すごく、愛おしいなぁ……。






 騎士団長室の事務席に、リントはマリーを座らせた。

 リント自身は、丸椅子に腰掛ける。


「この席、初めて座ったわ。ミコトはいつもここで仕事をしているのね」

 マリーはそう言って微笑んだ。


「まあ、今は殆どノエルが座ってるけどね」

 リントも微笑む。


 マリーは「そうね」と言って目を伏せる。


「マリー、気を利かせたって訳じゃなさそうだね……」

 リントは心配そうにマリーを見つめる。


「……ロイは、一人で全部やる気なのね……」


 マリーの言葉に、リントは「おそらくね」と苦笑した。


「本当の意味でロイさんを手伝える人はいないからね。俺は任された騎士団をちゃんとやるよ」


「私は、セイラとミコトのお世話かしら?」

 マリーはふふっと笑う。


「ある意味それが一番大変だよ。あの2人、遊び方が子どもなんだよ」

 リントはマリーの事でからかってきたセイラとミコトを思い出して、顔をしかめた。


「あら、聖女の部屋ではもっとすごいわよ? 最近は、女暗殺者ごっこが流行りみたいで部屋を走り回ってるしね」


「は? 女暗殺者?」


「何かの悪者に攫われたお姫様セイラ女暗殺者ミコトが助けに来るっていう設定でね……」

「待った! 何で暗殺者が助けに来るんだよ! 暗殺者設定の意味が分からない!」


 真剣に意見するリントに、マリーは声を殺して笑う。


「そ、そこは何でもいいみたい。体に隠した武器を投げたいだけで……。でも投げるたびに、下着も胸も見えまくりで……、それでセイラが大喜び……」


 リントは頭を押さえて溜息をついた。


「……ロイさんが隠し武器を禁止した理由が分かったよ……」


 マリーは、何とか笑いを抑えて、ハァと息を吐いた。


「リントも今度見てみる?」

「絶対いやだね! 俺はミコトのアホ行動には一切関わりたくないんだよ!」

「そう? 男性なら、お金を払ってでも見たがると思ったのに」


 楽しそうなマリーを見て、リントは真剣な表情になる。


「マリー、俺はマリーにしか興味ないんだよ。分かっていてそんなことを言うの?」


 リントの真剣な声に、マリーも真面目な表情になる。


「……リントって、本当に変わってるわね。私はリントに好かれるようなところは、何もないのよ」


「な、何言って……、俺はマリーの全てが……」


 マリーは自虐的に笑った。


「全てって、外見? それともこの性悪な中身?」


「どっちもだよ!」


 リントは椅子から立ち上がって叫んだ。

 マリーは目を見開いた。


「俺だって性悪なんだよ! マリー狙いの男を影で何人牽制したか……」


 リントが熱弁しようとすると、すでにマリーは笑っている。


「マリー……?」

「だ、だって、性悪が否定されないから……」


 リントはハァと息を吐いて、座っているマリーの前にかがんだ。


「俺さ、マリーの悪い顔が大好きなんだ。もっといろいろ企んで、その顔を見せてよ」

「……本当に変わってる……」


 リントはマリーに顔を近づける。

 と、騎士団長室のドアが、ドンドンドンと激しく叩かれた。


「あー、もう! どうぞ!」

 

 リントが答えると同時にドアがバタンと開いて、大慌てのソマイが入ってきた。


「大変です! 聖女様がお怒りでロイさんを殺そうとしていて……! ミコトさんは眠ってしまってるしどうしたら……」


 リントとマリーは顔を見合わせて、肩を落とした。


『今行きます』


 2人は同時に呟くと、騎士団長室を後にした。

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