172.ロイよりBL
聖女の部屋に襲撃があった次の日の朝9時30分。
ミコトとロイは、騎士団の応接室にいた。
もちろん聖女であるセイラを迎えにきたのだが、案の定、セイラはグッスリ眠っていた。
「昨日、話が盛り上がっちゃってね」
マリーまで眠そうな声で言う。
「盛り上がる?」
ミコトはセイラをゆすりながら首を傾げた。
「リントがセイラの護衛にって、コランさんとハリーさんとノエルちゃんを連れてきてくれて……」
「えっ!!」
ミコトはセイラを起こすのを諦めて、マリーに詰め寄った。
「何を話したの!?」
「それは言えないわ。ここだけの話にしてって言われたもの」
マリーは人差し指を口に当てて、ウフフと笑った。
ロイは、あの3人無事ではないな、と直感していた。
「えー、私もそっちにまじりたかった!」
「ええっ!? そうなの!?」
ミコトの言葉に、ロイは若干、いや、かなりショックを受けた。
夜中から先程まで、結構イチャイチャして、二人きりで過ごしていたのに、そっちなのかと。
ミコトはロイを見た。
「ロイもハリーさんとノエルの話、聞きたいよね?」
「え、いや、全然聞きたくない……」
ロイの答えに、ミコトはショックを受けた。
こんなにミコトは興味津々なのに、ロイは興味ないらしい。
ノックの音が応接室に響き、リントが入ってくる。
「おはようございます。あ、もう来てたんですね」
「リント、昨日は後のこと全部任せてごめん」
「別にいいですよ。いつものことじゃないですか」
リントは淡々と言って、眠っているセイラを見た。
「やっぱり寝てるか……。まあ、聖女とマリーは出席しなくてもいいかな……」
「いや、聖女とマリーにも出席してほしい」
ロイはキッパリと言う。
リントはロイを見て「分かりました」と言った。
「ミコト、起きるわけないから、そのまま聖女を背負って」
「は、はい!」
ミコトは寝ているセイラをおんぶする。
「あと、シーマさんも出席すると言ってました。ロイさんのこと、心配していましたよ」
「そうだね。シーマさんは俺が記憶がないって知ってるから……」
シーマさんは知っていたんだ、とミコトは思っていた。
それなら、アレンもカイルもゼノマもセタもみんな知っていることだったのだ。
みんな、ロイに何かあったという事は知っていて、無理に探ろうとはしなかったのかもしれない。
「ミコト、ぼんやりしてるけど回復してないのか?」
リントがミコトを見て、顔をしかめている。
「あ、回復したよ。えと、ハリーさんとノエルの話が聞きたかったなぁって思ってただけで……」
「あ、そう。俺は全く興味ないわー」
リントは嫌そうに溜息をつく。
ミコトは再びショックを受けた。
マリーはミコトの肩にポンと手を置いた。
「男性にはこの話の魅力が分からないのよ」
マリーはそう言うと、ニッコリ微笑んだ。
ミコトは「そっか」と呟き、これはあの3人無事じゃないな、と思っていた。
政務棟で一番広い会議室の前に、ソマイとタリスが立っていた。
セイラを背負っているミコトを見て、ソマイは驚いて駆け寄る。
「ミコトさん! 聖女様は……」
「あ、寝てるだけです。どうしても起きなくて……」
「……あ、そうなんですね」
ソマイはあからさまにガッカリしている。
でも、ソマイの力を抑えなくては、マリーを会議に出席させるのは難しい。
「ちょっと起こしてみます。セイラ! 起きて!」
ミコトは頭を振って、セイラの頭にゴチゴチとぶつける。
ソマイとタリスはギョッとし、隣にいたロイは苦笑した。
ちなみにマリーは、リントの強固な守りで遥かに後方にいる。
「ミコトさん、ちょっと乱暴では……?」
「え、でも、コレくらいじゃ起きないんですよ」
ミコトはさらにセイラに頭をぶつける。
「うー、ミコちゃん、いたーい」
「ほら、起きて! ソマイさんの力を抑える約束をしてたでしょ!」
「えー? してなーい……」
ソマイはさらにガッカリした表情を浮かべる。
ロイもタリスも、ソマイを同情の目で見つめる。
「聖女に頭ぶっつけるミコちゃんなんて、こうしてやるー」
セイラは半分眠りながら、ミコトの胸を背中から両手で鷲掴みにした。
「きゃんっ!!」
ミコトが大きな声を上げる。
思わず、ロイとソマイとタリスは、ミコトの胸を見る。
「や、だめ、揉んじゃダメぇ……」
完全に全てを忘れて、男3人はミコトを凝視する。
すると、遥か遠くにいたはずのマリーが、セイラを背負ったミコトの腕を掴み、ものすごいスピードで来た通路を戻っていった。
「セイラ! 人前でミコトの胸を触らない! ミコトは、聖女に頭をぶつけない!」
マリーはミコトとセイラを叱りつける。
ミコトはしゅんとし、セイラはハッと目を開けた。
「ご、ごめんなさい……」
「マリー、ごめんなさい!」
ロイとソマイとタリスが遠くでマリーに叱られているミコトとセイラをボンヤリと眺めていると、いつの間にか隣に来たリントは「んんっ!」と大きな咳払いをした。
3人はハッとする。
「いつもの事なので! あの3人は基本一緒に暮らしているので、姉妹も同然なんです」
リントはロイを見ながら強い口調で言う。
「一緒にボンヤリするな!」と目線で言われている。
「姉妹……。あぁ、聖女様とミコトさんって顔似てる……」
タリスは呟く。
「あ、私もそう思いました! お二人とも神々しいですよね!」
ソマイは顔を輝かせてタリスに同意する。
タリスは「神々しい?」と首を傾げている。
ロイとリントは目配せをする。
「聖女様が起きたようなので、ソマイさんの力を抑えてもらいましょう。連れてきます」
リントは表情を変えずにそう言うと、通路を戻っていった。
「タリス、先に会議室に入ろうか」
ロイも表情を変えずにタリスに言い、会議室のドアを開ける。
タリスはドアをじっと見る。
「なんかこのドアだけ新品……」
「え? ああ、取り替えたんだよ、この間、ね」
タリスは観察力がある。
そういえば子どもの時からそうだったな、とロイは懐かしく思っていた。




