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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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168/193

168.男同士の話

 襲撃のあった聖女の部屋で、ソマイはロイに向き直った。


「私は第2の騎士団長という立場があります。ですが、その立場を一旦無しにして、ロイさんと話がしたいのです。これは、男として、国よりも大切な事だと思っていますが、どうでしょうか」


 ロイは頷いた。


「はい。私も第1の騎士団長という立場を一旦無しにして話したいと思います」


 ミコトは2人を交互に見た。

 とても、口を挟める雰囲気ではない。


「2人とも、1階の部屋でお願いしてもいいですか? 正直、今ロイさんとミコトが離れるのは良くありませんので……」


 リントの提案にロイとソマイは頷くと、1階へ降りて行った。


 1階の部屋のドアが閉まる音が微かに聞こえると、全員、ハァーと息を吐いた。

 

 あのレベルの二人に緊張が走ると、本当に怖い……!


「ちょっとぉ、アレ大丈夫? ミコトちゃんの奪い合いとかにならない?」

「お父さん! ちゃかさないの!」


 マリーに睨まれて、キダンは「はぁい」と言う。


「タリスさんはあちらの窓をお願いしていいですか? 俺はこっちを……」

 

 リントは襲撃に備えてタリスと分担で注意を払うようだ。

 タリスも頷いて窓へ注意を向けている。


「ミコちゃん、大丈夫だよ」

 セイラはミコトの気持ちを察したのか、ミコトを抱きしめる。


「……うん」


 2人は何を話すのだろうか。

 何も起こらないといいけど……。





 ロイとソマイは、聖女棟の1階の簡易的なテーブルセットに向かい合って座った。


 先程まで騎士団員たちが詰めていたせいか、部屋は暖かい。


 先に口を開いたのは、ソマイだった。


「今日の様にミコトさんが命を狙われたことが、今までにもあるのでしょうか」


 ロイは目を伏せる。


「ご存知かもしれませんが、ミコトは古代魔法適性の件で、何度も襲撃に遭っています。ですが、はっきりと命を狙われたのは、今日が初めてです」


 ソマイは頭を抱えて「やはり……!」と唸った。


「何か、知っているんですね……」


 ソマイは頭から手を離して、ロイを見る。


「お話しする前に、確認したいことがあります。第1の国家特別人物夫妻は不仲だという噂が出回っています。これは、本当でしょうか」


 第2の騎士団長に本当の事を言う訳にはいかない、とロイの頭の中では「不仲です」という冷静な答えが出ていた。

 しかし、これは、立場を無しにした、男同士の話だ。

 

「噂通りの不仲ではありません」


 ロイの答えに、ソマイはふふっと笑った。


「そうですか。では、私の方からハッキリ言いましょう。私はミコトさんが好きです。運命の女性だと思っています」


「……っ!!」


「お二人の不仲の噂を耳にするたびに、私なら大切にするのに、と思っていました。不仲ではなくとも、妹のような存在だと言うのなら……」


「俺は! 俺はミコトを愛しています!」


 ロイの真剣な表情に、ソマイは頷いた。


「ミコトさんの気持ちは、聞かなくても分かっています。ミコトさんを悩ませたくはありません。先程は一緒に女性と話したい男を演じていただきありがとうございます」


「えっ! あ、はい……」


 ロイは動揺しながら頷いた。

 アレ、演技だったのか……。

 

「それでは、私の知っている事をお話しします。これは、ミコトさんを助けたいだけのただの男の話だと思って下さい」






「リオさんをおかしいと思ったのは、交流戦後からでした。私はクリス……ミコトさんと試合をした者ですが、そのクリスの行動を不審に思い問い詰めました。すると、クリスはリオさんに頼まれてミコトさんのお腹を攻撃したと白状しました。この事に腹を立てたのは、カーサ姉さんでした」


 分かってはいたが、やはりあの攻撃は、リオの指示だったのだ。


「姉さんは昔の……いろいろな事が原因で子どもを授かれないんです。リオさんはそれを知っているのに、何故そんな事をしたのかと、姉さんはリオさんを問い詰めました。リオさんはその時は何も言わなかったそうですが、そのすぐ後に、3番目の奥様に離婚を言い渡しました」


「その流れでは……」


「はい。姉さんは、それを警告と受け取りました。これ以上意見をすれば、自分も捨てられると……。意外に思うかもしれませんが、リオさんと姉さんは、噂とは違い仲が良く、姉さんはリオさんを愛しているのです」


 ロイは頷いていた。

 アレンからリオとカーサは不仲だと聞いていたが、ロイとミコト同様、噂はアテにならないということだ。


「姉さんは黙るしかありませんでしたが、私は納得がいきませんでした。リオさんの真意を知りたくて、直接リオさんに聞きました」


 直接、というところが、ソマイらしい。


「リオさんは、私がしつこかったからか、激昂して『アリアンはこの世に要らないんだ』と言いました」


 ロイは体をビクッと強張らせた。

 ソマイはロイから目を逸らす。

 

「私は意味が分かりませんでした。でもとても重大な事の様な気がしたので、雑学に詳しい部下に調べてもらいました。部下はちょっと変わったヤツなんですが、予想以上に詳しく調べてくれました」


 ソマイはロイを真っ直ぐ見た。


「アリアンとはロイさんのことですね。いえ、正しくは、ロイさんの家系……でしょうか」


「……はい」


「強大な身体能力の反面、思いを寄せた人を失くすと生きていけなくなる……で合っていますか?」


「はい」


 ロイは正直に答えた。

 これくらいのことは、調べれば誰でも分かることではある。


 ソマイはハァと息をついた。


「ここまで部下から聞いて、私は嫌な予感がしました。交流戦で騎士団長同士の試合が無かった理由は、私では、いえ、誰でも、ロイさんには勝てないという理由でした。アリアンを要らないと叫んだリオさんは、じゃあどうやって自分が存命の間にアリアンを無くそうというのか……と」


 ロイは辛そうなソマイを真っ直ぐ見ていた。


「リオさんの誰も入れない自室から、ミコトさんの調査資料がたくさん出てきました。その中の半分は、ミコトさんとロイさんの仲を調べたものでした。私は、確信しました。あなたがミコトさんを愛していると判断した瞬間、リオさんはミコトさんを殺害するのだと。そしてロイさんたちは、それに気付いているのだと」


「はい。気付いていました」


 ロイのハッキリした答えに、ソマイは納得したように頷いた。


「かなり慎重に行動したつもりでしたが、リオさんには妙な側近が数人いまして、私が自室に侵入したことがバレてしまいました」


「妙な側近? とは……?」


「表向きは政務官なのですが、気配を消している……そんな方々です」


 ロイは「なるほど」と呟いた。

 キダンが名前をあげていたヤツらだろう。


「私はリオさんに呼び出され、突然休暇を言い渡されました」


「辞職ではなく、休暇なんですね」


 首を傾げたロイに、ソマイは微笑んだ。


「自分で言うのも何ですが、私はかなり真面目に騎士団長を勤めていましたので……。さすがに突然辞めさせる流れには出来なかったのでしょう」


「うっ、耳が痛いです……」


 ロイも真面目に勤めているつもりではあるが、周りの人々がそう評価してしているとは思えない。

 

 ソマイは「でも……」と呟いた。


「私にはこの休暇が、リオさんからの、自由に動いていいという許可に思えました。リオさんは、止めて欲しいのだと、勝手にそう解釈しました」


「それで第1にいたんですか……」


 ソマイは頷いた。


「何もなければ、観光をして帰るつもりでした。でも武器屋で偶然ミコトさんにお会いして、理屈ではなく、もう彼女を守るしかない、と思いました。その流れに乗ってしまったのだと……」


 ソマイの言葉に、ロイは納得していた。

 ミコトを守るしかない、という感覚が、あまりにも良く分かるからだ。


「ソマイさん、リオ……さんの自室に入って資料を見たのですよね。そこにはもう、その、俺たちの仲は……」


「私が見た時点では、明確には記されていませんでした。でも、私が見た限りでも、不仲とは思えませんでした」


 ロイはハァと息を吐いた。

 まあ後は、今回捕縛した男5人を尋問すれば分かることだろう。


 リオにはケイ以外に闇組織と繋がる準メンバーがいるのは間違いなさそうだが。


「ソマイさん、話していただき、ありがとうございました。リオさんの自室に侵入までしていたのには驚きましたが……」


「いや、実は、私はこういう事が好きで得意なんですよ。体は昔から大きいのですが、かくれんぼでは絶対に見つかりませんでした」


 ロイはふっと笑った。


「同じですね。俺もかくれんぼでは見つかったことがない……」


 ロイは、かくれんぼを誰とやったんだ? と話を止めた。


 騎士養成所ではそんな遊びはしなかった。

 記憶のない2〜8歳だろうか。

 母親とだろうか。

 でも、見つからないと泣かれたような……?


「ロイさん? どうかしましたか?」


 ソマイが不思議そうにロイを見ている。


「あ、いえ、かくれんぼを誰とやったのか思い出せなくて……」


「……? 私は兄妹でやりましたよ。妹には見つからないと毎回泣かれましたが」


「あ、そうですね。俺も毎回泣かれて……。いや、妹……?」


 ロイは頭を抱えた。


 ひどく頭が痛い……?

 そんなことがあるのだろうか。

 病気なんて、したことがないのだ。


「ロイさん!? 大丈夫ですか? ロイさん!!」


 ソマイの声が、聖女棟の1階の部屋に響き渡っていたが、人生初めての頭痛のせいか、ロイにはかなり遠くに聞こえていたのだった。

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