164.ソマイとの遭遇
闇組織調査は、ほぼ、ロイ1人の働きにより、順調に進んでいた。
闇組織の拠点はいくつもあり、半月経ったところで、4拠点が判明していた。
北の大地に2拠点、第3に1拠点、第4に1拠点だ。
ロイによると、これ以上の主要拠点は無さそうとの事で、諜報部員に見張りを任せ、調査メンバーである、ロイとミコトとキダンとホシナとタリスとウミノとネルは、一旦、第1エラルダ国に戻って来ていた。
ロイとキダンとホシナは、これから政務棟で報告も兼ねた会議で、ウミノとネルは、メイクなどの備品補充で買い物、会議には出なくていいと言われたミコトは、タリスと共に聖女棟に向かっていた。
タリスは護衛中は殆ど喋らない。
さすがに半月も一緒にいるので、タリスとの沈黙の空気にも慣れてきて、ミコトはタリスとただ黙々と歩いていた。
「ミコトさんは……」
タリスはボソッと口を開く。
ミコトは珍しいと思いながら、「はい」と答える。
「体が弱いんじゃ、ないの?」
しばらく沈黙が続く。
「……へ?」
ミコトが間抜けた声を出すと、タリスは「えーと」と言う。
「何回も倒れたって聞いたし、皆して、会議はいいから休めって言うし……」
ミコトは少し考えて、「あ!」と呟いた。
「体は弱くなくて……、倒れたのは本当なんですけど、別の理由なんです。会議はいいって言われるのは、多分、その、物を壊すからで……」
タリスは、病弱ではなかったのか、と安心していた。
が、しかし……。
「物を壊す……とは……?」
ミコトは目を逸らす。
「えーと、机やドアをつい壊したり……」
「つい?」
ミコトは頷く。
変な魔法(気功波)とは言えない。
ここは、話題を変えよう。
「あのっ、タリスさんも自由時間は買い物するんですか?」
「え? あ、武器屋には行こうかと……」
「武器屋っ!? 私も一緒に行っていいですか? 隠し武器を買いたいんです!」
実はミコトの隠し武器は、ロイに没収されたままなのだ。
タリスは、曖昧に頷く。
「いいけど……、隠し武器はロイ先輩に怒られると……」
「大丈夫なんです! 隠す場所さえ普通なら、ロイは怒らないんです!」
実際、ミコトのウィッグの中のナイフは見逃してもらえたのだ。
「じゃあなんであんな場所に……」
タリスは、スカートの中や胸の谷間から出てきたナイフを思い出していた。
「あの格好には、あの場所なんですよ!」
「……いや、全然分からんけど……」
タリスは、やっぱり女性はよく分からない、と溜息をつく。
ミコトに案内された町の武器屋に入ると、店内にいた長身で体躯の良い黒髪の男がこちらに向かってきた。
タリスは、一目で、コイツは出来る! と理解していた。
「ミコトさん!?」
「ソ、ソマイさん!?」
ミコトはかなり驚いていた。
何故、第1の武器屋に、ソマイがいるのだろうか!?
タリスはサッと構える。
ソマイもタリスの実力に気付いたのか、身構える。
「あ、タリスさん、ソマイさんは知り合いで、第2の騎士団長なんです。ソマイさん、こちらは私の護衛をお願いしているタリスさんです」
ミコトは慌てて説明をする。
2人は少し緊張を解き、軽く会釈をする。
「ミコトさん、護衛を外部から雇っているのですか……?」
ソマイは一目でタリスが騎士団員ではないと分かったようだ。
ミコトは国家特別人物の妻で騎士団員なのだから、ソマイが不思議に思うのは当然だ。
「タリスさんは、ロイの友人なんです。その関係でお願いしてるんです」
ミコトは、主にソマイの国から狙われているんですけどね、と思いながら笑顔で答える。
「あの、ソマイさんは、どうしてここに……?」
もしかすると第1の調査かもしれない、とミコトは緊張していた。
「休暇をいただいたので、観光に来たんです。何回も第1に来る機会があったのに、いつもトンボ帰りでしたので……」
あ、確かに……。
でも本当に観光なんだろうか……?
あんまり聞くのも、変に思われるかもしれない。
「ミコトさんは、武器の補充ですか?」
よく見ると、ソマイはすでに購入したらしい長剣を2本持っている。
本当に観光で買い物していただけ……?
「はい。隠し武器を……」
「ミコトさん、俺、用事を思い出したんで、武器は後日にして、帰りましょう」
タリスはミコトとソマイの間に立った。
ソマイはふっと笑顔を消す。
「……護衛なのに、ご自分の都合でミコトさんの予定を変更するのはいかがなものかと思いますが?」
「……元々武器屋は俺の用事なので……、ソマイさん? こそ、その力、何なんすか? それ以上ミコトさんに近づかないでください」
な、なんか、ヤバイ雰囲気になってる!?
というか、タリスは、ソマイの不思議な力に気付いてる!?
ある意味スゴイ!!
「あの! 私は大丈夫です! でも、帰るのは賛成ですので、帰りましょう!」
ミコトは、タリスの前に出て、ソマイを振り返る。
「それでは、ソマイさん、さようなら!」
「ミコトさん、待って……」
すみません!
待てません!
ミコトはタリスより先に、店から出て行った。
タリスはソマイをチラリと見た後、ミコトを追いかけた。
とりあえず、聖女棟まで、ミコトとタリスは一言も話す事なく、早足で歩き続けたのだった。




