159.タリスの申し出
第3エラルダ国の拠点の宿屋。
2階の4人部屋に、ロイとミコトとタリスとキダンとホシナが集まって、報告会議をしているのだが……、とにかくロイが怒っていた。
「つまり、闇組織が仮面舞踏会後の女性をターゲットにする可能性があったから、ミコトを1人で帰らせて狙わせるという囮も兼ねていたってことですよね!?」
ロイは、キダンとホシナを睨みつける。
キダンは首を横に振った。
「ひ、1人で帰らせてないじゃん! タリス君も一緒だったし、ミコトちゃんはすぐにロイ君を呼べるし……」
「キダンさんっ!」
ロイの威圧が、4人部屋内に広がる。
ロイ以外の全員が、ウッと唸り、自称腕っぷしの弱いキダンが、バタンと倒れた。
ミコトはロイに抱きついた。
「ロイ、やめて! 私は闇組織壊滅のためなら何でもやるよ! だから……」
「それが嫌なんだよっ!」
ロイはミコトの両肩を掴む。
「二度とミコトにあんな思いをさせたくないんだ! ミコトはどれだけ我慢して隠れて泣くつもりなんだよ!」
「ロイ……」
「俺はミコトに何かあるくらいなら、闇組織だって、この世界だって、本当はどうでも……」
「よくない! どうでもいいなんてこと、ないよね!?」
今度はミコトがロイの両肩を掴む。
ロイはミコトの黒い瞳を見て、ハッとなった。
「ごめ……ん。ミコト、ごめん……」
ロイもミコトも分かっている。
ロイがこの世界をどうでもいいと思ってしまったら、それは、本当にこの世界が終わってしまうかもしれないのだ。
「ロイさん、ミコトさん、それにタリスさんも、本当に申し訳ありませんでした。この計画の発案者は、キダンではなく、私なんです」
ロイとミコトとタリスは、ホシナを見た。
ホシナは頭を下げている。
「キダンは本当にどうしようもない男ですが、最近は、特にロイさんに肩入れしていました。闇組織調査にロイさんを利用したかったはずなのに、無理に動こうとしなくなりました。でも私は、それではダメだと思いました」
ホシナはロイを見た後、タリスに目線を移した。
「タリスさん、ここからは内々の話となります。闇組織調査はかなり危険な案件です。タリスさんへの依頼は、今回の仮面舞踏会の参加でした。なので……」
「はい、確かに、依頼を受けたのはここまでなんですが……」
タリスはホシナを止めるように、右手のひらをホシナに向けた。
「ミコトさんって、その、何者で、何に狙われているんすか? 」
ロイとミコトは息を呑んだ。
何者って、どういう事なのか……。
タリスは、しまった、という顔をした。
「あ、や、変な意味じゃなくて、俺の経験上、狙われるヤツにはそれなりに理由があって……。でも、ミコトさんは、良い意味で本人に非が無いというか……」
「タリス……」
ロイはタリスを真っ直ぐ見る。
タリスはロイをチラリと見た。
「えーと、つまり、ミコトさんを守るために、手が必要なんじゃないかってことで……、ロイ先輩の奥さんだし、ここでサヨナラってのも、何か違う気が……」
タリスは、自分で何を言っているのか分からなくなり、うつむいた。
引き続き協力します、と言いたいだけなのに何故上手く説明できないのか、と落ち込みかけたところで、ロイは突然タリスの手を掴んだ。
「タリス、ありがとう! 一緒にミコトを守ってくれるって事だよね? タリスの言う通り、ミコトはミコトに非がなく、いろいろなヤツから狙われているんだ。今回もミコトを守ってくれたし、タリスがいてくれるなら心強い!」
タリスは赤面する。
まさしく、ロイの言う通りなのだが、ストレートすぎる!
「タリスさん! ありがとうございます! ついでに一度手合わせを……」
「ミコト! 前にも言ったけど、護衛対象は護衛と戦いません!」
ロイはタリスから手を離して、今度はミコトの頬を両手で挟んだ。
「んーっ!」
イチャつきだした2人を見て、タリスは溜息をついた。
黙っていたホシナは、んんっと咳払いをする。
「タリスさん。ミコトさんの護衛となると、やはり闇組織調査に関わる事になりますが……」
「あ、はい。構いません。最初の契約通り、守秘義務もちゃんと守ります。契約料は、そちらの言い値で大丈夫っす」
ホシナはタリスに頭を下げて、「ありがとうございます」と言った。
ミコトは、少し、胸が熱くなっていた。
タリスは、ミコトに護衛なんて全然必要ないと言っていたのに、護衛を買って出てくれたのだ。
照れ屋のいい人だ……!
ホシナは、嬉しそうなミコトを見て、ロイに向き直った。
「それでは先程の続きなのですが、ロイさん、ミコトさんにこの話は……と思うのですが……」
ロイは察したように「ああ、はい」と呟いた。
さすがにミコトだって分かる。
ミコトに聞かせたくない話なのだろう。
ミコトは席を立った。
「私、ウミノさんとネルさんのところに行ってるね」
「うん、後でね……」
ロイは申し訳なさそうに言うと、ミコトをドアまで送り、何故か一緒に外に出る。
「ロイ?」
「今夜は一緒に過ごすんだよね?」
ミコトは赤面した。
「あ、あれは、ごめ……んんっ!」
ロイはミコトの言葉をキスで塞ぐ。
「楽しみにしてるね?」
ロイはそう言うと、部屋の中に戻っていった。
だから、この後のこの気持ちをどうしたらいいのー!?
ミコトはハッと気配を感じて、横を見る。
そこには、ニヤニヤと笑う、ウミノとネルが立っていた。
見られたー!!
「ミコトさん、早速準備しましょうか?」
「まずはお風呂ですね!」
ミコトは2人に手を引かれて、お風呂まで連行されたのだった。




