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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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132/190

132.アリアンの女児

 ミコトの、医学の勉強と騎士団勤務とアリアンの記録の読解という超ハードな日々が始まって、2週間が経とうとしていた。


 とは言っても、騎士団勤務は、事務補助として復帰したノエルが頑張ってくれているし、アリアンの記録は、基本日記なので、そんなに大変ではない。


 そう、大変だったのは、医学の勉強だ。

 内容もさることながら、シーマの厳しさと言ったら…。

 ミコトは今まで、シーマはとても優しい人だと思っていたが、医学には全く優しくなかったのである。


 毎日フラフラのミコトに力を入れるために、この2週間、ミコトはロイと自宅で過ごしていた。





 夜11時。

 自宅の1階のリビングで、ミコトはアリアンの記録の本を閉じた。


 実は、読書に関して、医学書でもこのアリアンの記録でも、夜11時までとロイに決められている。

 ミコトも睡眠の大切さは理解しているので、ちゃんと守っている。


 一緒に暮らしてみて分かったが、ロイは空いている時間は、自分の鍛錬をしている。

 ロイの強さは、ロイ自身の努力の賜物だったのだ。


「じゃあ、寝ようか」

 ロイはミコトを抱き上げると、2階への階段を登る。


 これも一緒に暮らしてみて分かったが、ロイはかなりスキンシップが多い。

 今までも多かったが、それは、二人きりの時間が少ないからだと思っていたのだ。


 ロイは、2階のベッドにミコトを寝かせると、ランプの火を小さくする。

 ミコトは後ろを向いたままのロイに、話しかけた。


「ロイ、私、来月の医学試験を受けようと思うの」


 ロイは驚いた表情で振り向いた。


「医者に、なるの?」


 ミコトはベッドから体を起こす。


「医者…というか、知識と実践がいるなぁと…」

「知識と実践?」

 ミコトは頷いた。

「女の子が生まれたら、死んじゃうかもしれないから…」


 ロイは「ああ…」と呟くと、ミコトの隣に座った。

 ロイの言っていた、ミコトにとって辛いことの一つは、この事だったのだ。


「女の子が生まれるとは限らないけど、何もしないで死を待つなんて、出来ない…」


 ロイはミコトを抱きしめる。


「ごめん。ごめんね…」

「ロイは悪くないよ。誰も、悪くない。歴代のアリアンの人たちも、とても苦しんでいたの」


 ミコトもロイを抱きしめる。

 

 ミコトは以前、カイルからロイの父親のグレンの第1子の女の子が早逝した話を聞いた。

 あの時は何とも思わなかったが、ロイの姉であるその子は、早逝する運命だったのだ。

 この世に生を受けたのに、そんなのは、あんまりだ。


「こんなこと言っても、慰めにもならないんだけど、俺の姉は15歳まで生きたらしい」


 ロイはミコトを抱きしめながら、言った。

 ミコトは「え?」と顔を上げる。

 アリアンの記録では、女児は全員1歳までに亡くなっている。


「女性に男性並みの体力と筋力があれば、この力に耐えられるんじゃないか、と考えて嫁を選定したんだよ。父さんの1番目の奥さんとリタさんと俺の母さん、だね」


 ロイは哀しそうな表情で笑う。


「リタさんやレイさんは、体力と筋力で選ばれたの?」


 ロイは頷いた。


「俺の覚えている母さんは、俺と一緒に、訓練と言って走り回っていた。今思うと、とても女性とは思えない体力と筋力だった…」


 ミコトは妙に納得してしまった。

 ロイの力が一族の中でも強いのは、母親の遺伝も大きいに違いない。


「ミコトも男性並みの体力と筋力があるから、女の子が生まれても、すぐに…ということはないと思う」


 でも、15歳まで、なのか。

 ミコトは、ハッとして、ロイから離れた。


「じゃあ、何で、マリーが嫁候補だったの? マリーにそんな…」

「アレンさんは、この事を知らないんだ。もちろん、マリーも。父さんの嫁を選定したのは、前代表なんだよ」


 ロイは慌てたように、ミコトの両肩に手を置いて言った。


「セタ兄は知っていたから、マリーとの結婚は避けたかったって言ってたよ」

「あ、それで…」


 マリーは、セタと先代聖女がキスをしているところを見て、ふざけるなと怒っていた。

 セタが人の気配に気付かない訳がない。

 きっと、マリーに嫌われるように、わざと見せていたのだ。


 でも、このやり方を選んだのは、おそらく先代聖女だろう。

 セイラの言う通り、先代聖女は独占欲が強かったようだ。


「俺は知らなかったから、マリーが断ってくれて良かったけど…あ、ミコトならいいって事じゃなくて、俺は…」


 ロイの焦りように、ミコトは吹き出した。


「わかってるよー」


 ミコトはもう一度、ロイに抱きついた。


「私、パパとママに感謝しなくちゃ。体力と筋力をありがとうって!」


 ロイはふっと笑う。


「俺も感謝する。ミコトを産んでくれてありがとうってね」

「え! じゃあ、私もグレンさんとレイさんに感謝する! ロイを産んでくれてありがとうございます!」


 ミコトは天井に向かって感謝の言葉を叫ぶ。


 ロイは、生まれてきた意味とはこういうことか、と思っていた。


 ミコトも、自分の存在が、確かなものになったような、そんな気がしていた。


「よし、じゃあ、力をいれようか!」


 ロイの言葉に、やっぱりそういう展開にはなるのかと、ミコトは赤面して小さく頷いた。

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